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支部長の選択

「んな……」

 先ほどヒノさんが上がって行った階段から現れたのは、再びヒノさん。と、屈強な男性五人。

「やはり魔力探知がしづらい場所だったようなのでお連れしたのですが……」

 その表情は先ほどまでの不安げな表情とは一変して、怒っているというよりも呆れている表情を見せる。

「い、いつから……?」

 支部長はヒノさんの声に、びくりと体を震わせ、ヒノさんの方へ体を向ける。

 その表情は先ほどまでの強者感はない。

 本当にヒノさんのことが苦手なんだな。あるいは別の不都合があるのか。

「支部長が台座を嬉々として調べているあたりからです」

 ということは、支部長の醜悪な態度を見たわけだ……というか現在の支部長はオレなので、ヒノさんの視線はこちらに向いているのだが。

「支部長がちゃんと会議に出席するのなら、私から何か言うつもりはありません。

 それに、失礼ながらこちらの方達や、本部の方達ですら支部長を強制連行できる人はいないでしょう」

 ヒノさんの言葉に屈強な男性たちは、うんうん、とうなづく。

 やっぱり強いんだな。

「なので、本来ならいつものように支部長は強行されると思いますが、先日お伝えした通り、今日は本部の方達がこちらの支部へお越しになり、トップ会談を行う予定です」

「……あ」

 支部長はどうやら忘れていたようで、掌を口元へ当てる。

「なので私は支部長を見送ったのち、会談の場において今日の出来事を直接報告するつもりです。

 ご存知の通り、本来なら上司へ報告し、上司から本部の方へ報告する手順ですが、今回は私も当事者なので、直接報告することができるでしょう」

「うぅぐ……」

 本来ならこの支部長の反応はオレがするべきなんだろうけど、少女支部長の顔に明らかな動揺が浮かんでいるけど、バレてないのかな?

「どうされますか? ご判断は支部長にお任せいたしますが」

「…………」

 ヒノさんの言葉に、支部長の視線は台座とヒノさんを行ったり来たりし、出した答えは、

「……わかった。ここは大人しく従おう」

 ちょっと意外。

 支部長の性格なら『雑魚は黙っとけよ。報告したけれ報告しろ。じゃあな』とか言ってこの場を後にしそうなのに、さすがの支部長も権力には弱いのか?

「その答えが聞けて安心しました。では行きましょう」

「っ」

 ……危うく声が漏れてしまうところだった。

 オレは支部長とヒノさんのやり取りをぼーっと見ていて、動こうとしないオレの隣にヒノさんが歩み寄り、腕を絡ませて引っ張る。

「支部長は現在、あの『少女』に魔力を与えているのですよね? ならばあの『少女』には私よりも実力のある方がついた方がいいでしょう。

 それに支部長はいつ気が変わるかわかりませんからね」

 ヒノさんの言う通り、小さな少女を屈強な男5人が取り囲んでいる。

 本来この状況なら少女の方が不安と緊張で、青筋を立てる場面だろうが、緊張しているの明らかに男性5人。

 その中央にいる少女支部長は観念した表情を浮かべるも、周囲の男たちの脅威にたじろぐ様子はない。

 それにしても、外装状態とはいえ、肌に触れる感触は元のままのようで、密着するヒノさんを堪能できる。

 正体がバレた時にドン引きされそうではあるが、そもそも好意が届かない可能性のほうが高いかもしれないので、この瞬間だけは今までの苦労に対するご褒美だと思いたい。

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