支部長の選択
「……このまま働くさ……貴重な魔導資料のために私はこの地位まで上り詰めたんだ……」
支部長は一分ほど悩んだ結果、おのれの欲望を隠そうともせず、苦虫を噛み潰したかのような渋い表情を見せ、支部長が行使できる権限を選んだ。
それを聞いたトップ女性は困惑することもなく、にっこりと微笑む。
「よろしい。
持ち出し禁止の資料を持ち出すなどの問題行為はあったものの、情報の漏洩があったわけではないし、そのことは当時の罰で許されているからな」
……本当に権限維持で大丈夫なのか、やっぱり不安になるな……
「それによって魔導研究に進展があったこともまた事実。
それに先ほども言ったが、問題人物でありながらも、それも上回るような優秀な人材を手放すのは協会にとっても痛手だからな。
その選択をしてくれて、ほっとしているよ。
では支部長代理の選定はこちらでやっておく。早ければ明日には決まっているだろう。
それとヒノくんと、キリサキくん、といったかな?」
「……え……あ、はい」
急に呼ばれたものだから、ちょっとびっくりした。まさかオレたちも何らかの処分、とか?
オレが協力したのは脅されたから、と先ほど熱弁したけど、やっぱりダメなのか?
「わかっていると思うが、このことはトップシークレット。他言無用だ。
まぁバレたらバレたで仕方ないところではあるが……黙っておいた方がいいだろう」
……やはり組織のトップを張るだけあって、釘を刺す眼光は鋭く、支部長や元女神にはない重みがある。
もし喋ったら翌日には行方不明扱いされそう……
「も……もちろん、です……こう見えて口は硬い方なので……」
詩音のスリーサイズぐらいだったら、ベラベラと友人に話したことがあるけど、さすがにこのレベルの秘密となれば、喋るわけにはいかない。
一つ懸念があるとすれば、不審に思った元女神が魔法等々を使用して、無理やり口を破らせようとしないかどうか……
「私も大丈夫です。事務職員として口外してはならない仕事も多いですし」
ヒノさんは仕事柄慣れているようで、特に困った様子はない。
「うむ。では引き続き、今後についてだが……」
と、今回の事情を知るものによって会議は延々と続き、終わる頃には日はとっぷりと暮れていた。




