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疲労感と脱力感

「よぉん。

 さあぁん」

 カウントが進むにつれ、緑のラインはアパートの壁、天井、そして床に広がっていく。

 それに加えて、支部長の余裕のある表情は段々と険しくなっていっているような……

 辛い苦しい、とかいう類ではない。これは機嫌が悪いときの……

「にいいぃいぃ」

 そしてついにアパート全体を蜘蛛の巣のように覆う。

 そしてさらに支部長の声は大きくなり、ストレスも加速する。

「いーーーーーち」

 おっそいカウント。

 それでもやはり誰も姿を現さない。

 そして、ゼロ、どかん、ではなく、支部長は一呼吸置いて周囲を見渡す。

「舐めてるなぁ。私が本気でやるわけがない、とでも思っているのか?

 犯罪組織のバカどもが、まさか私の顔を知らなといでもいうのか?

 だからこの周辺で魔術を用いた犯罪をおかしているのか?

 それなら納得だ。誰を相手にしているのか理解していない。

 ならば、ここで学んだことを次につなげられるといいな。

 次があるなら、な」

 カウントの終了を告げる支部長の表情は笑顔だ。

 ただし、それは不機嫌度マックスであることが窺える、恐ろしい笑顔。

 ……笑うんだよ。機嫌が最高潮に悪いとさぁ……

 絶対に逆らえない。そんな笑みはある。

「その身で思い知れ。愚か者どもが」

 そう言いつつ、オレの手を握る支部長の手に力が入る。

 とほぼ同時に、オレの緊張感もマックスに達しのか、これから起こることへの恐怖からなのか、疲労度が増して膝が震える。

 そして緑のラインが光量を増すとアパート全体が振動し始め、次の瞬間、耳をつんざくような爆発音が響き渡る。

 ……本当にやりやがった……

 吹き飛ぶアパート。

 これは周囲への影響は半端なく、被害者も一人や二人では済まないはずだが、まさかこの被害を全て犯罪組織になすりつけるつもりか?

 もしそんなことをするようであれば、絶対に関わってはいけないランキングが、詩音を抜いてトップに躍り出ることになる……

 と、戦慄していたが、アパートは吹き飛んだが緑のラインは残っており、粉々になったアパートの破片が周囲へ影響を与えている様子はない。

 それに加えて、この凄まじい衝撃であるにもかかわらず、周囲の建物にも影響はないし、驚いた住人が窓から様子を伺うようなこともない。

 つまりこの緑のラインは攻撃だけではなく、防御と防音も兼ねている、というわけか?

 それにしても……朝の爽やかなお空がよく見えるようになったなぁ……オレはこの青空の下、散歩する予定だったのに……どこでオレの運命がひっくり返ったんだろう……?

 ……なんかどっと疲れたな……詩音相手でもここまでの疲労感は滅多に感じることはなかったのだが……やはり慣れないことへの恐怖……いや、まるで精気を吸われているかのような疲労感と脱力感……

 そこまで気力を失ったところで、はっ、と気づく。

 支部長はオレの案内を必要とせず、オレをここへつれてきた……そして自分の手に強制的に握られた支部長とつなぐ魔術……

 慌てて支部長から手を離すと、支部長はニタリと笑う。


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