昨夜の出来事
「さて、手の込んだ魔術が仕掛けられているということは、誘拐した者を連れ込んで楽しむのは言葉通りただ楽しむだけ、あるいは本来の目的を隠すためのカモフラージュである可能性が高い」
「人身売買、とか?」
異世界の誘拐といえば奴隷商人、からの奴隷ハーレムという展開があるが、オレはあまり好きではない。
買う側、という最初から優位な状況に立ち、優しくしたらすぐに惚れました、という簡単ハーレム。
それなら、神様からもらった圧倒的な力で女性を惚れさせる、というほうがまだ説得力がある。
ま、オレが神様らしい女性からもらった能力は、全女性から忌避されそうな悲しい、とても悲しい能力だがな……と、毎度泣きたくなる……
「もちろん可能性としてはあるが、そうなると昨夜誘拐してきた女性は商品としての価値は高いはずだ。
それを四部屋ぶち抜きの、今回の場合の外れルートには連れ込まないだろう。それに、高額商品に手を出すこと、特に下っ端がそんなことをやれば、即座に首が飛ぶ」
言いつつ支部長は、親指で首を掻っ切るポーズをとる。
確かに。漫画でも見たことのあるお馴染みの光景とも言える。女性が手籠にされるか、直前で助けられるか、女性そのもの罠、と、漫画の性質によって異なる。
今回の場合は女性が強かった、という展開。
……というか……
「どこから認識阻害の魔法で入ってたんですか?」
事件解決後、女性は元女神と出て行ったが、警察っぽい人たちど同時に来ていたのなら、その姿は見ているか。
「誘拐された女性と問題娘が建物から出ていくあたりだな。
その時二人とすれ違って、誘拐された女性の方は危機一髪だったか、それとも助けるのが遅かったのか、その辺の詳しい状況はまだ聞いていないが、衣服を破られたのは気の毒だったな」
「ダ、ダイジョウブミタイダッタデスヨ。ドウヤラキキッパツダッタヨウデ」
正確には、オレの命が危機一髪だった。
「そうか。ならいいんだが。
それと、もしかすると助け出す際、君の魔法の巻き添えになった、とかじゃないよな?」
「チガウッス」
……巻き添えどころか、狙いすました結果です。
元女神が弱みを握ったようなので、女性が本当のことをいうとは思えないが……
「そ、それで、他の目的、ってのは?」
とりあえず話を元に戻す。
「ん……んん。まぁいいか。あまり時間をかけたくないし」
オレは嘘が下手なのか、すぐに表情に出てしまうのか、詩音にはすぐに見破られてしまうので、支部長もオレの態度が気になるのか、若干訝しむ表情を見せるも話を進める。




