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いつも読んでいただきありがとうございます。次回は5/18(土)投稿予定です。
慎重に茂みの先を覗いてみると霧がなぜが立ち込めて確認が難しかったが確かに何か黒いものがそこにいた。
さらに観察すれは泉の傍にいるそれは眠っているのかその場で蹲ってそこから動く様子はない。
ここでティティルリアはすぐに変だと思った。
なぜなら魔物だろうが動物だろうが水場は長居すると危険な場所でもあるからである。
様々なモノたちが飲み水として利用している泉はいわば自分の天敵でもあるモノと鉢合わせになるリスクが高くなる、そんな場所に好き好んで長居するモノは殆どいないのだと狩りの基本の一つとして父から教わっていたから即座におかしいと思えた。
だが警戒と解くことはせず徐々に歩を進める・・・と更に異様なことに気が付く。
あっつい!!
ティティルリアはぶわっと汗が溢れて一気に汗だくになった。
泉の傍なのにそこはいわばサウナであった、その熱源はどうやら黒いものが原因らしくそれが半分ほど身体に泉に浸かっている水から蒸気が発生していた。
霧ではなく蒸気って・・・・・・・。
ティティルリアは不可思議な現象にごくりと唾を飲み込んで更に進んでみれば、その黒いものの正体がわかり今度は驚きを隠せないでいた。
それはあの時一度だけ見たことがある黒いコートだった。魔物ではなく人だと確信した瞬間力が抜けそうになるが、コートが落ちている先に倒れている人の確認し慌てて近寄る。
「やっぱりだ。」
去年一度だけ出会ったあの貴族の少年であった。
傷を受けた様子もなくこの状態でなお彼は眠っているだけのようでその事にティティルリアは安堵した。
「というか本当に暑い!」
緊張がきれた瞬間、大きな声を上げたのだった。
分かってからの私の行動は素早かったと思う。
まず自分より長身の少年を引き上げ引きずり結界内に移動した後彼の体に巡る魔力の様子を観察すれば、魔力が強いせいか体内で爆発を起こし熱を発していることに気がついた。
この現象には色々な要因があるのだが簡単にいえばこの少年の魔力の暴走である。
稀に元々魔力が高くてこういう子供がいると聞いたことがあるがみるのはこれが初めてだった。
でもお母さんから何度か暴走を止めたことがある話しを聞いた事がある。
その中で一番厄介な暴走は炎の属性をもった人だって・・・。
何気なしに理由を聞くと母が言うには、とにかく熱い!下手したら火傷する!とにかく熱い!!だそうな・・・・・・。
そんな昔に聞いた話しを思い出しながら、私は彼に自分の魔力をいそいそと送っては、彼の体の中にある膨大な熱を冷やしている。
良かったな少年、私が強い水と氷属性の持ち主だから火傷とかせずになんとか相殺してるぞ、けど熱いけどね!
それにしても・・・・・・。
なかなか他人の中に自分の魔力を送るというのは難しいと聞くのに彼の体にすいすい入り込んでいくのはなんなのだろうか?
相性がいいのか、それともただ単に暴走中の魔力は相殺するために魔力を取り込むとか?
と、そういえば・・・・。
「変なの、さっきまでこの子に怒っていたはずなのに。」
先ほどに驚いたせいだろうか怒りや悲しさはどこかへ吹き飛び、通常運転の私がおかしくてふふっと小さく笑った。
時間が経てば彼の体も異常とは思わない程度の体温へ戻っていく彼の肌を感じてほっとした。
1時間ほど経っただろうか、体温も大分下がり彼の顔色もよくなってきたのでティリエスはほっと息をついた。
1時間も魔力を流し続けるのは流石に疲れ体には疲労感が漂うが彼の様子が気になり、手放しそうな意識をなんとか起こす。
疲労感で眠い目を擦りながら自分の膝にのせている彼の顔をみやる。
去年と同じように顔一面にある鱗が見え太陽の光できらきらと虹色を発しているそれらのうちの一つの鱗にそっと触れながらやっぱり綺麗だとティティルリアはじっと彼の顔を見続けた。
彼も今では穏やかな顔を見せ規則正しい寝息を立てている、そのあどけない表情に微笑みながら見ていると私の手に気が付いたのか彼の瞼がぴくっと動いた。
そしてゆっくりと目を覚ます・・・・が疲労が激しいのか微睡んでいる様子であたりをあちこち彷徨っていた。
その彷徨っていた目が私ととらえた刹那、大きく私の心臓は脈打ち目が冴えた。
しっかりとした意識ではないのにも関わらず彼の金の目が私を見るその様は例えると肉食獣が草食動物を見つけたそれに近いものだった。
捕食者の空気を纏われて思わず身が竦んだ。それを許さないように彼の視線がねっとりと自分に纏わりつく不思議な感覚にむずむずする。一体これはなんだろうか?
まるで彼に食べられるような錯覚・・・・これが草食獣人の性というものなのだろうか?
私が何かをする間もなく彼が正気を取り戻したようでさっきよりもしっかりした目つきで私を見ていた。意識がはっきりすると鋭い目が余計鋭い目になり自分を見ているが先ほどの感覚は全くないのでティティルリアは自分がおかしかったのかと思い首を傾げながら彼を見た。
「俺・・・・君はあの時の。」
「・・・・・どーも。」
彼も私を覚えていたらしく、とりあえず挨拶をかわした。
大分良いのかゆっくり起き上がって彼は自分の周りを見てそして服を見やりそしてまた私を見た。
暫く無言であったが彼は小さく口を開けた。
「どうして俺、泥だらけなの?」
「・・・・・・・・・・・・・ごめん。」
君と私の体格差結構あるんだよ、引きずるしかできなかったんだよ。
ばつが悪くなり目をそらしながら私は小さく彼に謝ったのだった。
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