小さいと強い
「というか、なぜそんな面倒なことを? やっぱりその姿では威厳がないから、とかですか?」
漫画の世界なら、ロリ上司、とかわりとよくある設定だと思う。今まで読んできた中ではその九割九分は見た目の威厳はなく、実力でものをいうタイプで、大体主人公の実力を知ってから惚れる。
支部長も例に漏れず、見た目の威厳はないと思うし先ほどのアパート爆散からも、実力でものを言わせるタイプかな?
でもそれだと姿を変える必要はないか。
「乙女の事情を話すわけにはいかない」
……おと……め……いやいや、否定してはいけない。
詩音も言っていたが『女性はいくつになっても乙女の心を持っているのです。それを蔑ろにするような男性は、一生女性とは縁がないでしょう』と。
言わんとしていることはわかる。詩音に限らず母も『母さんだって乙女だしぃ』とか、たまに言う。
ちなみにうちの母親は、漫画のように詩音と姉妹と間違われるほど見た目が若い、ということはなく、45歳という年相応の見た目だと思う。
詩音は実年齢よりは若く見える、と言っているが。
まぁ『乙女の定義』なんてものはよくわからず、正直都合よく使っているような言葉な気がするけど……理解でてないってことは女性に気を使えてないということだろうか?
別にモテたいわけじゃない、とかいう綺麗事を言うつもりはない(姉系はどうでもいい)が、ヒノさんに対してだけは気の利いた事ができるよう努力したほうがいいだろうな。
「が、気をつけなければならないことがある」
「弱体化、とかですか?」
漫画だと、小さくなると逆に強い、というのも定番だっけ。冷凍庫の名前がついた敵は、全世界の人が知っているのではないかと思うくらい有名。
「弱体化とは逆だな。
この姿に戻ると外装に魔力を割く必要がないから、いくらでも魔法が使用できる。
そこに魔術が加われば、私は神と同等の強さと言えよう」
……ふと元女神を思い出してみるが、女性と物理的な力比べで負けているところ見ると、支部長の方が強そうな気がする。
「むかうところ敵なし、ってことですよね?
で、気をつける点というのは?」
「この霧でわかるように、私の姿を見られるわけにはいかないんだ」
「……オレ、むっちゃ見てますけど」
霧が濃いとはいえ、この距離だとはっきりと幼い支部長に姿が見える。
「私の見通しが甘かったな。
まぁちゃんと口止め料は払う。なお受け取り拒否はできないと思え」
漫画だと親密度の上がるイベントだが、支部長の薄ら笑いを浮かべるガチのガチの表情を見ると、とてもそんな気分にはなれない。
「そうそう、私はかねてより人間に対して魔導実験を行いたいと思っていたんだ。
もちろん魔導医療の治験のような合法的なもの以外の人体実験は、どこの国でも法律で禁止されているんだよなぁ」
……言わなくていいって……わかるって……こええよ……




