表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/121

異世界?

「急な出来事で混乱しているかと思いますが、どうか私の話を聞いてください」

 詩音のいたずらだという推測ができるが故に、今後どんな展開が待ち受けているのか、という意味では気が気ではない。

 気は重いが、この自称女神の話に乗っていかないと先に進みそうにない。つまり解放されることはないので、話に付き合うことにする。

 それに正直なところ、今までにないタイプの悪戯なので、どういう流れに持っていくのかちょっと気にはなっている。

「まずこの場所ですが、ここはあなたが住む世界とは違う世界『ベグネリス』という世界です」

 造語なんだろうけど、どういう意味なんだろう?

 それは後で聞いてみるとして、異世界転移ものにするにはせめて足元を光らせるぐらいの演出は欲しかった。

「異世界って、アレですか?

 魔法とか魔王が存在して勇者が倒す、とかいう。そんな感じのヤツですか?」

 とりあえず異世界のテンプレ設定に乗っておく。

「ご理解が早くて助かります。まさにその通りです。

 そして私にはあなたの力が必要なのです」

 詩音のことだから、ゴリゴリのアスレチックを用意してそう。

 もしかすると去年の、命綱なしで校舎間のロープ渡り(一応下にはマットが敷いてあった)を平気で越えてくる企画かもしれない。

「いやいや。そう言われましても、オレは何の変哲もない普通の高校生ですよ?

 体育の成績がそこそこいいぐらいで、勉強は苦手。とても女神様の力になれるとは思えません。

 それとも、実はオレには秘めたる力が眠っていて、勇者としての素質があるとか、なんですかね?」

 異世界の能力付与の設定はどするのだろうか?

 炎の剣とかいって、剣の形をした焼きゴテでも渡されそう。

「あなたは選ばれし者なのですから、そのような力があることを私は期待しています。

 なので早速なのですが、あなたの力を引き出す儀式を執り行いたいので、私についてきていただけますか?」

 そこは女神が授けるんじゃないのかよ。異世界ものならこの会話の段階で既に何かを授けられているか、無能力者で追放されるとかだよな。

 それはさておき、聞かれ方からして断ることもできる感じはするが、多分ゲームのように断っても断ってもしつこく聞いてくる、実質返事は『はい、もしくは、イエス』以外の選択肢はないと思われる。

 それに断り続けていると、痺れを切らした詩音が現れて、無理やり連れていかれるかもしれない。

 もしそうなると、オレが詩音よりも力が劣ることを周囲に知られるという恥辱を味わうことになる。

 あの細腕でどこからあんなパワーを出しているのか……あれこそ異世界チート能力だよ……

「わかりました」

 拒否は無駄なので、大人しく付いて行くことを選択する。

「よかった。では行きましょう」

 と、オレの返事を聞いた女神が向かったのは出入口のドアではなく、窓。

 高さは腰よりも上で、全開すれば人が通り抜けられる大きさ……というか今改めて見ると、詩音の部屋の窓とは違うな……

 そんなことを思っていると、女神は窓を全開にし、ひょい、っと軽く跳んで外へ飛び出して行った。

 お嬢様カフェの人は詩音を含め、全員身体能力が極めて高いらしく、詩音の友人がストーカー被害にあったときは、犯人を捻り伏せた、とか言っていたらしい。

 ……捻り伏せるってなんだよ……

 それはいいとして、女神の演技を続けるならもっと上品な感じにはできないものか? これでは不法侵入したようではないか……いや、意外と正解なのかもしれない。

 女神が跳び出した後、窓の外を眺めてみる。

 と……詩音の部屋どころか、慣れ親しんだ我が家ですらなく、見知らぬ建物ばかりが並ぶ場所。

 確実に近所ではないが、異世界とも言えない。

 それは現代に日本でも見ることができる建物ばかりで、オフィス街……あ、いや、視線を移すと工場っぽいものの方が多いから、工場地帯だろうか?

「……どこだよ、ここ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ