支部長のストレス発散方法
「他に目的がある、と言ったが、正直なところ、いくら私が優秀だといっても現状では何が真の目的なのか、確実なことは言えない。
一つ言えるのは、昨夜誘拐犯が連行されたにも関わらず、いまだ魔術が稼働しているということは、このアパートには捜査員が見つけられなかった隠し部屋があることは間違いない。
ただ手動で動かしているのか、自動運転が機能しているのかまではまだわからない。
そんなとき、どうするか?」
と、支部長はオレに視線を向けて問う。
そんなことを聞かれても、警察に任せて帰る、なんて正直な気持ちを言ったところで受け入れてくれないだろうし。
それにギミックが判明してからの支部長の期待あふれる表情から、帰る選択肢なんてないだろう。
「引き続き調査する?」
と、一応支部長の気持ちに合わせた答え、オレからすれば心にもないことを言ってみる。
すると支部長は、わかってるな、と言わんばかりに、うんうん、とうなずく。
「もちろんその通りだ。が、花丸回答ではないな」
だろうな。
もしかすると、調査した上で魔術を奪い取る、とでも言えば高得点だったかもしれない。
でも例え犯罪者相手とはいえ、強奪したらそれは窃盗になるのではなかったっけ? 少なくとも日本では。
悪人に人権はない、なんて主張もどこかのファンタジー作品にあったが、その世界ですら非常識行為だ。
……犯罪者の仲間になりたくない……もう遅いかもしれないけど……
「見てみろ、弟君」
支部長は言いつつ、調査を終えたドアを開ける。
すると、昨夜の事件現場となった四部屋ブチ抜きの特殊構造ではなく、至って普通のアパートの一室……かと思いきや、反対側にも出入口用のドアが見えるという特殊構造が目に入る。
そもそもこのアパートは誘拐犯が使用していたようなので、逃走用としてこういう構造になっている可能性もある。
「ギミックから予想するに、設置された罠を回避し無事向こう側のドアから出ると、次の正解のドアを選ぶことになる。
これは正解の部屋にたどり着けないようにすると同時に、正解のドアを選び続けて内部に侵入してくる者に対して攻撃、あるいは逃げるための時間を稼ぐための作りだ。
仮に手動操作で中に人がいた場合、今はまだ私たちを監視して笑っているだけかもしれないが、私たちが罠を回避し正解のルートを進んでいるうちに、逃走の準備を始めるだろう。
そして最後には、魔術を持ち出したもぬけの殻に到着することになる。
するとどうだろう。私の性格的に落ち込んで膝をつくのではなく、ストレスからアパートを爆破しかねない。
まぁ犯罪の証拠は残っているかもしれないので、これ以上被害を広めないため、という主張は正当なものだ」
……そうかなぁ?
詩音ですら証拠隠滅は穏便に行うのに、ちょっと過激すぎやしませんかね?




