始まり
拙い文章で所々読みづらい部分があるかと思いますが、生温かい目で読んでいただければ幸いです。こちらの更新は週一を予定にしています。次回は4/9(土)投稿予定です。
「ーーーはい!確かにククルブの花の納品確認できました!依頼金のご用意と素材を査定するのでもう少々お待ちください!」
春からもうすぐ夏へと変わろうとしているある昼下がり。
ここ、女神が主神である星「ラビス」にある魔人でもエルフでもない人族であるプラメイト族が統治する国の一つ聖国アストレイアにある首都から北へ離れた都ティスのギルドは今日も今日とて忙しく人が行き交い慌ただしく人が働いている。
時折、冒険者の理不尽な罵声やそれらをギルド側の護衛人が冒険者を叩きのめす音も聞こえてくるーーー。
ほんの少し物騒な場所で先ほど受注した依頼を終わらせ、受付嬢に素材の査定を待っている1人の少女が居た。
煩い方面に母譲りの紫の瞳で面倒くさそうな顔をして一瞥する。
見るからに新米冒険者が手に持っている薬草の素材である植物の枯れ具合を見て目を細める、どう考えても依頼の希望内容には程遠い代物のようだ、大方依頼金額が引かれて文句を言っていたのだろう。
自業自得なのによくもまぁあんなに騒げるもんだ。本当、きちんと依頼をこなして居ないのに最近の新米冒険者はどうしてこうも厚顔なのか。
錬金術や薬学を得意とする自分は素材を安く手に入れるため冒険者も兼業しているのでたまにこうしてクエストをこなすわけだが、あんな風に騒いで迷惑をかける本業の奴よりはマシだろう。
聞こえないように小さくため息を吐いていると、先ほどの受付嬢が奥から姿を現す。
お盆の上には今日の報酬の金貨数枚とそれより多くの銀貨が乗せられていた。
「お待たせしました!今回の報酬額になります!」
ニコニコと笑みを浮かべて差し出されたそれを一度ペコリと頭を下げて自分の空間収納の中に入れる。
それをニコニコと未だ笑みを浮かべたまま受付嬢は見つめていた。
「ティル君はいつも質の良い素材を見つけてくれるから助かります!」
ティル君といつものように呼ばれ、硬貨をしまいながら照れくさそうにする。
「あー・・・まぁ、いつも作るときに素材の鑑定してるし植物は毎日のように触っているから。」
「でもそれでもすごいよ!いつもどんな植物でも保存状態も良いし、それを見た依頼者が個人依頼してもらうくらいだもの。」
「まぁ・・・ありがたいけど、本業は作る専門だからほどほどしてもらうと・・・。」
「わかってます、続けてもらう為にちゃんと約束を守るようにギルド長から言われていますから!」
その言葉にホッとして、最後の金貨を仕舞い込む。
今日はこれで仕事は終わりである。
「じゃぁ自分はこれで。」
「ティル君、今からいつもの酒場にいくの?」
「そうだね、いっぱい引っ掛けてから家に帰るよ。」
「もう!また!いくら18過ぎたからってお昼から呑むなんて、そんな姿なのにどこぞのおじさんみたいな昼呑みなんかして!お姉さん悲しいわ!」
その姿と言われティルは苦笑いを浮かべる。
「いや、子供の姿だろうが自分は仕事の後はこれが欠かせないんです。労働の後の冷えたエールは美味いですから。」
「もう!嫌よ、そんな可愛い姿なのに!」
「可愛かろうがなんだろうが、自分のスタイルは変えませんよ。それに友人を待たせていますし。」
そう言って、11歳ぐらいの短い赤髪の少年のような姿のティルことティティルリアは笑ってギルドを後にしようと歩き出した。