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霧崎家の序列

「っ!?」

 子猫、少女、そしてヒノさん。

 やはり俺たちは運命の赤い糸で……なんてロマンチックなことを言える状況ではない。

 生後数ヶ月ほどの子猫に、少女支部長よりも幼い少女、そして少女支部長の姿を見て青ざめたヒノさんは、一匹と一人を庇うように、身を盾にしてこちらに背を向ける。

 本来であれば少女支部長の姿を見て青ざめることなんてないだろうが、ここは犯罪組織と思われる建物内の隠し部屋。

 そんなところへ堂々と扉を開けてやってくる人物が、見た目通りの人間とは限らない。

 オレだって『お嬢様カフェ特製拷問部屋』に閉じ込められて、笑いながら詩音が現れた時には戦慄したものだ。

 ……ちょっと違うか……

 そんなヒノさんに対し、ここは優しく『大丈夫ですよ』と声をかけてあげたい。

 しかい悔しいかな、現在支部長の『呪い』とも言える状況でしゃべることは……なんて言っている場合ではない。

 今こそ男を見せる時。

 支部長の戯言なんかよりも、ヒノさん、少女、そして子猫の安心を優先すべきである。

 そう決意して声をかけようと一歩前に出ると、

「ヒノ。何をやっているんだ?」

 それを察したのか、支部長はオレより先に一歩前に出て、ヒノさんに声をかける。

「……え? 支部……長……?」

 そしてその声はヒノさんにとっては聴き慣れた声であるため、警戒しつつもこちらに視線を向ける。

 ただし、当たり前ではあるが、その視線は少女支部長ではなく、女装オレに向けられている。

 外装が完璧ならヒノさんすら欺けるはずだが、それでもヒノさんは万が一に備えてか警戒を緩めず、決して少女から離れることはなかった。

 優しいなぁ。

 このようなタイプの女性には初めて会った。

 詩音の呪いのせいで、オレの周囲の女性は強気な人ばかりで、庇う、守るよりも、敵と認識したら襲いかかるような猛獣ばかり。

 しかもそれには母さんも含まれるという……

 普段は温厚な親娘ではあるが、うちの女性陣は強く、男性陣は肩身が狭い。

 家族会議にでもなれば当然の如く母娘が優先権を主張し、父さんは温厚を貫き諦めの極地と悟り、オレは反論するも、いつもいつもいつも返り討ちにあってしまう。

 悲しき霧崎家の序列……

 ちなみに、母さんと詩音では若干詩音の方が優位、というか最終的には母さんが詩音に譲る傾向にある。

 それを父さんとオレは黙って見ているだけ。


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