火のないところに火をつけ煙を立てる姉
両親、あるいは詩音が異世界出身だと仮定して、特に今回の場合は詩音に買い物を頼まれた直後に異世界転移した。
そう考えると詩音が仕組んだように思えなくもないが、召喚そのものは元女神が気合をいれて行ったと言っていたし、能力付与も元女神が行った。
となると、両親あるいは詩音にとって、オレの異世界召喚は想定外の事故、ということになるのだろうか?
とはいえ、両親には怪しむ部分はない。
一方の詩音は怪しいところしかないが、現状そんなことを考えたところで、事態が好転するわけでもない。
今はとにかく、目の前の問題を解決しなければならない。
支部長のトバッチリはなんとしてでも回避したいところではあるが、かといって支部長の行動はおそらく止められない。
衣服を破壊すれば行動そのものは止まるかもしれないが、支部長の性格的にこれでもかってほどオレのことを追い詰めかねない。
特に今宿直室を追いやられるわけにはいかない。
ただ、先ほどのヒノさんの対応的に、支部長は問題行動を起こすことが当たり前のようだ。
なので支部長がこれから起こす問題をしっかり覚えておき、それを報告すればきっとオレの言葉は信用されるはず。
そうなれば現場への無断立入の件は不問になる可能性もある。
ならば下手に支部長に反発するより、ある程度は協力して『支部長の指示により仕方なく』と主張したほうがいいかもしれない。
それにもしかすると、ヒノさんに同情されて優しく慰めてくれるかもしれないし、実はこんなことがあった、という話のネタにもなる。
よし。この方向で行こう。
「で、目的はなんですか?」
「む」
そうと決まれば、オレは少し支部長に顔を近づけて、誰をも魅了する瞳を直視仕返しつつ問う。
支部長の男関係の言動がブラフならこれで動揺するかもしれない、と思ったが、支部長は戸惑いの態度は見せるものの、男に対する免疫がない、というわけではなさそうだ。
単にオレが好みの男性ではない、ということもあるだろうが、今まで数々の男を手玉に取ってきたという話が本当かもしれない。
これが漫画の主人公なら照れ顔ゲットだが、現実はそう甘くない。
「答える前一つ質問だが」
「なんでしょう?」
「お前は同性愛者か?
いや、同性愛者を否定するわけではない、ということは先に言っておこう。愛の形は人それぞれだから否定するつもりは微塵もない」
……またこの質問か……
そういえば普段はから詩音をはじめ、お姉さん系には興味を示さないことから、オレはクラスメイトどころか、違うクラスの全く面識のない生徒からも『あいつは同性愛者』という噂が広まっている。
と、詩音が『私のクラスにもその噂が広まっています』と言っていた。
続けて『それとは真逆の、年端も行かない幼女に手を出す人間と思われるよりはマシなのでは? そのような人間は犯罪者ですし』とも言われた。
確かに幼女愛好家の犯罪者予備軍、と噂されるよりマシかもしれないが、そのような噂が立ってしまう原因、火のないところに火をつけ煙を立てた姉属性に言われても腹が立つだけだった。




