この世界の『設定』
「そんなことはどうでもいいの! 重要なのはこれからのことなんだから!」
その重要な話をする元女神が最低クラスなのは、目を逸らすことのできない大問題なのだが……
「とにかく! ここは『地球』ではなく『三教界』という世界よ」
元女神は言いつつ、空中にこちら側から読めるように文字を描く。
日本語ではないが日本語に近い文字で『三教界』と読める。
意外と器用だな。
「三つを教える世界? どういう意味だ?」
と聞いといてなんだが『地球』の意味を知らないので、聞いたところでな……と思わなくもない。
「正確な意味は知らないんだけど」
「おい……それって昇格試験的にマイナスポイントじゃないのか? 元女神さんよ」
「う……うるさいわね……いいでしょ別に……」
明らかにしくじった時の表情を浮かべているので、マイナス確定か。
「……一応説明するけど、ここは基本的に天使が女神昇格試験を受けるための世界なのよ。
特徴は基本的に穏やかで、試験の内容によっては魔王なんかも現れたりするけど、現在はそういうことは起こっていないわ」
「え……そういうのって天界で操作されているのか?」
なんか、凄く嫌なことを聞いた気分なんだが……
「この世界は言い換えると『試験場世界』なのよ。だから場合によっては文明レベルだって変わるのよ」
「……へぇ……」
素直に、天界すげぇ、という感想にはならないな……気持ちがモヤる……
「創造担当からすると『街作りゲームみたいで面白い』とか『プログラムを変えるの面倒くさい』みたいな、女神の間でも意見が割れてるわね」
……あくまでも、この元女神を自称する目の前の女性が語っているだけで何の証拠もないのだが、それが仮に本当だとすると、オレたちの住む世界って女神たちに弄ばれるために作られたのか? と思ってしまう。
とはいえ、それに対して怒ったところでどうにかなる問題ではないので、やはり今まで通り普通に生きていくしかない……現状は普通ではないが……
むしろ不幸に遭遇したときは『自分の運が悪かった』のではなく『どこぞの女神の仕業』と、責任を擦り付けることができると考えれば、気が少し楽になる。
「ちなみに、現在のこの世界の文明は魔力操作が当たり前になっている分、地球よりも上ね。
娯楽一つとっても……
例えば地球のゲーム機って、未だにコントローラーを握るとか、画面をタップするとかでしょ?」
「まぁそうだな」
「その点だけ見ても、この世界……全てがそうとは言わないけど、基本的には魔力を使用した技術、すなわち『魔術』だから、魔力操作でゲームを動かすことができるのよ。
まぁ私はレトロゲームも好きだから、例えば地球のゲーム機を今でも触ることもがあるわ」
魔術? 魔力操作?
聞きたいことはあるが、元女神の話が止まらない。というかこの元女神、絶対遊んで暮らしてるだろ?
「その中でもねぇ、私がよく遊んでいるのはスーパーマ」
「わかった。その話はわかったから」
このまま喋らせておくと重要な話にたどり着く前に夜が明けそうなので、無理やり割って入る。
この元女神、ゲームの話をし出した途端、目が輝き始めてどんどん笑顔になっていく。
普通ならそれを見て、かわいいな、と思うのだろうが、姉属性拒否に加え詩音という暴君持ちのオレからすると、ライオンが寝ている姿を遠くから眺め、ああしていれば可愛いのに、と根底では警戒する感情しか湧いてこない。
ただ、庶民的な遊びが好きだと言われると、街作りゲームと言い放った女神よりは、若干ではあるが好感が持てる。
これがゲームや漫画の主人公だと『自分の世界は自分たちで作る』とか言って女神と敵対し、やはり『熾煌』様は倒すべきラスボスになるのだろうな。
衣服を破るしか能のないオレには到底無理な話だ。




