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第4コロニーM11小隊(3)

『悪魔になるとどうなるの?』

『体が真っ黒になって、死ぬことができなくなるのよ。』

『死ななくなるの?』

『そうよ、トール、恐ろしいでしょう?』


死なないなら、その方がいいのでは?子どもの俺には母親の言ってることはよくわからなかった。



死にたい、そう思うほどの激痛を味わったのは16の時だ。


第3コロニーとの戦の最中。敵部隊をひとつ全滅させた俺の部隊は完全に気を抜いていた。ベースキャンプへ帰る途中、地雷を踏んだ。


大きな爆発音を最後に俺の意識は無くなった。


気づいたら両脚と片腕が機械になってた。部隊の皆のことは、誰に聞いても教えてはくれなかった。


機械化は徐々に進んでいった。敵を殺して、殺して、殺した。その度に自分の体を失い、代わりに機械の部分が増えた。


いつからか、俺はほとんど睡眠をとることがなくなった。夜、自分の体が黒く見える。母の言葉を思い出す。真っ黒な体で敵コロニーの兵を殺す俺はもう………。


「ジェイコブは、優秀な兵士だった。」


皆が寝静まる中で隊長が息を吐くような声で話す。俺に向けて話しているのは明らかだが。返事はしない。返事を求めているようには聞こえなかったからだ。


「だから、明日、きっと俺たちは死ぬ。そう思うんだ。まだ、ジェイコブ達を壊滅させた奴らがいるとは限らん。いや、いない方が普通だ。だが……」


悪魔に自分から会いに行くのだから行く先はきっと地獄なのだろう。


「…………喧嘩しかできない男でな。頭も悪くて、でも生きたくて。家族を守りたくて。いろんな仕事をしてみたが、結局何もできなくて。最後の仕事をクビになったあの日、胸が痛くて、意識が飛んで。俺は一度死んだんだ。なんの仕事だったかな……。もう、覚えちゃいないな。」


一瞬強くなった雨音が隊長の独白を隠す。


「……でな、気がついたら医者なのか機械の加工屋なのかよくわからない奴らに見下ろされてた。そして連れてこられたのは訓練所だった。お前が生きれば生きるほど、父と母、弟は楽な暮らしになる。そう言われた。だから訓練で四肢がなくなり、敵コロニーとの戦いで頭を半分失っても俺は生きた。体が機械に置き換わるたびに家族が楽になると信じてな。……家族が本当に生きているのかすら教えてもらえないのにな。」


機械化が進むたびに性能は上がるが自分が自分じゃなくなる気がする。そして、隊長はもう……。


「悪魔、か。先ほどは白々しく聞いたが、昔のことを忘れることが多くなった俺でも覚えている。真っ黒な体で人を殺す。死ぬことができない亡霊……か。」


俺たちみたいだな。


雨音が弱くなる。明日は予報通り晴れるだろう。

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