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悪女と第二王女は、ようやく心を通わせることができました。

とても大切なお願いがあります!

どうか、あとがきまでご覧くださいませ!

「っ! そんなことはありません! お姉様は、とても優しい方なんです!」

「うおっ!?」


 おどおどした様子から打って変わり、すごい剣幕のエリーヌの姿に、僕は思わず()け反ってしまった。

 こ、これはどういうことだろう。仲良くなりたいというお願い事にも驚いたけど、まさか彼女が、リゼットを『優しい』と評価しているなんて。


 いや、もちろん僕は、リゼットが本当は心優しいヒロインだってことは知っているよ?

 だけど、いじめられていた側のエリーヌが、どうしてそのことを……?


「お姉様は、いつも私に酷いことをおっしゃったりしますけど、そのたびに泣きそうにされておられました! 私が使用人達から嫌がらせを受けた時は、わざと違う理由で使用人達を叱りつけて、助けてくれたりしました! そんなお姉様を、『悪女』などと呼ぶのはやめてください!」


 あー、なるほど。確かにリゼットなら、悪女のふりをして妹を助けたりしそう。

 とはいえ、当のリゼットは、妹がそんなふうに思っているなんて、想像もしていないだろうなあ。


 いくらふり(・・)だとはいえ、エリーヌをいじめていたことには変わりないし、憎まれていると思っているだろうから。


「あ……」

「エリーヌ殿下、リゼット殿下のことを理解してくださり、ありがとうございます」


 気づけば僕は、この可愛らしい第二王女の頭を撫でていた。

 ちょ、ちょっとやり過ぎたかなあ……。


 でも。


「え、えへへ……」


 エリーヌは、嬉しそうにはにかむ。

 どうやらそれは、杞憂だったみたいだ。


「そういうことでしたら、ぜひとも僕に協力させてください。きっとリゼット殿下は、エリーヌ殿下のことが大好きなはずですから」

「ほ、本当でしょうか……」

「はい。あんなに人懐っこい王女殿下は、あの御方くらいですよ」


 そうとも。ずっと家族に見てほしくて、だけど、見てもらえなくて。

 よりによって『悪女』になるという選択までして、失敗して。


 僕とサンドラが構ってあげると、それはもう嬉しそうに、全力で僕達のために心を尽くそうとしてくれて。


 そんな彼女が、妹からの好意を嬉しくないはずがないんだから。


「なので、早速お会いしに行きましょう。……あ、キャスが人の言葉を話せることは、内緒にしてくださいね? 僕とあなただけの秘密です」

「は、はい! ハロルド殿下との秘密です!」


 僕が人差し指で口元を塞ぎ、ちょっとおどけてみせると、エリーヌは楽しそうに頷いた。


 ……あんなところをウロチョロしていたキャスには、あとで説教するけどね。


 ◇


「! ハロルド殿下! お、遅かったですわ……ね……」


 サンドラと楽しそうに話をしていたリゼットは、僕に気づいて顔を(ほころ)ばせるも、一瞬で表情を曇らせた。

 僕の後ろに隠れている、エリーヌに気づいて。


「遅くなって申し訳ありません。実はサロモン陛下との謁見が終わって、エリーヌ殿下にお会いしたので、せっかくですのでお茶をご一緒しないかとお誘いしたんです」

「あ、あの……」


 まだ心の準備ができていないのか戸惑うエリーヌだけど、僕はわざと彼女の小さな背中を押して、前に立たせた。


「エリーヌ殿下。想いは、ちゃんと言葉にしないと伝わりませんよ?」

「っ! は、はい!」


 なんて偉そうなことをささやいてみるものの、僕もどの口が言っているんだろうね。

 僕だって、想いを伝えていないっていうのに。


「あ、あの! お……お姉様、私もご一緒したい、です……」


 消え入りそうな声ではあるけれど、エリーヌは勇気を振り絞って告げる。

 さあ、妹が頑張ったんだから、次はリゼットの番だよね。


「フ、フン! あなたのような者と一緒では、せっかくのお茶が不味くなってしまいますわ! 即刻ここから立ち去り……」

「リゼット殿下。もう、そのようなことをなさる必要はないのでは?」

「っ!?」


 サンドラに冷たく指摘されてしまい、リゼットが息を呑んだ。

 さすがは僕の最推しの婚約者。たったこれだけのやり取りで、色々と状況を理解してくれたみたいだ。ただし、その視線は『あとで説明してくださいね』と物語っているけど。


「お姉様! その……お、お願いします!」


 エリーヌは深々と頭を下げ、リゼットは戸惑う。

 さて……僕もちょっと、助け船を出そうかな。


「リゼット殿下。エリーヌ殿下は、優しくて大好きなあなたとお茶をしたいとおっしゃっています。あとは……あなただけです」

「あ……」


 やっぱりリゼットは、エリーヌに嫌われていると思っていたかー。

 前世で『エンハザ』を知り尽くした僕だって、まさかそうだとは思いもよらなかったからね。分からないのも当然だよ。


「そ、その……私はこれまであなたに、散々酷いことをしたことは分かっているでしょう?」

「いいえ! お姉様が私にそんなことをしたことはありません! お姉様はいつだって、私のことを気にかけてくださいました! お父様もお母様も、お兄様だって私のことを見てくれ(・・・・)なかった(・・・・)のに、お姉様だけが私を見てくれた!」


 ……何とも皮肉なものだね。

 ジャンは当然として、サロモン王もポーラ王妃も、リゼットだけでなくエリーヌのことも見ていなかったなんて。


 そう考えれば、いじめるふり(・・)をしていたリゼットは、まさしくエリーヌを見てあげていたわけで。

 だからリゼットみたいに苦しむこともなく、心が救われていたんだからね。


「リゼット殿下」

「ちょ、ちょっと……」


 サンドラに背中を押され、リゼットがエリーヌの前に立つ。


 そして。


「お姉様! お姉様!」

「エリーヌ……馬鹿ね……っ」


 リゼットの胸に飛び込み、泣きじゃくるエリーヌ。

 彼女を受け止めたリゼットもまた、涙を(こぼ)した。


「まさかハル様が、席を外されている間にこのようなことをなさっているとは、思いもよりませんでした」

「本当に偶然ですよ。むしろ、このきっかけを作ってくれたのはキャスです」

「えっへん!」


 僕の胸の中に隠れていたキャスが出てきて、肩の上で胸を張る。

 そんな相棒を見て、僕とサンドラはクスリ、と笑った。

お読みいただき、ありがとうございました!

第二部の開始以降、おかげさまで今日も日間1位をキープできました!

本当に、ありがとうございます!!!


ついては、これからも止まることなくハイファン日間1位のまま駆け抜けるため、引き続きどうか、皆様のお力をお貸しいただけないでしょうか!


応援していただけるのであれば、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


皆様の応援は、この作品を継続する原動力となります!

なにとぞ……なにとぞ、よろしくお願いいたします!!!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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