胸の中で死ぬ
「つまり、あんたが私に手を出すことは刹那の快楽でしかなく、あとに待つのは大きなデメリットだけよ。
さ、わかったら宿直室に行くわよ。もう眠いんだから」
「へいへい」
まぁ手を出すことは絶対にありえない。
詩音の場合は姉弟ということもあるが、一年前に起きたとある事情により一つの布団で寝たことがある。
それは小学生時代に一緒に寝ていた時とは異なり、成長した詩音の胸を押し付けられることになったのだが、照れたり欲情したりという感情は微塵も湧いてこなかった。
これも詩音に虐げられてきた結果だと自分でもすぐに気づき、なんならその状況になったことを恨むばかりで、とにかく早く逃げることばかりを考えていたら、いつの間にか睡魔に襲われて普通に寝落ちした。
朝、息苦しさで目が覚めると詩音はオレを抱き枕のように抱えており、オレは男の悲願である『胸の中で死ぬ』羽目になるところだった。
そんなこともあり、詩音及び年上お姉さん系をそれまで以上にさけるようになってしまった。
まぁ今回の場合、本当に命がかかっているっぽいので年上お姉さん系、特に詩音に似た女性に対する興味が微塵も湧いてこないのは幸運だったと言える。
……まさか詩音はこれを見越していた?
そんなわけあるか! とセルフツッコミを入れておく。
とはいえ、年上であろうはずのヒノさんに対しては、一目惚れなのか好意を抱いているっぽいので、やはり見た目が大きなポイントになってるっぽい。
人を見た目で判断すんな、とか言われそうだが、一目惚れって見た目で判断するよな。あとは性格がどうか、という問題。
仮にヒノさんが詩音と同じような性格だった場合、オレはそれに耐えられるのか?
それとも今後二度と人を好きになることはないのか?
あるいは年下妹系の出現を待つしかないのか?
恋愛って難しいよなぁ……主に詩音の所為……
「ここね」
夜間受付の奥にある『関係者以外立入禁止』と書かれた看板の先にある階段を上ったすぐの場所に、どのくらいの期間かわからないが、お世話になる宿直室があった。
元女神が鍵を開け、ドアを開けると、
「……畳?」
町の雰囲気から日本っぽいとは思っていたが、ここに来て四畳半ぐらいの部屋には畳が敷かれている。
入口正面、部屋の奥には窓が一つ。部屋の中央には小さなテーブル、正面から右手奥側にはテレビっぽいものが設置されている。
そして入口左手側にドアが一つあり、ここが多分シャワー室だと思う。
「じゃあ私はシャワーを浴びてくるから、あんたは部屋の隅で正座でもしていればいいわ」
「……なんだその拷問っぽいやつは?」
元女神はわけのわからないことを言ったのち、テーブルの上に頂いた持ち帰りの食事を置きシャワー室へ。
そのすぐ後にシャワーを浴びる音が聞こえてくる。
もちろん覗きを行う気は微塵もなく、むしろあんな奴と一緒にいることがマイナスポイントだ。




