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いつも読んでいただきありがとうございます。次回は11/3(土)投稿予定です。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
馬車の中ずっと無言・・・しんどいし重たいな何これ。
ティティルリアの提案で3人とも馬車に乗ることになったわけだが、誰かが話しかけるわけもなくずっと無言の時間が続く様子にティティルリアは自分の言ったことを後悔し始めた。
私そっちのけで2人で話せばいいのに・・・なんでこの2人まで黙っているのかしら?
ハイネの方は窓の外を見ているし、サディアは何か書類を確認している。
いやその前に・・・私一般人だし関係ないけど、今読んでるそれ機密情報の内容じゃないよね?なんかちらっと右上に赤くシークレット文字があった気がするんだけど・・・いやいや、考えないでおこう。こう言う時は何か調合でもしよう。
気を紛らわせようとティティルリアは空間収納魔法から携帯調合器具を取り出す。
どんなに揺れてもうまくバランスが取れ揺れないように開発された不思議な小さな机の上に調合材料を入れれば自動で粉砕したり撹拌したりしてくれる機材を置いていく。
魔塔ブランドのものは少々値が張るがこれで楽にどこでも作れるようになったのは大きい。
場所を取らないようにしてるから少量しか作れないけど、今なら気は紛れるし。
さて何を作ろうかとレシピに目を向けていると、いつの間にかこっちを見ていたハイネと目が合い、ティティルリアはびくつく。
「あの・・・何か?」
「もしかして何か作るんですか?」
「えぇ・・・まぁ。あ、馬車の中ですから匂いがひどいものは作らないので・・・。」
「じゃぁ!もしかしてティティルリアさん美容系のもの作ろうとしてます?」
「え・・・えぇはい。美容液は香りの良いものを使いますから不快にはならないと思い・・・。」
食い気味に聞いてきたハイネにそう答えると、ハイネの目が一瞬きらりと輝いた。
「あの!もしよければ私にも作ってくださいませんか!?」
「え?」
キラキラとした目でハイネが頼み出したのでティティルリアは目を丸くさせた。
「やっぱりダメですか?」
「いやそう言うわけじゃないんですが、ほら他にも良いものはあるとおもんですけど。」
「な、何言っているんですか!?それ冗談で言ってます?!」
「え?・・・え?」
ハイネの興奮した様子に困惑するティティルリアは思わずサディアを見たが、未だ彼は書類から目を離さないでいた。
「ティティルリアさんはその様子じゃ知らないかもしれないけど貴女の調合した美容液類は市場では女性の間で人気すぎてなかなか手に入らないんです!」
「え?そうなんですか?」
たまに薬の調合以外に知り合いの商人から頼まれて作ることがあったけど・・・もしかしてそれのこと?
思い当たる記憶を掘り起こす。確かに注文も最近多くなってきて寧ろこっちから注文数を少なくするように交渉することになったけど・・・。
「私、タルネ先輩が自慢げに持ってくるのを羨ましく思ってたんですぅ。」
そういえばタルネには頼まれて個人で作ってたわ。
泣きべそかく彼女を見てタルネが自慢するように見せつけている光景が浮かびティティルリアは彼女ならやりかねないなと納得した。
「そういうことなら・・・いいですよ。」
「!本当ですか!」
「うん。まぁこれからお世話になりますし。そうやって私の作ったもので喜んでもらえるなら私も嬉しいですから。」
「やったー!!」
両手をあげて喜んでいるハイネを見て笑っているとふと視線を感じティティルリアは視線の先に目をやる。
え!
そこにはいつも真顔のサディアではなく微笑んでこっちを見ている彼と目が合い、ティティルリアはどきりとする。
な、なんでこっち見てるの?
彼の表情にティティルリアは困惑する。普通であれば婚約者の方を見て笑うところだろう、それなのになぜこっちを見ているのか。
「そ、それでしたら、ハイネさんの好きな香りとか教えてもらえますか?」
サディアの顔をもう一度見る事はできず、ティティルリアは視線を落としながらハイネにサンプルの香りが詰まったノートを広げ説明した。
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