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魔力の旨味

 それはそれとして、とんでもなく重要なことがある。

「オレなんか連れて行っても何の役にも立たないぞ? それはお前だってわかってるだろ? 

 ただの足手まといにしかならない」

 もちろん困った人を助けたい、という気持ちはあるが、自分の命を晒してまで、となると話は別だ。

 これに関しては詩音ですら『自分の命を晒すのは無謀であって勇気ではない。ただ、できることはするべき。例えば通報とか』という、普段なら『笑いを取って油断させろ』とかいう人間なのに、中身が変わったのかと思うレベルでまともなことを言っていた。

 あくまでオレは衣服を破るしか能のない一般高校生だ。

 相手が男なら通用しづらいだろうし、攻撃魔法とかぶっぱなされたら無事でいられるとは思えない。

 それに比べて、この元女神を自称する女はデコピン一発で人を気絶させられるほどの出力を誇るため、もはやオレが付いて行く意味がない。

「まぁそうなんだけど、役目ならあるわよ。荷物持ちとか」

 ……やっぱりそういう役目なんだ……世界が変わってもオレの扱いが変わらない……

 心機一転できないオレをよそに、元女神は話を進める。

「これからお金を稼ぐにあたって、色々と耐性をつけておかないと後々困ることになるし」

「耐性って、なんの?」

 ワード的に、絶対人生で体験したくないことだと思う。

「例えば『魔物討伐協会』に登録している以上は、当然魔物の討伐を行うわけだけど、魔物であっても生物なわけだから、動物系の魔物は討伐の仕方によっては臓物ぶちまけることになるから。

 ゲームのように『倒したら宝石とかお金に変わって消える』なんてことないからね」

「……まぁ、そうだよな……」

 あれはゲームの演出であって、実際には死骸がゴロゴロと転がっているわけだ。

「それの処理まで含めて『魔物討伐協会』に所属できるのよ。

 それに魔物によっては食べられるし、自分が仕留めた魔物を持ち込んだら割引してくれるから、二つの意味でおいしいわ」

 ……今、信じがたい言葉が聞こえたような……

「魔物って食べられるのか?」

「食べられるわよ。

 というか、魔力の使い方を覚えた動物を魔物って呼んでいるのであって、魔力の集合体が魔物化するわけじゃないのよ。

 まぁそういう魔物もいるにはいるけど、現代では超特殊なケースだから今回はその話は置いといて」

 と、元女神は箱を移動させる仕草を取る。

 これって世界が変わっても共通の仕草なんだな。

「魔力の使い方っていうのは、言葉そのものの意味。

 例えば牛が魔力の使い方を覚えて火炎系の魔法を使ったとすると」

 その例えにピンとくる。

「牛舎が燃える」

「そ。だからその魔物化の兆候が見えたら即座に討伐しなきゃいけないの。

 で、その牛が食肉用であれば、ちゃんと加工したのちに食べられるようになるのよ。

 しかも普通の牛とは違って魔物化した牛だから、魔力が芳醇でよりおいしさを増すの」

「魔力そのものを食べる、ってイメージなのか?」

「というか、魔力は『旨味成分』って言った方がいいかもね。

 現代の普通の家庭では魔術を使用した料理がほとんどだから、同じ調理方法、同じ調味料をだと誰が作ってもあまり味はかわらないのよ。

 それを料理に特化させた魔力を使用する、いわゆる『魔導料理』を作るのがプロの料理人よ。

 ついでに言うと、おふくろの味、なんてのも家庭料理に染み込んだお母さんの魔力を常日頃から食べているから、他の料理とは違った安心感や懐かし、そしてお店の料理より美味しいと感じたりするのよ」

「……なるほど」

 元女神の言葉にしては妙に説得力がある。

 言われてみれば、オレもそうだが詩音でさえも『家の料理が一番おいしい』と言っていた。

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