終わり
いつも読んでいただきありがとうございます。これで物語は終了です。新しい短い話は4/26投稿予定にしてますのでお暇な時に読んでいただけたら幸いです。
「子供であろうが女であろうが彼女を傷つける人間は誰あろうと許さないよ。」
男だったら生死は問わないけどねと物騒なことを言っている己の上司にラオルは背中に寒気を感じたが、表情には出さなかった。
「彼女のことになるとお前本当に豹変するから本当に怖い。」
そう呟いて思い出すのは自分達がまだ学生だったあの頃。
彼女のことをよく思わない連中が彼女を痛めつけようと画作しているのを聞きつけたサディアがあの日、誰もいない使われない教室で暴力以上の行為を相手に行なっている光景を目の当たりにした時、ラオルは初めて彼が彼女の執着は並大抵のものではないと理解した。
サディアの家である公爵家の家臣の一家であるラオルは両親に何がなんでも彼女、ティティルリアを守り、そしてそれはサディアよりも先に迅速に行うようにとキツく言われたあの命令の本当の意味を知ったのだ。
彼の本質は凶暴で彼女のためであれば、人殺しも平気でする人間なのだとーーー。
彼女が善人で優しい人であったことにラオルは心底感謝した。
昨日もし、タルネが自分に擦り寄った理由を知り、タルネを許さないと一言言ってしまえば彼女はきっと彼女達と同じように掃除婦として派遣されていたことだろう。
タルネの一族は一度大きな失態を犯している、次はない。
次がないということは待つのは死だけだ、それだけタルネ自身危うい状態だったのだ。
そんな死と隣り合わせの状態でタルネはよく彼女の友人のポジションを維持できたなと心底そう思ったが、もしかしたら対象である彼女のおかげかもしれない、なんてふと思う。
まぁそれでも彼女には同情しない。
何せ彼女の叔母は公爵家に擦り寄り地位を確立させようとした、そしてその確立の為にサディアの最愛の人を深く傷つけサディア自身にも傷をつけたのだから、家臣として当然下された罰だ。
「それはそうと。ライル相談なんだが。」
「え?何改って、サディアからそんな風に言われると怖いんだけど。」
物思いに耽っていたライルにサディアは急に神妙な顔つきになってライルに質問してきたのでライルはギョッとする。
そんな彼の戸惑いなど気にする様子もなくサディアは話しを進めた。
「今度の休暇に彼女のご両親に挨拶しに行くんだけど手土産ってどんなものが好まれると思う?」
「あぁ手土産・・・って待て待て待て。」
ライルの待ったの声にサディアは怪訝になる。そんな表情をした彼にライルは一瞬だけ自分が何か間違っているのかと思ったがそれはないとすぐに判断した。
「その前にお前彼女に説明しないといけないだろ。」
「何を?」
「しらばっくれんな、彼女が子供のままの姿の理由だよ!」
はっきりと言われてサディアはバツが悪そうな顔を見せた。
「お前がかけた呪いって、ちゃんと説明してからだろうが。お前があの時力を暴走させたせいで彼女の成長がとまったんだからな。」
あの日、彼女を傷つけた侍女の首を絞めながら、サディアは同時に自分から離れていこうとする彼女に対して呪いを贈った。
自分以外の男のものにならないように。
自分が彼女を添い遂げるまで解けないように。
古くから伝わる禁術をサディアはあろうことかティティルリアにかけたのである。
彼女の精神からでも身体の異常でもない。彼の蛇の血である呪いを一身に受けたのが原因だったことを彼はまだ彼女に打ち明けていなかった。
「好きな女に祝福をかけるんじゃなくてなんで呪いなんだよ。説明しないで黙ったままとか無理だろ?呪い解けてないんだし。」
「あぁ、それなら大丈夫。」
さっきとは打って変わってケロッとした顔を見せライルに言い返す。
「だって彼女の呪いはねーーーーー。」
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「あれ?」
ティティルリアは自宅の姿鏡に写る己の姿を見て、着替えていた手を止めマジマジと自分の姿を見た。
「もしかして・・・ちょっと背が伸びた??」
いつもの位置より数センチ高い位置に己の頭が映し出されていることにティティルリアは気がつき、そして幸せそうに笑った。
「サディアの言う通りだ。・・・サディアを好きって自覚したら成長するんだ。」
半信半疑であったサディアの言葉を思い出す。
『君は絶対に大人になれるよ。だって、僕と愛をこれから育てるんだもの。それは身体にもきっと良い兆しになる、恋は偉大なんだよティティ。』
恋人に言われた恋の力は偉大なんだねぇと再度ティティルリアがそう呟き、ふふっと幸せそうに笑って着替えを再開した。
「勿論、僕以外を愛しても呪いは解けないけどね。」
「タチ悪いなお前。」
いつも読んでいただきありがとうございます。