無期刑から一転
「それで規模が規模だから討伐協会規則『強者の心得』に準じて賠償金を請求することになってな」
「その『強者の心得』というのは?
あ、オレ、さっきも言いましたけど、事情を全く知らずに連帯者として登録されたので、そういうのは全く知らなくて」
「本当は討伐協会に所属する以上、知りませんでした、では最悪除会になるのだが、まぁ事情が事情だけに仕方ないところだな」
仕方ないで済ませなくてもいいんだよ。遠慮なく除会してくれ。そして連帯者を解除してくれ。
と、心で叫んでも実際に叫んでも無駄なもので。
「『力あるもは無闇にその力を振りかざしてはならない。やむを得ない場合であっても、その被害は最小に修めなければならない。ただし、想定外の脅威に関してはその限りではなく、全力を以てその脅威に立ち向かうべし』と定められている。
これは昔、討伐協会が『冒険者ギルド』と呼ばれていた頃の名残でな」
お。異世界定番の『冒険者ギルド』
昔とはいえ、やっぱりあったんだな。
「冒険者ギルドのそもそもの起源は、異世界からやってきたという勇者が魔王の討伐に向かったことでな。
私は異世界という存在は何かの例え話程度にしか思っていないが」
オレも異世界とか漫画とか夢の話だと未だに思っていたい。が、現実は残酷なものである。
「その勇者は見事魔王を打ち破ったのち、元の世界に帰ったのか姿をくらましたそうだ。
ただし、魔王が造ったとされる魔物は動物や植物を魔物化したものが大半だったため、魔力で作り出した魔力生物以外は世界に残った。
勇者に倣って世界を旅しつつ各地の魔物を討伐、いわゆる残党狩りをするものを『冒険者』と呼び、その冒険者に対して依頼や報酬を支払う制度を作り、まとめた組織を『冒険者ギルド』と呼ぶようになった。
そして当然その際には規則や心得なんかも作られ、『冒険者ギルド』から『魔物討伐協会』へと名を変え、免許制の専門御者のみが魔物討伐を行える時代になっても、その時代に合わせて改訂しつつ、礎となった『強者の心得』は今も規定から消えることはない。
で、今回の問題娘の行動はその『最小範囲』をちょいとばかり超えてしまってな。
その分はいくら功績をあげたからといっても負担をしなくてはならない。
加えて、討伐協会も対策を実行する直前だったというにもかかわらずの独断先行。
本来なら懲罰もので最悪無期刑もあり得たが、一人分の魔力で解決したこと、被害はあくまでも建造物のみだということだったので、専用の契約を交わして一部を負担するということになったんだ。
まぁ魔力に関する才能はあるみだいからな。塀の中で使わずにいるよりも、討伐協会が手綱を握っていた方が何かと都合がいい」
「……なるほど」
話を聞く限り、おそらく元女神は気合を入れてポイントを稼ぐために討伐協会が動く前に魔物の討伐をしたのだろう。
しかし、無期刑から一転専属契約とか……もしかすると天界に泣きついたのかもしれない。
昨日の話を聞いてるだけでも、なんでもあり感があるもんなぁ……
それにしてもお姉さんの言う、ちょっとばかしの規模、で三億って……
重要文化財でも破壊したか?




