支部長の処分
「と、言いたいところだが、今回の件で改めてアサヒくんの実力を、良い意味でも悪い意味でも知ることとなった。
そこで包み隠さず正直に言えば、魔物討伐協会としてはこのままクビにするのはもったいない。
それにアサヒくんなら、仕返しとしてに協会の建物を爆散させる、なんてことは容易いだろう?」
「……そ、それは……」
トップ女性は支部長の言動を見透かしニタリと笑うと、支部長は目を逸らす。
キッパリと否定しないんかい。というか、支部長が悪の道に走ってしまえば、絶対犯罪組織以上の厄介者になること間違いなし。
「よってアサヒくんは現時点をもって降格、そして外装魔法を使用し『支部長を作り出す』ことで、今までのように支部長とほぼ同等の権限を与える。
ただし、重要な書類等を閲覧するときは、他の職員と同様の申請をし『支部長』の許可を得ること」
「へ?」
意外な申し渡しに、支部長は間の抜けた声をだし、ぽかんとしている。
「支部長が突然解雇となれば、当然その理由を公表しなければならないが、はっきり言って本当の理由など言えるはずもない。
私利私欲のために立場を利用して協会の設備を自由に使用し、さらには魔術のためともなればアパート他も爆散させる行為。
しかもそれを協会が容認していたとなれば、市民からは不信を買ってしまい、激しい暴動が起きかねない。
それに最悪の場合、協会に所属する、特に血の気の多い討伐隊が武力行使に出れば、街全体を巻き込んだ戦争になりかねない」
同じように自分の利益を優先する元女神なら『悪を伐つための正義の鉄槌』とか言い出しかねない。
「そこでまともな人間に『支部長』を演じさせ、市民からは『また説教されたんだ』と思わせる程度に留める」
……支部長の問題行動って、街ぐるみでしるところなのか。確かに人によってはフラストレーションの限界を突破しそう。
「……クビにならないのはありがたいが、外装魔法を遠隔で使用するということだよな?
それだと私の魔力負担が膨大になり、今まで以上に制限されるんだが?」
対する支部長は、せっかく寛大な措置をとってくれたトップ女性の申し渡しに異を唱える。
黙って受け入れた方がいいと思うけどなぁ。
「だから、そう言っているだろう。でなければ処分にならないのだからな。
そして君はその姿のままで、協会職員として働くんだ。なんなら、年齢入りのネームプレートを用意しても構わないが?」
トップ女性は言いつつ、少し悪戯っぽく笑う。
そもそも職員はネームプレートをつけていないので、支部長だけの特別だ。
そう言えば日本では、プレートに書かれた名前を覚えて苦情を入れるクレーマーがいる、というニュースを見たことがあるな。
これだからお役所仕事は、という定番のセリフの意味はオレにはまだ理解できないが、役所の人もルールはルールとして働いているんだろうしなぁ、と思う。
これが社会に出て役所を利用するようになったら、180度考え方が変わるのかもしれないけど。
「それに、もしこの業務命令が受け入れられないのなら、非常に残念ではあるが懲戒解雇とするほかない」
「うぐぐぅ……」
トップ女性の最後通告に、支部長は頭を抱えて悩み始める。
プライドを取るか、あれほど他人んい見られることを忌避していた少女姿のまま働き、今までとほぼ同等の権限を取るか。




