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いつも読んでいただきありがとうございます。次回は3/22(土)投稿予定です。
ティティルリアをギュッと抱き抱えて静かにしているサディアに誰もが腫れ物を見るような目で見て触れないようにしていたが、どうしてもティティルリアと会話するタルネの視界に彼が見えるので思い切って理由を知っているであろうティティルリアに聞く。
勿論、騒いでいた騎士達も騒いではいるか聞く耳を立ている。
そんな諜報員並みのことを周りがしているとは露にも思わないティティルリアは途端ポッと赤らめ、気を紛らすように手に持っていたお酒をグイッと呑んだ。
「・・・・んと、実はサディアと恋人になったの・・・・。」
消え入るように小さな声で伝えたティティルリアのその恥ずかしそうな仕草に、初めて見た彼女のそんな姿にタルネは冗談ではなく本当の事なんだと理解した。
勿論、誰もが彼女の言葉をしっかり聞いていたので様々に仲間と顔を見合わせていた。
え?恋人?まじで?
え?隊長今までそんな事なかったよな?
でも・・・本当にあの子なの?
タルネとハイネしか女性陣はいないので殆どの男性がこう思う。
隊長が幼女趣味だったのか?!!
「・・・・・・。」
「?どうしたのサディア?」
「いや、なんでもないよ。」
周りの男どもの視線と何かを感じたサディアはギロリと彼女の後ろで凶悪な魔物を今にも殺しそうな目で周りの男どもを見ており、誰もがサッと彼の視線から逃げるように顔を俯かせた。
ティティルリアには見えないが真正面にいるタルネには見えていて、思わず顔を引き攣らせた。
以前から彼女に対する彼の想いを知っていたとはいえ、この様変わりようには困惑する。
「で・・・サディアに教えてもらったの。元々タルネは知り合いだったんだねサディアと。」
彼女の言葉で彼の行動に呆れていた表情を見せていたタルネは一気にサァッと顔を青白くさせた。
タルネの表情を見てティティルリアは目尻を下げた。
「その顔はやっぱり本当なんだね・・・。」
「ティティルリア・・・私。」
「うん、教えてもらったよ。タルネは昔私が会ったメイドの姪だって。」
その言葉にタルネはギュッと目をつぶる。
彼女に知られてしまったーーー。
自分が、彼女を傷つけたメイドの姪であること。全ての元凶を作った一族に連なる者だと。
「・・・ごめんなさい、黙っていて。」
タルネは素直に謝る。
先祖返りの容姿のせいで他の貴族から孤立していたサディアを見て自分の姪を彼に宛てがうことで出世を夢見た叔母の浅はかな思惑。そのせいで彼女の純粋に彼を慕う思いを踏みにじり、時期公爵家を継ぐ彼の彼女に対する熱く重い想いを軽んじた罪は、一族に連なるタルネにも背負わされた。
ティティルリアの近くに行き彼女を考えて行動しろ、そして何より一番に彼女を守れ、それがお前の命に関わることだとしても。
叔母が無惨な姿のまま転がされて自分は両親と共に冷たい床に座らせーーー。頭上で彼と彼の両親が冷たい目を宿し、怒りのまま自分にそう告げたあの日のことは今でも鮮明に思い出される。
タルネはそれから必死に勉学も剣を学んだ。叔母のようにそんな浅はかな想いを思ったはない、だが、自分が失敗すれば両親も叔母のようになってしまうということだけは理解した。
そうならなように彼女は血の滲むような努力をし、そしてここにいる。
「本当に・・・ごめんなさい。」
タルネは絞り出すようにティティルリアにそう言い謝罪した。
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