僕を支援してくれる人が現れました。
お待たせしました! 第二部開始です!
聖女クリスティアと聖騎士カルラの使節団が、王国を後にして聖王国へ帰って行った日から、ちょうど半年。
つまり、『エンゲージ・ハザード』本編開始まで、残り二年を切ったわけ、なんだけど……。
「ハロルド殿下。やはりここは、殿下をおいて他にはおりません。どうかお引き受けいただけないでしょうか」
とまあ、僕は朝から外務大臣の“ロバート=オルソン”伯爵に頭を下げられている。
彼の依頼というのは、列強国の一つである“カペティエン王国”へ親善大使として使節団を率いて向かってほしいというもの。
なお、デハウバルズ王国とカペティエン王国は犬猿の仲であり、王国建国からこの三百年間、幾度となく戦争を繰り返している。
最近こそ表面上はお互いに友好的に接しているけど、ふとしたきっかけで何が起こるから分からない、まさに二十四時間起爆スイッチに手をかけている状態だよ。
で、『エンハザ』では戦争を引き起こしたい連中の企みによって実際に一触即発の状態となるんだけど、ここも主人公であるウィルフレッドがヒロイン達と一緒に活躍して戦争を回避するのだ。
というか、よくよく考えたら主人公の身の回りで事件起きすぎだし、本編開始時の年齢で十六歳の主人公に、何でもかんでも押し付けすぎ。もうちょっと大人は頑張れ……って、いいたいところだけど。
……この世界では十五歳から成人扱いなので、一応は大人なんだよね。前世の世界だと、ただの高校生でしかないんだけど。
「な、何度も言ってますけど、僕には絶対に無理です! そんな大役務まりません!」
「いいえ! 因縁の相手であるカペティエン王国だからこそ、ハロルド殿下以外にこの役を果たせる王子殿下はおられません!」
僕は全力でお断りしても、こうやって必死に縋ってくるオルソン大臣。
どうしてここまで、彼が僕に仕事を押し付けようとするかというと……困ったことにこの大臣、僕を次期国王に擁立しようと画策しているらしいのだ。
なんで『無能の悪童王子』である僕を、彼がこんなに推しているかって?
どうやらオルソン大臣、聖王国使節団のホスト役を務めた僕を、過大評価してしまったみたいなんだよ……。
僕は迷惑をかけないようにと、余計な口出しをせずにできる範囲で頑張ってはいたよ? 前世で文化祭の実行委員だった時のことを思い出して、ほんの少しくらい張り切っていたところがあったのも認める。
でも、だからってその程度で僕の評価を一八〇度改めて、いきなりそこまで支持しなくてもいいじゃない。いや、素直に嬉しくもあるんだけどさ。
「こう申し上げてはなんですが、カーディス殿下は少々自尊心が高く、他の者を見下すところがあります。ラファエル殿下はそういったことはありませんが、ただ、どこか疑心をお持ちのところがあり、カペティエン王国との交渉の場において予想外のことをされる危険があります」
「…………………………」
「ウィルフレッド殿下に至っては、国王陛下が喧伝されたことによって国民からは再評価されておりますが、一方で、貴族……特に文官達からの評価は最悪。もしあの御方が大使となられたら、職を辞すという文官達も多くいます」
……悲しいけど、オルソン大臣の人物評は概ね正しい。
カーディスとラファエルについては、そのことが『エンハザ』本編でも指摘されており、それを主人公がフォローしたこともあって、最終的に二人が主人公を支持する結果に繋がっていた。
ウィルフレッドについては、まあ……みんなご存知のとおりだよ。聖王国使節団のホストを務めた時に、あんなにも部下を顧みない命令ばかりして、しかも手柄だけ総取りしたんだ。文官がついてくるはずがない。
「で、ですが、それであれば僕は『無能の悪童王子』と呼ばれ、世間の評判は最悪。聖王国使節団のことについても、ほとんどオルソン閣下や文官達に任せてしまった上に、聖女様の誘拐未遂においても何もできませんでしたよ?」
「ええ、そうですね。我々を信頼して仕事を任せていただき、困っていた時にはさりげなくフォローしてくださり、気遣っていただきました。文官達は皆、ハロルド殿下とならこれからも一緒に仕事がしたいと申しております。もちろん、それはこの私も」
僕が引き受ける資格がないことを説明しても、オルソン大臣がそれはもうニッコリと満面の笑みを浮かべてこんなことを答えてくるんですけど。いや、どうしろと。
「なお、本件については国王陛下と宰相閣下にも、既に許可をいただいております。あとは、ハロルド殿下が首を縦に振っていただくだけです」
おっと、既に外堀を埋められているのか。
根回しが上手い優秀な外務大臣がいてくれて、この国も安泰だよ。
「ハア……それじゃ、僕に選択権はないじゃないですか」
「いえいえ、そんなことは……」
くっそう。してやられたよ。
だけど、『無能の悪童王子』であるこの僕が、こんなにも期待されているんだ。
なら……やるしかない、よね。
それに、これは決して悪い話じゃない。
僕は『エンゲージ・ハザード』の主人公と……ウィルフレッドと、戦うと決めたのだから。
僕の、『大切なもの』を守り抜くために。
「……分かりました。今回の件、お引き受けいたします」
「! ありがとうございます! もちろん、ハロルド殿下のことは私共が全力でお支えいたしますし、カペティエン王国に滞在中も、快適にお過ごしいただけるように万全を尽くします!」
手を取って嬉しそうな表情を浮かべるオルソン大臣に、僕は思わず苦笑した。
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