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結局、姉系に対して勝ちきれない

「さて、雑談はこれくらいにしておいて、こうなってしまっては少し作戦を変更する必要がある」

「……帰るんじゃないんですか?」

 少女の姿に変わっても支部長のやる気は変わらず、その表情には魔術に対する執念すら感じる。

「ここまできてそんな選択肢があるわけないだろう。

 このままでは私が……いや、起動に使用した魔力は君のものだから、君がアパートを爆散させただけになる」

「……酷過ぎやしませんかね?」

 この人、目的のためなら手段は選ばないし、人を追い込むことも厭わないという、詩音を超えるレベルで最悪な人だな……

 少なくとも詩音は、オレ以外を追い込むことは悪人以外ではないといのに……

 ……よく今までグレずにいられたと、自分で自分を褒めてやりたいよ……

「酷い、だと?

 君はこんな場所で女性を素っ裸にしたことが正当な行為だと思っているのか?

 それに対し、少しでも罪悪感を感じるなら私に協力するというのが筋というものだろう」

「反撃なので正当な行為です」

「んな……」

 自身の行いを棚に上げて『女性の権利』的なものを主張されたところで、何も罪悪感を感じない。

 やっぱりオレは詩音以外には反論、反撃ができるようだ。

 そう考えると、長年に渡る刷り込み、あるいは洗脳って、本当怖いよなぁ。

 正面きって反論されたのは意外だったのか、支部長は若干たじろぐ。

「……だが、考えてみるといい。

 私がこの姿で『このお兄ちゃんにいたずらされた』と街中で喚くとしよう」

 ……げ、外道め……事実ではないにしても、そんなことされたら社会的に殺されたも同じ……

 そんなオレの絶望に落とされる表情を見て、支部長はニヤリと笑う。

「理解したようだな。

 だが、ちゃんと私に協力すれば社会的制裁どころか、ちゃんと報酬だって与える。

 例えば宿直室は私の裁量で無期限、無料で貸し出すこともできるし、望めば他の報酬だって考えてやる。

 どうするべきか。考えるまでもないだろう?」

 ……絶対的に立場の弱いものが、これ以上反撃するのは無駄か……

 まぁ支部長の弱みを握ったという点ではよくやったと、自分で自分を褒めてやりたいよ。

「……わかりました。協力します。

 けど、アパートの爆散はオレの責任にしないでくださいよ?

 ただでさえ、あいつ……姉の借金返済で首が回らない状態なんですから。

 そこへ賠償金だのなんだのと言われたら、もう生きていく希望もなくなりますよ」

 もはや断る選択肢はない。

 それと召喚されてから色々なことがありすぎて、オレには三億という負債があるのを忘れそうになる。

 ただ、生きてはいけない、とは言ったものの、自殺する度胸はさすがにない。

 もしかすると『ゲームオーバー』扱いで、元の世界に帰れるかもしれないが……試す度胸もない。

 漫画ではたまに、自ら傷を負うシーン、というのがあるが、オレには絶対マネできない行為だ。

「もちろんだ。

 それに君は意外と魔力における才能があるのかもしれない。

 そんな便利……優秀な君を窮地に追い込むことなんていしないと約束しよう」

 なんか言い直したしー、オレの人生、既に追い込まれてばかりなんですけどー。

 平穏な生活っていつできるんですかー?

 そりゃ追放系作品のように、魔物がいるダンジョンの深層に送り込まれて、重傷を追いつつも助かるとかいう展開よりはマシだけどもー。

 ……あんなの絶対耐えられないわ……


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