覚えた違和感
『無能の悪童王子は生き残りたい』第3巻は絶賛発売中!
あとがきもぜひご覧くださいませ!!!
「ハル様。私のBランチの鴨のロースト、とても美味しいですよ」
「ハロルド! Cランチの魚のポワレ、最高だから食べてみなよ!」
こんにちは、ハロルドです。
今日はここ、王立学院の食堂で修羅場っております。
というかデスピナが王立学院に入学してからというもの、とにかく二人の喧嘩が絶えない。毎回巻き込まれる僕の身にもなってほしいんだが。
「プークスクス。ハロルド殿下、両手に花ですね」
「うるさい」
専属メイドのくせに主人に対して何一つ気遣うことなく笑うモニカ。彼女にはいい加減、配慮や手心というものを覚えてほしい。
「ですけど、ハルさんも実際のところはどうなんです? 先代国王陛下も、愛人を含めたら三人も女性を囲っていたわけですし。あ、食べないのならそのお肉もらいますね」
「ちょっ!?」
呑気に尋ねてきたかと思うと、無断で僕の肉を強奪するリリアナ。ご存知『ガルハザ』の主人公である。
わざわざ僕の肉を狙わなくても、カーディスやラファエル、それにオーウェンに言えば大量の肉を用意してくれるだろうに。
「それにしても、昼食くらい静かに過ごしたいんだが」
そんな僕の呟きなんて、聞いてくれる人は皆無。今日もこの喧騒を受け入れるしかないのか。
などと項垂れていると。
「おう、ハロルド! ここであったか!」
現れたのは、言わずと知れた黄元璋。相変わらず声がでかい。
その傍らには、従者である林淑恵がお辞儀をしていた。
「ああ、そうだ。早速借りていた例のアレ、なかなか良かった……が、僕個人としては、NTRは少々受け入れがたい」
「む……NTRの良さが分からぬとは、お主もまだまだだな」
そんな性癖溢れる会話を始める僕と元璋。周囲は言葉の意味も理解できないようで、不思議そうな表情を浮かべている。もちろんヒロインは知らなくていい。
「うわー……NTRとか本気かよ。俺はどっちかといえば寝取るほうが好きだけどな」
トレイを持ったロイドが、残念なものを見るかのような視線を僕達に向けながら、会話に加わってきた。余計なお世話だ……って!?
「貴様! 余を……いや、NTRを侮辱する気か!」
「なっ!?」
激高し、ロイドの胸襟をつかむ元璋。
僕とのファーストコンタクトでもそうだったが、この男、少々沸点が低いのではないだろうか。
「このっ! 離しやがれ!」
「黙れ! 貴様が崇高なるNTRに頭を下げるまで、余は絶対に許しはせぬ!」
NTRが崇高だって話は前世を含め初耳だが、このままじゃまずい。
仕方ないので、僕は二人に割って入ろうとするのだが。
「ハル様……NTRとはなんでしょうか……?」
「ハロルド、NTRって?」
何故かサンドラとデスピナは、NTRというワードに興味津々の様子。
僕はどう答えていいのか分からず、ロイドと元璋を止めることができずに冷や汗を流して固まってしまった。
◇
「プークスクス。お嬢様がNTRの意味を知った時の顔、絵画にしたい気分です」
放課後になるも、昼休みのことを思い出してはモニカが大笑いする。
そんなことをしているとサンドラに斬り伏せられないかと冷や冷やするが、いつものことなので放っておこうと思う。
「ほら、いつまでも笑ってないで、早く寄宿舎に帰ろう。サンドラも首を長くして待っているだろうし」
そうなのだ。今日は僕が日直だったため、サンドラには先に寄宿舎に戻ってもらった。
モニカ? 帰るように言っても、結局は見つからないように僕を監視……げふんげふん。護衛をしてくれているので、あえて何も言わない。
それに。
「……それで、どうだった?」
「はい。とりあえず調べた限りでは、元璋殿下のおっしゃっていたことに相違はないようです。……ただし、元璋殿下が行方不明だった間、その動向を知る者は元璋殿下本人のみですが」
「そうか」
『エンハザ』では死亡している設定だった黄元璋。本来なら、本編開始から既に半年が経過している今、この学院にいることはあり得ない。
この世界の管理者であるテミスにも確認したが、やはり『エンハザ』本編開始時点で死亡しており、その後の『エンハザセカンド』にも登場しないとのこと。
なら。
「元璋……あいつは一体何者なんだ?」
「あえて理由はお尋ねしませんが、ハロルド殿下は彼をお疑いなのですね」
「ああ」
せっかく主人公のウィルフレッドを排除し、管理者であるテミスを無効化しても、僕の与り知らない『エンゲージ・ハザード・セカンド』という世界が存在する。
僕を明確に敵と認識している者も。
「……まあ、知ったことではないがな」
ああ、そうだ。
たとえどんな敵が現れたとしても……僕の知らない世界があるのだとしても、そんなのは当然のこと。むしろ、前世の知識があった今までがただのボーナスでしかない。
ならば、乗り越えるだけ。
どのような障害が待っていようと、立ちはだかる者がいようと、僕と僕の『大切なもの』を壊そうとするなら、全て排除してやるまでだ。
「やれるものならやってみろ。僕が……この『無能の悪童王子』が、まとめて蹴散らしてやる」
沈みゆく夕日を見つめ、僕は悪役らしくニヒルに笑った。
お読みいただき、ありがとうございました!
第3巻発売記念として、4話構成で特別編を更新していきます!(4話目!)
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早い書店様では、既に並んでいるところも!
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3巻では『エンハザ』の舞台となる王立学院編へ突入!
乙女ゲーム版『エンハザ』の主人公、肉食女子のリリアナが大暴れ!
そしてそして、ハロルドの前世でどうしても勝てなかった、ユーザーランキング1位の影も……!
全編書き下ろしの第3巻、どうぞお見逃しなく!!!
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