連行する理由
「で、話を戻すけど、あくまで魔物討伐なんだから普通の牛よりも強いわ。
もしかしなくても容易に人が死んじゃうくらいにはね。
そんなピンチの状況に陥った時、あなたは立ちすくんで黙って殺されるのを待っているの? あるいは、手を差し伸ばせば助けられる人を見殺しにするの?
どっちも冷静に状況を判断すれば助かる可能性は格段に上がるのに?
そうならないために、ある程度の経験を積んでおけば、いざという時に瞬時に動けるようになるのよ」
「なるほど。と、言いたいところだが」
言っていることは理解できるし、その通りだと思う。
平和な日本でも運が悪ければ自分が襲われることだってあるだろうし、目の前で詩音や友人、あるいは見ず知らずの人が襲われることだってあるかもしれない。
それでも冷静に状況を判断すれば、少しでも生存率を上げられるかもしれない。が、
「なによ? まだ納得できないの?」
「そもそも、わざわざオレが行かなくてもいい、って話だろ。お前の方が断然強いんだからオレの出番はない。
なんならオレが行くよりも、通報したほうが事件は素早く解決するかもしれないし」
「……ち……余計な事考えてんじゃなわよ……」
「今、舌打ちしたか? あと、なにぼそっと言ってんだよ?」
「舌打ちなんかしてないし、何も言ってないわよ。風でも吹いたんでしょ」
こいつ、どういう理由かしらないが、確実にオレを言いくるめようとしているよな?
もうちょっと強めに言ったほうがいいだろうか?
「お前が何を考えてるのか知らないけど、まずはオレがはっきり言ってやる。
どんな理由があるにせよ、命の危険があるところになんか絶対行きたくない。行きたくないけど、どうせお前の都合で無理やり連れていかれるんだろ?」
連行は詩音で経験済みで、オレに拒否権はなかった、というか、なぜか拒否したところでどういう経緯かわからないまま、結果的に付いて行くことになっていた。
コレガワカラナイ。
「お前はオレに期待していないと言っていたけど、オレを召喚した以上は現状で何とかしないといけないんだろ?
相棒、なんて言いたくないけど、変に隠し事して連行するんじゃなくて、正直に腹を割って話せ。
お前の性格もなんとなくわかってきたから、せいぜい呆れるとか、そんなことだろうと思った、ぐらいでしかないんだから」
「……今まで召喚した男どもは、私の美貌に惹かれて下心丸出しでホイホイ付いてきたものだけど……」
その男たちの気持ちもわからなくはないが、オレにとって元女神は好みとは真逆なので魅了されることはない。
……でも原因となった詩音に、ありがとう、とは言いたくない……
「まぁ私も愚かな男どもをやる気にさせる『媚び媚びモード』を使わなくて済むなら楽でいいわ」
それもなんとなく想像できる。詩音の場合はそんなことをせずとも言葉だけで男どもが従っていたが……よくよく考えると怖い光景だよな……
「じゃあはっきり言うけど、あなたを連れて行く理由は一つ。ポイント稼ぎよ」
「だと思った」
早速この言葉を使うことになるとは……予想してたよ。




