伝家の宝刀 対 支部長
「学歴や職歴を見ても魔力に関わる経歴がなかったのでいささか心配ではあったが、そこはやはり問題娘の弟くんだな。
もしかすると才能を隠しているのでは? と、魔術の起動量で測ってみるつもりだったが、まさか全てを起動してしまうとはな。
ただ本当に経歴通り魔力を使い慣れていないのか、体力もだいぶ消費してしまったようだな。
しかし喜べ。ここまでできれば上出来だ。弟くんにはあとで何かご褒美をやろう」
支部長の想定以上の結果だったようで、先ほどとは打って変わって上機嫌だ。
学歴、職歴についてはどうせ元女神や天界が都合よくやっているだろうから、そこはまぁ置いといて。
ご褒美は宿直室の件をちゃんとやってくれればいいのだが……今回の件、オレは地球で言うところの『電源』として使われたのか……
「さぁて、先ほどの魔力防御を兼ねた探索魔術で部屋を調べたが、やはり地上部分には隠し部屋はなかった。
なのでこの手のギミック解除の手っ取り早い方法は、その対象をぶっ飛ばすこと。
ほら見てみろ。稼働対象の建物がなくなったことで入り口が出てきただろう」
支部長が言いつつ視線を向けた先を見てみると、確かにアパートのど真ん中に、地下へと続く階段が現れている。
それはよかったね……なんだが、ここまで利用されて文句の一つも言わないのは下僕、奴隷でしかない。
詩音……は、幼いころからの刷り込みもあって、なかなか反論、反撃はできなかったけれども、目の前にいるのは詩音ではない。
オレはこの世界で様々な苦難を乗り越えて、元の世界に帰った暁には詩音に真正面から言い返せるようになるんだ……
「ん? 歩けないほどの疲労困憊か?
よしよし、ちょっと早いがご褒美をやろう」
ふらふらしながら支部長の両肩に手を乗せると、支部長は両腕を広げてハグの体勢に入る。
今更巨乳お姉さんのハグなんて、オレにとっては無価値なんだよ。
「ブレイク」
このアパートにある魔術なんてもう知ったことではないし、支部長の機嫌を損ねて宿直室を追い出されるかもしれない。が、今のオレにはやり返す力がある。
羞恥心と探究心、どちらが上かな?
「ふむ。報告によれば衣服を破る魔法だったな。
よほど私のやり方がお気に召さなかったか。
だが、ツールバッグの中には様々な状況に対応するため、着替えを圧縮して数着持ち運んでいる。
ま、ご褒美として少しだけ私の肌を見ることを許可してやろう」
……なんと冷静な……あの元女神ですら怒りでオレを気絶させたというのに……
……この支部長に羞恥心はないのか……
……やはり詩音同様、結局オレは負けるのか……
「おわ!?」
敗北感に襲われた瞬間、支部長の肩という支えをなくし、がくん、と体勢を崩してしまう。
『な……』
二人の驚きの声が重なる。
そして目に映る少女の姿に、もしかしてオレはすでに制裁を加えられ、あるいは爆発で気を失って夢を見ているのか。
そう思うには十分な光景だった。




