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いつも読んでいただきありがとうございます。次回は3/29(土)投稿予定です。
周りの誰もが声を出すことを躊躇うそんな空気の中、当事者の1人であるティティルリアだけがトンっとジョッキを置いて、タルネの方を見たまま口を開いた。
「タルネ、サディアからその事を言われた時私正直納得した。」
ティティルリアのその言葉にタルネは顔を上げた。
「え・・・それってどういう・・・。」
困惑なままのタルネにティティルリアは言葉を続ける。
「転校した時、実力で転校が決まったとはいえあそこにいた貴族の人ほとんどが私の事あまりよく思ってなかっただろうし、何より私が一番周りにいる全員を冷たく見ていた自覚はあった。それはあの頃のタルネ同様だったし実際、話しかけられ時は何度も冷たくあしらったし。でもタルネはずっと私の側に居よう居ようとした、それも凄く必死に。それが不思議だったの・・・どうして私に付きまとうんだろうって。きっと何か裏があるんだろうなってそう思ってたの最初。」
ティティルリアの言葉を聞くにつれ、だんだん塞ぎ込んでいく彼女にティティルリアは彼女に最後まで聞いてほしいと言葉を続けた。
「でも、タルネ。私はそんな事どうでもいいと思っている。」
「え?」
「私は今まで一緒に過ごしてきたタルネに友人として惹かれたの。一緒に勉強したり買い物行ったり卒業して成人になってから一緒にお酒呑んだり、たわいの無い話をして笑ったことケンカしたこと共感しあったこと、全て嘘じゃないと思っているから。だからきっかけなんてどうでもいいって本気で思っている。だから、タルネが私と同じ気持ちなら親友のままで居てほしい・・・。」
ティティルリアの言葉にタルネはくしゃりと顔を歪ませて泣きそうな顔になったがぐっと堪えたが、それでも左目の目尻からポロリと涙が溢れる。
それを乱暴に拭うと目を赤くさせタルネはへの字を曲げた。
「ずるい、ティリ。こんな大勢の前でそんな事を言ったら私が折れるしかないって考えて今ここで言ったんでしょ?こういう狡賢さは昔からよね。」
「ふふ、バレた?」
「バレバレよ・・・だって、私親友だもの、ずっと、これからも。」
「じゃぁ・・・はい。」
そう言ってティティルリアはジョッキを掲げるとタルネも自分のジョッキを掲げる。
「はい、じゃぁこれで仲直り〜!」
カチャンっとジョッキを当て合う。
そして2人して豪快に一気呑みをした。
「はぁ〜・・・ぬるくなってたね。」
「本当、駄目ねこれはしきり直しだわ、大将!ジョッキ生2つ!」
タルネの元気な声が店内に響き渡った事で周りも機嫌よく呑み始めた。
なんだかんだと仲間思いが強いのが騎士である。
「ねぇ、サディアも私を抱っこしないで呑んだら?」
ビール特有の白ひげをつけたままティティルリアは顔を上げて彼に勧めるが彼はにっこりと笑う。
「ううん、今のティティルリアを堪能したいから僕はこのままでいいよ。」
「?なんだかよくわからないけど私、ずっとこのままだけど?」
首を傾げるティティルリアにサディア今以上に甘いマスクを携え白ひげを自分の手で拭う。
「いいや、君はもうすぐ変わるよ。だから側にいて今を焼き付けておくんだ。」
「?ごめんサディア聞き取れなかったんだけど何?」
ボソボソ言ったサディアの言葉が分からずティティルリアは聞き返すがサディアは首を横に振った。
「なんでもない、やっぱり僕も何か呑もうかなって。オススメある?」
「え?!・・・お貴族様にビール?いやこの前買ってきた龍殺し・・・いや、あれは流石に強いし・・・。」
サディアの呑み物を一生懸命探すティティルリアの後頭部を見つめながらサディアはにっこりと深く笑みを浮かべた表情を見て誰もが見てはいけないものとして顔を背けたのだった。
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