元女神の思惑は?
「さて、力の差を思い知らせることもできたし、帰るわよ」
力の差を思い知らされたのはお前だろうに……
それはさておき、意外なことに元女神は女性に止めを刺すことはなく、動くを封じたところで立ち上がり、帰路に就こうとする。
「さっきお金をどうのこうのとか言ってたけど、それはいいのか?」
先ほどの言葉は女性を煽るためのものであって、そこは元でも女神。強盗まがいのことはやらないか?
「いいのいいの。
少しでも私をヒヤリとさせてくれたお礼として、丸一日解けない捕縛魔法を打ち込んでやったから」
やっぱりあれ、魔法だったのか。
「直接打ち込んだ方が効果が高い、とか?」
「それもあるけど、ぶん殴った方が私の気持ちがすっきりするでしょ?」
「でしょ、とか言われてもな……
お前の気持ちはさておいて、もしかして遠距離から当てる自信がないだけ、なんてことはないよな?
繊細な魔法は苦手とか言ってたし」
「……んなわけないでしょ。ここから一キロ先の米粒だって狙えるわよ……」
泳いだ目で自信とか言われてもな……
それと、しれっと距離の単位が出てきたが、異世界らしくないな。
覚えやすくていいけど、もしかすると自動言語翻訳という異世界特典で、馴染みのある単位に聞こえているだけなのかもしれない。
そもそもオレは日本語を話しているつもりだが、言葉は問題なく通じている、というか、多分勝手に翻訳されているようなので、馴染みの言葉を使っても問題なさそうだ。
「それに私からのプレゼントでもあるのよ。
たーだーし、あなた、にではなく、そこらへんに転がってる男たちへの、だけどね」
元女神は言いつつ、ぐりん、と首を女性の方へ回す。
「くぅ……」
ニタリと笑いつつ、女性へ振り向く元女神の悪者顔の凶悪さよ……
それに、オレでも元女神の言葉の真意が理解できる。
自分たちから金を巻き上げた女性が、半裸で動けない状況。
どうなるか?
想像に難くない。
「でもぉ、あなたが助かる方法もあるにはあるのよねぇ」
と、元女神はねっとりとした口調で女性に近づき、そして見下ろす。
……どっちが正義だっけ?
いやどっちも悪者で、悪者同士の抗争に負けた人がこれから制裁を受ける場面か。
そんな悪者元女神が助ける条件と言えば、借金返済のための手ごまとして使うことだろうか。
ここで女性から誘拐犯の財布を含めた金銭を回収しても、借金返済には焼け石に水(あくまで大金を持っていない場合)
なら元女神を上回る強さを持つ女性を手ごまとして働かせれば、効率よく金銭を回収できるというもの。
今回のような方法をとったとしても、罪は女性に擦り付けてしまえばいい。
……自分で思いついといてなんだが、吐き気を催すほどの外道な行為であり、そんなやり方でポイントを稼げるのかもどうかも、甚だ疑問ではある。
何はともあれ、元女神と能力はかぶってはいるが、確実に戦力(金銭回収能力)は上がるので、オレの生存率は今よりぐんと高くなる……はず。
元女神が無茶振りをしてこない限りは……
あるいは、これに懲りて今後一切このような行為を行わないと誓うのなら助けてあげる、という方向なら女神昇格試験らしい救済方法な気もするが……
10:0で前者かな。




