また姉属性に屈する
「それとも何か? 他に報酬がほしいのか?
なら私の胸を触ってもいいぞ。この魅力的なボディ。男にはたまらんだろう?」
「……うーん……」
目的のためなら平気で身体を売るタイプのビッチ系お姉さんか……響きからしてもう最悪だな……
お姉さんご自慢のお胸は偽物でなければ元女神より若干大きく、詩音より若干小さい程度だろうか?
ならば触り慣れている、というと確実に変人扱いというか性犯罪者扱いされてしまうが、これもやはり元凶は詩音である。
悪巧みの詩音はいつも以上にくっついてくるため、詩音の大きさだと確実にオレの身体に触れる。
なのでもはや慣れを通り越してウザい。それに今度は何を企んでいるのか? と、内心穏やかではなくなるので、その大きく柔らかい胸の感触は恐怖の対象ですらある。
……本来なら男にとって至高の瞬間であるにも関わらず、こんな思いをしてしまうなんて……詩音は本当に諸悪の根源だ……
「なんだ? その薄い反応は? 今までの男なら確実に引っかかった手段なのだが?
まぁ実際は私の依頼を確実にこなせる男は皆無だったから、報酬は永遠にお預けのままだが」
……だーめだ。絶対に関わっちゃいけない人だ……
魔法のある世界で確実にオレよりも実力が上の人間がこなせない依頼とか、オレがいくら身体を張ったところで達成できるわけがない。
最悪大怪我をするだけの、言葉通りの骨折り損にしかなりかねない。
これはとっとと逃げ出したほうが吉か。
「どうやら君は他の男どもとは違うようだ」
これが漫画の世界なら、これで一目置かれて想いを寄せられるきっかけになるのかもしれないが、このお姉さんの目はそういうのとは違う気がする。
常に何かを企み、自身の利益のために行動する、という詩音や元女神に通ずるものがある。
「だが君が男である以上、私に逆らうことなんてできはしない」
「な」
そう言ってお姉さんは右手をオレの左手首に伸ばして掴むと、素早く自身の胸にオレの左手を触れさせる。
……まぁ柔らかい……が、何か違和感を覚える。
詩音とは違う柔らかさ。ただ、柔らかさにも個人差はあると思うので、一概に偽物とは言えない。
本物とも思えない……気もするが……
「おや? 支部長、今日はお早いですね」
「!?」
そこへお姉さんの後方から聞き間違えることが許されない声。
ヒノさんだ。
お姉さんとの会話に気を取られ過ぎ、さらには視界を遮られていたため気がつかなかった……いや、それだけではない気がする。
「あぁ。少し用事があってな」
と、お姉さんはオレの手を離さないまま、ヒノさんの方へ振り向こうとする。
「くっ!」
それを阻止するため、オレは全力で掴まれたままの左腕に力を込める。
お姉さんはそれを分かった上で、振り向くのを途中で止める。
「? どうされたんですか?」
明らかに不自然な行動ではあるが、ヒノさんは特に気にしていない様子。
……もしかすると、いつのまにかお姉さんが何かの魔法を使っており、その影響でオレはヒノさんに気づかず、そしてヒノさんもオレがいることに気付いていないのかもしれない。
そうでなければ、お姉さんの身体に隠れてしまうサイズのヒノさんはまだしも、お姉さんよりも厚みのあるオレにヒノさんが気付かないはずがない。
……あぁ……また屈してしまうのか……
「わかった……わかりました……協力します……」
「ふ」
オレの答えを聞いたお姉さんはニタリと笑い、手を離してからヒノさんの方へ振り向く。
「おや? コウキさんもいらしたのですね。気づきませんでした」
「……あ、あぁ……はい……」
やはりヒノさんはオレに気づいていなかった……いや認識できていなかった模様。
「ヒノさんも帰られたのでは?」
「ちょっと忘れ物をしてしまいまして。そうしたらいつもより早く出勤されている支部長の姿が見えましたので」
どうやら支部長という役職は嘘ではないようだ。
……権力者の職権濫用。ひどい。




