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いつも読んでいただきありがとうございます。次回は5/4(土)投稿予定です。




お父さんが言う運命の人、私の相手の人は一体どんな人なんだろう・・・・・素敵な人だったらいいな・・・・。


もしかして綺麗好きな人なんだろうか?

あ!なら掃除のあれこれを覚えていこう!昔から掃除するの好きだったし!


いや、もしかしたら食べることが大好きな人?

よし!今から料理覚えていこう!大丈夫!ついでお菓子も作りたいし私だって美味しいもの作って食べたいもの!


いやいや、もしかしたら寡黙な人かも・・・?

よーし!それなら会話スキル身につけておこう!私、昔は地味でコミュ障だったけど今から対処すれば大丈夫!


いやいやいや、もしかしたら優しい人でお金で困っている人とか貸したりしちゃう人だったり・・・?

よ、よし!それなら少しでも経済や職に明るくなっておこう!手の職でもいいし!なんなら魔法の練習をしたりしたっていいんだし!



出来ることが多ければ多いほどいいよね!


そう様々な運命の人を想い夢想した彼女は、地味にコツコツと様々なことに着手していった。まずは身近な掃除から始め料理に裁縫や栽培、更には興味を持った手製技術(ハンドメイド)、更には貴族階級にしかステータスとされない専門な事も学問も魔法も親の目を盗んで内密に勉強していた。

父は元貴族の出、母はとても優秀な魔法師ということもあってか、ティティルリアが学べば学ぶほど覚えていく。無駄なことは省き必要なことだけを覚えていくようにしていた為その覚え方は着々とそして驚異的なスピードで技術は習得していき知識はスポンジどころか乾いた砂が水を瞬時に吸い込むかのように吸収していった。

何より彼女は習得していけばいくほどやりがいを感じれば感じるほどより一層励むようになり嗜む程度どころか熟練の大人の習得並みに技能(スキル)が磨かれていった。そうして彼女は毎日コツコツ出来る事を広げ覚えていった。けれど近所の人付き合いも忘れずにし愛想よくし・・・彼女は自分の評価を下げるような事はせずスキルを身につける日々を過ごしていった。


あとはそう、運命の人を見つけるだけだ。

夢想しつつ習得していく日々。

彼女の生活スタイルは順調に見えた・・・のだが、ある日から彼女は予想していなかった障害に気が付いた。





ある日・・・そんな日々を過ごして5年後、つまりティティルリアが10歳になった頃だった。





まさかこんなことになるとは・・・・・予想外だった。

私は自分の理想の為に忠実に動きそしてそれらが完璧すぎたのだ。



家のソファに座りながら、彼女は小さく重い息を吐きながら窓から見える広場で遊ぶ子供達をぼんやりと見ていた。彼らの楽しいそうな光景とは逆にティティルリアは暗く沈んでいた。

別に近所の人達と折り合いが悪いというわけではない。何かしらの能力が上がるにつれてそれこそ傲慢な態度を見せたこともしたこともない・・・・まぁたまにスキルの習得のことでニヤニヤした顔を向けてしまったことがあったかもしれないが・・・・・・・。


やればやるほど身につく事にもはや快感になっていたスキル内容もそうだが、礼儀正しい態度によく手伝いをしそして勉学にも余念はない。そして子供たちとも本来なら困らせる立場となる年少組になるのに全くそういうことがなかったのも原因だろう。大概の大人達には良い子という評価であったが、子どもにとっては近寄りがたい子供として思われてしまったのだ。

それだけならまだいい、自分から近づき誤解を解けば良い話だ。

だが自分よりもそつなくこなす姿に妬みも少なからず持っている子もおり直接はなくても地味にこそこそ何かしらの陰口を言っているのが伺えた。

自分は子供だがどこか達観していたので知らない子に陰口を言われようが気にはならない。

だが変に悪目立ちになるのは避けたいところだった。

それに私は正直焦っていた、5年も経ったというのに全くと言っていいほど運命の人出会えない。兎は本能で遠くにいても感じ取れる種族もあるというに、全く私はその兆しがない。


まだ現れていないのかそれとも既に会っていて私が気がついていないだけなのか・・・出会えないことに不安を感じたティティルリアは何かで気を紛らわしたくて、分厚い本を両手に持ち急ぎ足で玄関へ向かっていった。


「あら?ティルちゃんどこへ行くの?」

織物をしていた母が手を止めティティルリアを見やる、母には落ち込んでいるところを見られなくて無邪気に笑いながら振り返った。


「丘で魔法の練習しに行ってくる!もう少しで新しい魔法が覚えられそうなの!」

「そう、よかったわね。夏だし暑いから気を付けていってらっしゃい。」

「うん!行ってきます!」


「・・・・ティルちゃん、落ち込んでいる理由は分からないけど・・・大丈夫だからね。きっとうまくいくわ、だって貴女はたくさん頑張っているんですもの。」

そういって勢いよく走って出かけて行ってしまった娘の後姿を見ながら母は小さく彼女に聞こえないようにそうつぶやいた。





家から少し離れた小高い丘についたティティルリアは少し弾んだ息を整えながら、日差しを避けるように木陰のある場所へと腰を掛けた。もう少し奥に進めばよく薬草が取れる森の入り口があり、そこから拭いてくる風は涼しくて彼女はここが昔から気に入っていた。


と、ふとある言葉を思い出す。


村の外れには魔物が現れる、弱い者は遠くにいってはならん。



まだ未だに村に魔物が現れるのでこのような掟がある。

だが安心して欲しい。1人でいっても問題ないようにしてくれたのは私の母だ。

村と森の境目であるここら一帯は、今は引退した身ではあるが魔法師である母が施した結界魔法がかけられておりそうそう滅多に危ない魔物など侵入できないようになっている。母はあのようにおっとりとした人であるが魔法に関して右に出るものはいない、加えて今は商人をしているが騎士から一時冒険者となり最高称号であるSクラスの冒険者として名を馳せた父もいるし大丈夫だ。



持ってきた本は魔法の本で彼女は2年前からここで読書するのが日課の一つになっていて、ここなら誰にも邪魔されることもなく本の内容もすらすらと入っていくし、格好の穴場だった。


魔法は個人差はあれど誰でも使うことができそれぞれ属性を持っている。個体によって得意属性が違うらしく教会で調べてもらうことが可能で、本来なら10歳前後の頃市井の一般学校に通う頃に調べてもらうのだが、調べてほしいと私が滅多に我儘を言わない姿を見たせいか、神父様が気を悪くすることもなく特別にそれをしてもらうこととなった。結果、水と風と光という世間で珍しい多種属性をもっていることが分かった。初期魔法なら誰でも全属性が使えるが上級魔法それ以上へ扱える程成長できるのは自分の生まれ持った属性1つのみと言われているので私はこの時大分舞い上がった。

それを知ってから余計魔法の練習に打ち込むことになった。同年代からは遠ざけられているし友人もいないせいでもあるのだが・・・・・・・。



早速本を開こうとしたがいつもと違うことに気が付いたのでその手を止める。

自分から離れた少し先、木々が生い茂っている場所にフードを被った人の姿で座り込んでいるのが見えたからだ。こんなに暑い日だというにすっぽりと体を覆っている厚手のフードコートはいかにも怪しいものだった。

なんというか・・・例えるなら闇結社が着ているような如何にもという服装だ。

ただそれが大人ではなく自分と同じ子供とわかると、不安よりも興味本位が勝り私は本を置いてその子へ近寄る。


どうやら寝ているようで規則正しい寝息が聞こえるがフードが邪魔をして顔が見えずにいた。

一体どんな子がこのような場所で眠っているのだろうか・・・・・?

いけないと思いつつもティティルリアはその子に気づかれないようになるべく音を立てずに近づいた。


「(・・・わっ。)」

しゃがんで覗き込むと思わず声を漏らしそうになった。

そこにはアイスブルーの髪は細くサラサラでな光沢をもち、肌が陶器のように白く、整った顔をした少年が目を閉じていた。

明らか誰もが目を引くだろうという容姿であるが、ティティルリアは一番関心を持ったのはそこではなく、彼の顔の周りを覆う鱗の存在だった。


爬虫類を思い出す鱗に只々魅入られた。爬虫類はどちらかと苦手であったが何故か彼のその鱗は自分が見てきた物の中で一番美しいと感じたのだ。

彼が俯いたままでこんなにも思うのだ、乳白色のその鱗はきっと日に当たれば真珠のように綺麗な虹色でキラキラと輝くに違いない。


まるで世界一の宝物を見つけたように胸が高鳴る、綺麗な物に年は違えど女は弱い生き物なのだ。


魅入られるというはもしかしたらこういうことをいいのかもしれないと感動しながら片隅で思っていると少年の目が震え、薄っすらと目を開けた。

金の色の瞳が見えそれもまた綺麗だなと思っていると、少年は驚いた目をこちらへ向けた途端さっと立ち上がったので、ティティルリアも驚いて固まる。


彼は何も言わず不快そうな顔をしてティティルリアを一瞥しフードを深く被り直すと、そばにあった荷物を乱雑に持ち抱え急ぎ足でティティルリアが来たとは違う逆の道を走って行ってしまったのだった。




暫く固まっていたティティルリアは彼の走り去った方向を見て、貴族が別荘でよく利用する避暑地区画の方角だと分かるとようやくのろのろ立ち上がった。鋭い目は流石爬虫類の種族といったところかかなりの迫力があった。そしてある一つの不安が頭をよぎった。

「やば・・・・貴族の人ジロジロ見ちゃった。後で怒られないかなぁ・・・・・・というか処罰とか・・・・・。」

あの鋭い目を思い出して彼女は心配を吐露したのだった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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