高性能パシリ
心躍らない召喚理由を突き付けられて、尚且つ現状を現実だと認めた上でもう一つ絶望的なことがある。
「はっきり言うけど、ストリップとかいう冗談は置いといて、あの能力じゃ借金返済なんて無理だろ? つまりオレはただの役立たずでしかない。
生活費を稼ぐための普通のバイトぐらいならできるだろうが、到底借金を返済できるとも思えん」
「……そうなのよねぇ……」
悪魔改め昇格試験中の元女神は、同じく不可能な現実を突きつけられ、遠くを見つめる。
「でもさぁ、私もね、一生懸命気合いと願望を込めて召喚したのよ?
そりゃ今は女神昇格試験の最終段階で女神としての権限はないけど、召喚に関してはちゃんと天界からの許可も出てるから、ここまで大ハズレを引くはずないんだけど……」
自分で能力を授けておいて……と文句を言いたいところだが、確か当人の潜在能力を引き出す、的なことを言っていたので、これがオレの得意分野と考えるとハズレにもほどがある。
それとも何か? オレには性犯罪者としての素質があるとでも言いたいのか? 上司の女神様よ?
と、今更文句を言っても仕方がない。とりあえず何かの拍子にタガが外れて暴走し、牢屋にぶち込まれることだけは回避したい。
「ちなみに、どんな願望を込めたんだ?」
この元女神だと禄でもないことのような気はする。
「私の言うことを何でも聞きそうな、パシリ能力長けて借金を迅速に返済できる高性能能力者。んでもって、言葉が通じる人。あ、言語もそうだけど、言っていることが理解できる、ってことも含めてね。
って、ことだったんだけど、当てはまるのって言語が通じるぐらいしかないわよね?
もしかして、元の世界では高性能パシリだったとか?
「そん……」
そんなことはない! と、語気を強めて自信満々に否定したいところだが……
朝は詩音より先に起きて、詩音の起床時間になったら起こす。なお詩音は目覚ましのアラームをセットしていない。
登校時は詩音の教室まで荷物を持ち、昼休みはお茶汲み。
下校時も当然のように荷物を持ってお嬢様カフェへ。
以前はバイトが終わるまで自由時間だったのだが、詩音の変わり果てた姿を見てコーヒーを噴き出したその瞬間から、バイトが終わるまでお嬢様カフェ内に幽閉される羽目になってしまった。
それでもオレ好みのお嬢様がいれば全く問題なかったのだが、なぜかお嬢様はお姉さま系ばかり。
店長さん。もっとお嬢様のバリエーションを増やした方がいいじゃないですかねぇ? と、アンケートに記入したことはあるが、全く取り入れてくれず、苦痛の時間を過ごしている。
バイトが休みの日は買い物に付き合わされることもあれば、そのまま帰宅することもある。
帰宅したときはお菓子と着替え(家で過ごす時はラフな格好を所望されるので適当でよい)を用意し、着替えた後は制服をハンガーにかける。
その際、詩音は朝と同様オレの目の前で着替えるのだが、姉弟ということもあるが、もはや牛を見ているような気分にしかならないので、欲情メーターは微塵も上昇しない。
風呂に入っている間に着替えを用意し、風呂上りには飲み物を用意、就寝時には灯りを消す。
ただ、今回のきっかけとなった夜間の買い物に関しては滅多にない。
以前はどうしても読みたい時代劇小説が日付が変わると同時にコンビニに陳列される、という情報をどこからか得て、買ってきてほしい、と言われた時には、スマホでダウンロードすればいいだろうが、と思いつつもコンビニへ向かった。
それが確か一年ぐらい前の話。以降は今回に至るまで夜間の買い出しはなかった。
……うん。自分でも高性能パシリだと思うよ……




