魔術の使用に感動
「ただいまー、と」
リリィさんがドアノブを握ると、かりゃり、という音を立てて鍵が開き、ドアを引いて開ける。
電子錠、みたいなもので、魔力に反応して解錠しているのかな?
そのままリリィさんは家の中に入って行くので、オレもついて入る。
すると、やはり日本の玄関と同じような造りになっており、靴は脱いで上がる模様。そして上がって三歩ぐらい先にはまた片開き戸がある。
ちなみに、男性用の靴は見当たらないので、おそらく独身の模様。
よかった。旦那の相手をしなくて。
「解除」
ドアを閉じると同時に、オレの外装魔法が解除され、霧のようなものがリリィさんに収束して消える
「これが毎日かぁ……めんど……」
リリィさんは心底面倒臭そうな表じょで、大きなため息をつく。
「ほら、ドアノブに手をかけろ」
「……用は済んだから出て行け、ということですか?」
ここで追い出されると約束と違うので、代理人の外装魔法を大勢の目の前でぶっ飛ばす……なんてことしたら、何かの罪で捕まるのだろうか?
いや、討伐協会は警察とは違うと思うから逮捕はないにしても、消されそう。存在を……
「違う。魔導ドアの登録だ。私がいないと開閉できないとか、面倒で仕方がないだろう」
「……そっすね」
そりゃそうだ、な理由だった。
言われた通りドアノブに手をかけると、リリィさんはスマホのようなものを取り出し、何やら操作している。
「魔力」
「え?」
「魔力を込めないと登録できないだろ。
あ、もしかして魔導ドアを使ったことがないのか?」
「……えぇ……まぁ……」
電子錠かシリンダー錠しか使ったことありません。「ドア自体が魔術なのだから、他の魔術と同じように触れればいい」
……んなこと言われてもな……家を衣服と例えた場合、玄関ドアは『家を防御する一部』と言えなくもない……気もするので、ブレイク! とかいってドアがぶっ飛んでも困るし。
…………あぁ、そういう考え方だと、この能力の使い所も広がるのか。
できるかどうかは、やってみないとわからないけど、機会があるときに何かで実験してみようか。
それはさておき。
登録、って言っていたから、登録……オレの魔力をドアに登録する……登録登録……と、ドアノブを握る手に意識を集中する。
「ん。完了だ」
……まじで? 達成感みたいなものはないけど、これが魔術を使う感覚なのか……
「……ちょっと試してみてもいいですか?」
「子供か。まぁ魔導ドアが初めてなら、気持ちはわからなくもないが。
今、鍵は開いている状態だから施錠しろ」
「はい」
施錠……鍵閉まれ……施錠施錠……
かちゃり。
「おぉ……」
今まで生きてきて 鍵が閉まる音でこれほど感動することがあっただろうか。
なるほど。これが魔術か。
できるようになると、他に色々と試してみたくなるな。まさに異世界の醍醐味。
「おまえは面白い能力を持っているのだから、それきっかけで魔導研究に興味をもったのなら、まずは私の助手から始めてみるといい。
魔導研究は奥が深いぞ」
お。これってもしかして好感度を上げる選択肢だったか?
でもいくらリリィさんの好感度を上げても無意味。だからといって、拒否するような態度をとって好感度を下げる必要もないか。
「考えておきます」
と、無難に答える。
正直、今は魔力を使うことがなんでも面白いと感じる時期だと思うけど、当たり前に使えるようになると、研究職とかはあまり興味がわかないかもしれない。
夏休みの自由研究だって、かなーり面倒臭いと思ってやってたしなぁ。まぁ一応、元の世界に帰れなかった時の選択肢の一つと考えておこうか。
リリィさんの元で働くのは、詩音の二の舞で少々危険な気もするが……




