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いつも読んでいただきありがとうございます。次回は7/13(土)投稿予定です。
まぁ、別に悲観しなかったけど。
ティティルリアは湯気でぼやけてくる鏡を乱暴に手で拭うと、自分の顔が鏡に映る。
最初こそ何かの病ではないかと心配した両親だったが、調べた結果成長こそ止まっているがそれ以外私が健康であると分かれば心配はしなくなった。何なら母なんか「子供の貴女を他の子よりもっと長く一緒に過ごせるわ。」なんて逆に喜んでいたぐらいだった。
私は私で子供のままの姿でひどく安堵した。
あの苦い記憶をそのまま蓋をして、大人にならなくてもいいんだと。
あれだけ大きな期待に胸を膨らませた家族以外の他人に恋や愛を求めなくてもいいんだとそう自分が自分に言ってくれているように思えた。
実際学生の頃、自分の同年代は大人になり子供姿の私に対して恋愛感情を抱くことはなかったし、自分より学年が下の子も、同じ体格ぐらいであれば興味を示されても私より身体が大人になるにつれ、私には興味を示す事は無くなっていった。
他の子達よりそういった視線を受けることが少なかった為か、勉学に励めたしそのお陰でどの国でも顔パスで行けるほどの地位を得られたのだから私は満足している。
「まぁ・・・強いて言えば、新しいお店でお酒頼む度に十中八九最初に断られるのはついてくるのは面倒だけど。」
パチンっと指で鳴らすと自分の周りだけ暖かい風が纏われ、あっという間にシャワーで濡れいていた自分の身体は乾いていく。
うん、今日も魔力調整も問題なし。
自分の魔力の扱いに問題がない事を確認しつつ、いつもの普段着に裾を通そうとしてピタッと手が止まる。
「そういえば昨日、タルネに依頼を頼まれていたんだっけ?」
酒という単語で昨日の事を思い出す。
確か騎士団絡みである植物を採取したいのだが、普通の人間では採取不可能な代物なので、植物博士の称号を持っている私に依頼を頼みたいのだとか。
その時は親友の頼みだしと二つ返事をしたがほろ酔い気分で聞いていた。今冷静に思うと普通では採取できない植物って一体何を採取したいのやら・・・。
「正直貴族絡みとか勘弁してほしいけど・・・引き受ける前に確認しとけば良かったかな。」
まぁでも、そんな植物ならレア物だしできれば私も採取しときたい。
「とにかく話しを聞かないと・・・それなら少しよそ様行きの服にした方がいいか。」
と言ってもワンピースだけど、子供の姿だから上等な素材のワンピースならまぁまぁオッケーだしね。
そう思いながらシルクの淡いブルーのワンピースに袖を通す。
そして不自然に窪みが数箇所あるブレスレットを取り出すと、そばにあった色とりどりの宝石に目をやる。
「えっと・・・白の空間収納に赤の防壁・・・後は念のため緑の魔力増殖値上げるやつをつけていこう。後は適当に。」
カチカチと窪みにはめて一度かざして確認した後、ティティルリアは納得した顔をしてブレスレットを右手にはめた。
魔法付与石をこれだけ嵌めれば何が起こっても大丈夫か。
「じゃあ。早速タルネのところに行きますか!」
そう言って、テーブルにあった丸パンを一つ手に取り、ティティルリアはそれを加えて部屋を後にした。
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