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まだ休めない……

「まぁいい。本当か嘘かは、三日も住んでみればわかるだろ」

 オレは手を出さない自信はあるけど、これで『なぜ本当に手を出さないんだ』と怒るようなら、ヒロインの素質あるよ。

 オレの中では昇格することないけど。

 むしろ今のリリィさんに手を出して、オレの性癖がねじ曲がってしまったら、元の世界に戻った時やばいでしょ。

 即通報案件だわ。

「さて、いつまでも立ち話をしているのは疲れるし、帰るぞ」

 リリィさんはそう言って、出口の方へ歩き出す。

「ヒノさんも今日はお疲れ様でした」

「いえいえ。こういう緊急事態には慣れていますので。特にリリィさんに関わった日は大変ですよ。

 でも所属したばかりのコウキさんには、ちょっとキツいものがあったかもしれませんね。

 今日はゆっくり休んでください。

 あ、改めて言っておきますが、リリィさん。明日からはちゃんと定刻に出勤してくださいね」

「……わかってるよ。せっかく本部の秘蔵資料を拝めるまであと少しのところまできたんだ。

 それを棒に振るようなことはしないさ。とっとと信頼回復して、権限を取り戻さないとな」

 会議に参加して思ったけど、リリィさんに対する信頼って魔術に関係することがほとんどだったから、人的な信頼レベルってもはや回復不能なのではなかろうか?

 優秀は優秀なんだろうけど、人に迷惑をかけすぎなんだよなぁ……

「ならいいのですが。

 それではお二人とも、ゆっくり休んでくださいね」

 理由は違うと思うが、オレもリリィさんも疲労困憊。それに対してヒノさんは、全く疲労の色を見せていない。

 先ほどの言葉を信じれば慣れているようだが、無理してないだろうか? と心配になる。

 ……何か役に立てること……差し入れとか?

 何が好みかはまだわからないけど、定番のコーヒーとか、お菓子とかでも喜んでくれるだろうか?

「あ、そうだ。こっちこい」

「? はい」

 リリィさんは何かを思い出したかのようにオレを手招きし、出口とは違う方へ歩いていくので、嫌々ながらそれについて行く。

 すでに営業時間は終えているのか、建物内にいる人はまばらで、仕事をしている人は残業だろうか?

 社会人、残業、眠れない、遊べない、辛い……辛い……

 そんな中、迷いなく歩く少女リリィさんは、当然その人たちの注目の的になっている。

 本来なら声をかけられるのだろうが、問題娘の弟であるオレが『引率』という形で歩いているのなら、問題はあってもスルーされているのかもしれない。

 そんな少女の後ろをついて行くオレは、どんな風に見えるだろうか?

 保護者……はないな。保護者なら前、あるいは横を歩く。

 少女は実はオレの彼女で、お願いされて協会ないを案内している……可能性としてあり得そうだが、その代償は大きい。

 問題娘の弟はロリコンで、少女の残り香を嗅ごうとする変態……なんて翌日にはそんな噂が広がっていなければいいが……


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