ご褒美
「あ、そういえば褒美の話だが」
せっかくヒノさんのお声で癒され、気持ちよく眠れるかと思っていたのに、もうあまり関わりたくない渋い声の持ち主が、話しかけてくる。
「私の声でも癒してやろうか?
これでも、報酬よりも耳元で罵ってほしい、と喜ぶ変態がいるんだ」
「……オレがそんな変態と同類だと?」
失礼極まりない。
「宿直室に関する話でしたよね」
お財布事情的に、非常に重要な話ではあるが、あまりも目まぐるしい1日に、すっかり忘れていた。
「うむ。それと、私の体を舐めたい、だったかな?」
「……コウキさん、それはさすがに……」
「そんなこと微塵も思ってないわ! 思ってないですよ!」
こんの合法ロリ! 何を言い出すんだ!?
ヒノさんが残念な人を見る目になってるじゃないか!
ここでヒノさんに嫌われるようなことがあったら、オレはもうこの世界で生きていく希望がないから、今まで生きてきた中で全力で否定したわ。
「冗談だ冗談。あれは外装魔法あってのことだからな。
いくら頬擦りするぐらい抱きついてきたり、ペロペロしようが、所詮魔力で作り出した身体だからな。
私は感覚遮断して、汚物を見るような目で見ていればよかったが、さすがに本体相手にそんなことはさせんよ」
その姿で性的な冗談を言われたら、洒落にならないだよなぁ……普通に社会的に死ぬ。
「そういえばリリィさんはそうやって、男性討伐員の指揮を上げていましたね。
女性職員からは嫌われる行為な上に、今まで褒美を授かった人はいないそうですが」
やっぱり色仕掛けって効果抜群なんだよな。
オレも何度か仕掛けらたことはあったが、意に介さなすぎて、逆にドン引きされたことがある。
やっぱりこれも詩音が悪い。
「いや、ちゃんと魔導的な成果をあげたやつには、私のセクシー写真を褒美にやったぞ。
まぁ合成写真だから身体は別人だが」
この人、ほんっとに信用できないな……
「……あの、目の前で堂々とそんなことを言われたら、そのご褒美というのが全く期待できないんですが……」
初めから期待はしていなかったが、仮に貰ったとしても結局ガラクタなら持っている意味もないし、即ゴミ箱行きだ。
「まぁまぁ、そう言うな。
それに今回のご褒美は宿直室に関係すること。つまり弟くんの寝床のことだ。
ずばり、私の家に住めばいい」
「え? おこと」
「リリィさん。好意を持ったのなら素直にそう言えば」
間髪入れず断ろうとしたところ、ヒノさんが口元に手を当てて、ニヤニヤしながらリリィさんをからかう。
そこは嫉妬して欲しかったなぁ……やっぱり現状の関係ではこんなものか。
そこで『それなら私の家に住んでもらいます』なんて言葉が出てきたら、二つ返事で了承するんだけど。
それにしても、ヒノさんは恋話とか好きなのだろうか? 反応が速すぎた。
「違う」
ここで少しでも照れると、漫画ではヒロイン候補に昇格の瞬間ではあるが、リリィさんは、微塵も照れることなく否定する。
しかし1日一緒に居ただけで自身の家に住まわそうとするとは……何か企んでいる、というか、こき使おうとしている、というか……詩音や元女神と同じ雰囲気を感じるなぁ……
アパートの件でリリィさんの言いなりになりすぎてしまったか? 嫌だなぁ……




