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鍵開けはお手の物

 昨夜は時間的にも気分的にも誘拐犯のアジトをちゃんと見る余裕なんてなかったが、明るい時間に改めて見ると、外観は日本でもよく見かける木造二階建てアパートそのままだ。

 こういう見慣れたものが出てくると、やっぱり異世界なんて夢、なんてことを未だに思ってしまう。

 いい加減慣れないとなぁ……

 ここは討伐協会から徒歩十分ぐらいの場所で、周囲を見渡してみると似たようなアパートや、普通の、それこそ日本で見るような住宅が立ち並んでいる。

 そういえばここら辺りは討伐協会だけではなく、工場っぽい建物が並んでいたから、もしかするとここら辺に住んでいる人の半分くらいは周囲の工場で働いているのだろうか?

 まぁ工場と思われる建物の中を確認したわけではないので、もしかすると外観が工場なだけであって普通に人が住んでいるだけかもしれないが。

 それはさておき、昨日事件があったからか、目的のアパートには『立入禁止』と書かれた黄色のテープが張られているので、他の似たようなアパートと間違うことはない。

 ……他のアパートでも事件があったのなら話は別だが。

 ただ立入禁止にはなってはいるものの、警備をする人がいるわけではない。

 もしかすると、ここは誘拐犯たちにとっての重要拠点ではなくただの改造アパートであり、内部調査は既に完了しているのかもしれない。

 これなら支部長も諦めて帰宅するだろう……と考えるのは甘いようで、素手でドアノブに触らないよう、ツールバッグから白い手袋を『二組』取り出す。

「ほら」

 と、共犯を強要するかのように、手袋を差し出してくる。

「……はぁ」

 ここまで来たらどれだけ言葉を並べても拒否することは許されないだろうから、素直に受け取り着用する。

「さすがに開けっ放しにはしていないか」

 同じく手袋を着用した支部長はドアノブに手を伸ばし、鍵が閉まっていることを確認する。

 だからといって当然諦める様子はなく、

「古いタイプの鍵だから……これだな」

 鍵はよく見る円形のシリンダー錠で、泥棒なんかが針金を突っ込むのは漫画なんかでもよく見る光景だ。

 それに対し支部長が行ったことは、ツールバッグから長さ10センチ、厚みは5ミリ程度の銀色棒を取り出し、鍵穴に軽く当てる。

 すると銀色棒はドロリと溶け、鍵穴の中に侵入していく。

 待つこと五秒程度で支部長が手首をひねると、がちゃん、という音が聞こえ、どうやら解錠に成功したようだ。

「この魔術が発達した時代に今更こんな鍵を使用するとは、愚かにも程がある。

 なぁ、そう思わないか?」

「……そっすね」

 とりあえず雑に賛同しておく。

 とはいえ、言われてみれば確かに、魔法、魔術がある世界なのに、日本でも使用されているような鍵はあってないようなものではなかろうか?

 元女神だって力任せにこじ開けたし、現在元女神の元で不幸になっているかもしれないあの女性は、元女神より力は強そうなので、多分余裕で開けられると思う。

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