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いつも読んでいただきありがとうございます。次回は8/3(土)投稿予定です。
昔よりも背も背格好も大きくなった彼を見上げる。
・・・随分、雰囲気も変わったな。
編入にした貴族の学校に彼も居たのは知っていたが、私から会おうとは勿論しなかった。
何より2年目からの専攻科の選択で彼の科目は騎士、薬学を専攻した私とは全く異なる学園生活を送っていたのですれ違ってくれて逆に助かったと胸を撫で下ろしたのを覚えている。
だが一度だけ騎士専攻のタルネのお願いで模擬戦を観戦した際、遠目から彼の姿を見たことがあった。
あの時は筋肉は付いていたがまだ青年特有の体つきが残っており、今目の前には細身ではあってもしっかりした体躯の男性がそこに立っていた。
昔の姿のままの私とは大違いだ。
と、ふと後ろを見ると彼に隠れてこちらを伺うタルネのよそよそしい姿が目に入った。
そして私と目があった途端バツが悪そうに俯く様を見て合点し、そしてスッと心が冷えていくのを感じ取る。
「エスペーダ嬢?どうされましたか?」
「あ、いえ・・・。」
先ほど案内した騎士が自分に声をかけた事でハッとする。
今考えたって仕方ないことだと切り替えティティルリアはソファに座り直すと、それを合図にサディアも向かい合わせに座った。
タルネは彼の部下なのか後ろで立ったまま待機する。
「・・・サディアだ、ここの隊長を任されている。タルネは私の部下で今回の要請に貴女の力を借りたいと無理を言って貴女にこうして来てもらった。ご足労感謝する。」
スッと手を差し出されたが、ティティルリアはそれを無視し頭をぺこりと下げる。
「いえ・・・。私のことはエスペーダと呼んでください。それで、どういった事で私の力が必要と?」
さっさと切り上げたいティティルリアは要件を聞こうと彼の顔を見る。
彼は自分の差し出した右手を引っ込ませながらこちらをジッと見つめており、まるで獲物を見るような目つきに背筋が冷える。
先ほどの事で気分を害したのだろうか?・・・でも、悪いけど私は嫌なものは嫌だし。大人だけど社交辞令できるほどそんなに割きれないし。
「・・・本題だが、植物の採取に手伝って欲しいと言うことは彼女から聞いて入るだろうか?」
「えぇ・・・はい、確か採取が難しい植物だと聞きました。」
大まかには聞いていることを伝えたティティルリアにサディアは頷いた。
「では、今度第2王女シルフィエ様がエルフ王へ嫁ぐことは?」
「まぁ・・・風の噂程度ですけど知ってます。」
興味の無いものにはてんで興味を持たないティティルリアは曖昧に答えたが、サディア達は別段気分を害した様子は無かった。
「それならいい、大まかに理由をいうがその輿入れの際どうしてもその植物が必要になったのだ。婚礼の言い伝えられているその祝福の花弁が。」
「え・・・もしかしてですけど瑠璃ガラスの花弁の事じゃないですよね?」
そう言われてティティルリアはある植物を思い出し思わず口を挟む。
ルーザッファ領の奥地にある今では太古の森の中に生息されていると言われている食物の花で婚姻者同士が結婚の夜、つまり初夜に互いがその花弁を食べ一夜を過ごせはより仲は深まるというもの。
この花の特徴な花弁が8枚で全体がガラスのような見た目をしそして反射すれば瑠璃色の光を纏い、人々を魅了するというもの。実際、ティティルリアでも標本で見た回数も含めまだ3回しかお目にかかれていない代物でありその3回ともが乾燥された状態のものであった。
「そのまさかだ。」
「嘘でしょ・・・。」
今回の依頼の植物の存在にティティルリアは思わず呟いた。
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