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カウントダウン

「それから、私の加護を受け取りやすいよう、私の手を握っていろ」

 言いつつ、支部長は左手を差し出す。のだが……

 言葉だけを聞いている、あるいは文字に起こしてみるとツンデレに思えなくもないが、支部長の真剣なようで何か企んでいそうな表情に引っかかるものはある。

 それに、差し出された左手は完全には開いていない、というか、何か手に光るものを持っているので開けないが正しい。

 これがただ単に支部長から確実に防御の加護を受けられるものなら問題ないのだが……

 とはいえ、迷っている暇はない。

 ここで、いやです、なんて言って支部長の損ねたらどうなることか……

 片腕を失うどころか、良くて痛みを感じず即死、悪くて激痛に襲われたのち死亡、最悪、激痛にのたうちまわりながら生き残る。

 ……想像しただけでも身震いがする。

 そのため選択肢はこの手を取るの一択。

 少し躊躇しつつも支部長の手を取ると、その手は恋人つなぎのように指を絡めてくる。

 これがツンデレ行動ならまだよしとするが、明らかに握られていた何かを中心に持ってきている。

 そんな嫌な予感がますます膨れ上がるオレをよそに、支部長は次にツールバッグからマイクのようなものを取り出す。

「あー、聞こえるか? クソ雑魚ども」

 マイクのような、ではなく、マイクそのもので建物内にいるかもしれない人物に対して語りかける。

「お遊びはおしまいだ。

 大人しく投稿するなら軽い罰で済ませてやるが、これ以上抵抗するようであれば、お前たちは建物ごとぶっ飛ぶことになる」

 そう忠告して支部長がスカートの裾を少し上げると、先ほどと同じような棒が四本、支部長の足元に突き刺さる。

 たまに漫画で見る、太腿に巻きつけていた武器、というヤツか?

「私の忠告を無視したことを後悔しつつ木っ端微塵になって地獄に落ちたくなければ、十秒以内に出てこい。

 10」

 ……やっぱりそういう仕掛けか……

 支部長がカウントダウンを始めると同時に、足元に突き刺さった棒から緑色のラインが走り、オレたちをギリギリのところで囲む。

 これが魔力防御か?

 見るからに一人用の範囲であり、支部長の言う通り密着してなければ外に出てしまう。

「9」

 ゆっくりではあるがカウントは進む。

 しかし誰一人として姿を現さない。

 もしかすると、やっぱり誰もいないのか?

「8。

 7。

 6」

 ここまでカウントが進んでも誰も姿を現さないどころか、物音一つ聞こえない。

 やはり誰もいない、あるいは耐えられる自信があるのか?

「ごぉ」

 やはり魔術ごとぶっ飛ばすのは気がひけるのか、ここにきて支部長のカウントダウンが間延びしだす。

 そしてそれとほぼ同時に、部屋の各所に設置した棒からオレたちを囲っている緑のラインと同じようなラインがアパート内に広がり始める。

 脅しに真実を持たせる演出……ではないよな?

 ……その緊迫した状況のせいなのか、なぜかオレの身体に疲労が蓄積しているような気がしてきた……

 ……これ、まずいのでは?

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