攻略対象を放置してはいけないことを思い出しました。【後編】
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「捨てられた回復魔法の愛し子~皇帝である父親に不用な息子だからと容赦なく捨てられた第六皇子は、傷だらけの黒い竜を癒した結果、溺愛され幸せになりました~」
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「うおお……近づきたくない……」
二年生の教室の入り口から中を覗き、席に座りながらうつむくラファエルを発見。
光属性キャラのくせに闇属性かと思うくらい負のオーラを纏い、周囲の生徒達も誰も近づけずにいた。
「ハル様、どうしますか?」
「見なかったことにして教室に戻ろう」
そもそも僕は、別にラファエルとリリアナがどのような仲になろうと知ったことじゃない。
フラれたのならフラれたで、好きにすればいいのだ。
ということで、僕は踵を返しその場から速やかに戦略的撤退を行おうとしたところで。
「ひょっとして……ハロルドかい?」
「っ!?」
ついてないことに、ラファエルに見つかってしまったみたいだ。
これは『判断が遅い』と天狗のお面を被った人に叱られてしまいそう。
「あ、あはは……ちょうどこちらに来る用事があったんですけど、お取り込み中ですよね。それでは」
爽やかに右手を掲げ、僕は素早く退散しようとするのだが。
「ハロルド、少しだけいいかな」
「……はい」
無念。ラファエルに捕まってしまった。
こんなことなら、最初から余計な首を突っ込むべきじゃなかったな。とほほ。
ということで、僕達はラファエルに連れられて校舎裏へとやって来たんだが。
「……実は、リリアナ嬢が僕を無視するようになったんだ」
「は、はあ……」
そのことはカーディスから聞いている。
だけど、リリアナにそんな認識はなく、むしろラファエルが肉を提供しに来ないことを不満に思っているくらいだったんだが。
「それ、本当ですか? 今日の昼休みにリリアナと食堂で話しましたけど、むしろ彼女は兄上が最近顔を見せないと言っていましたが……」
「きっとそれは、彼女なりの気遣いだろうね。だって、僕が近づいても気づいてくれない。声をかけてもスルー。だからきっと、リリアナは僕のことを嫌っているんだよ」
今にも泣きそうな表情で告げるラファエル。
『エンゲージ・ハザード』で見せる、マザコン腹黒王子の面影はどこにもなかった。
ただ、これだけは言わせてほしい。
正直、どうでもいい。自ら首を突っ込んでしまったとはいえ、面倒臭いことこの上ないのだ。
「……兄上の勘違いかもしれませんので、もう一度話をしてみては?」
「っ!? 無茶を言わないでくれ! もしまた彼女に無視なんてされたら、僕はもう……生きていけない……っ」
「ええー……」
ラファエル、メッチャめそめそするじゃないか。
『エンハザ』では長兄カーディスと王位継承争いを繰り広げ、色々な搦め手で敵を排除してきたあのラファエルが。
リリアナが主人公の『ガルハザ』でも、ラファエルはいつも自信に満ち溢れ、他の攻略対象の男どもと堂々と渡り合っていたというのに……って。
「あれ……?」
ここで僕は、違和感を覚える。
そういえば『ガルハザ』で、主人公が攻略対象と険悪になるイベントがあったよな。
攻略対象同士にも相性というものがあって、仲の良い攻略対象、仲の悪い攻略対象の組み合わせがある。
一番分かりやすいのは、カーディスとラファエルの関係だろう。王位継承争いをしているだけに、相性は最悪だ。
「……いや、これは違うか」
テミスを倒し、今では二人の仲は険悪というほどではない。王位継承争いに関しても、ラファエルはもうそこまで固執していないしな。
じゃあ、他に原因が…………………………あ。
「ええと……ちょっとお聞きしたいんですけど、リリアナに無視される以前、兄上は彼女と会話をしたりしてましたか?」
「無視される前? ……カーディス兄上やオーウェンが事あるごとに邪魔をして、二人きりになれる機会がなかったんだよ」
「なるほど……」
やっぱり。
これ、攻略対象の『拗ねるモード』だ。
『ガルハザ』に限らず、あらゆるギャルゲ、乙女ゲーではある程度攻略が進んだ攻略対象を蔑ろにしていると、拗ねてしまうイベントが発生する。
仏頂面で一度だけ警告してくれたりするんだが、それを無視すると好感度が下がり、ゲームによっては攻略不可に陥ってしまうものも。
リリアナのことだから何も意識していない……いや、お肉だけを意識しているんだろうけど、ラファエルを構わなかったことで『拗ねるモード』に移行してしまったんだな。
こうなると、ラファエル側からリリアナにアクションを起こすことは期待できない。
関係を維持したいのなら、リリアナが声をかけないと駄目だ。
ただ。
「分かりました。僕も別の機会に、リリアナにそれとなく話をしてみますよ」
はい、嘘です。
すごくどうでもいいので、放っておくことにしよう。
リリアナに話をしてラファエルをもっと構うよう言ってもいいけど、そうすると『ガルハザ』で見たような『やっぱりリリアナ嬢は、僕のことが……』的な感じで調子に乗ってドヤ顔を見せるラファエルが目に浮かんだ。ちょっとイラっとする。
「! ほ、本当かい!」
僕の両肩をつかみ、思いきり前後に振るラファエル。
気持ち悪くて吐きそう。
「いやあ! やっぱり持つべきものは頼りになる弟だよ!」
「あ、あははー……」
ラファエルよ。僕は男に抱き着かれる趣味はないんだ。
お願いだからすぐに離れてくれないか。
「そういうことですので、僕は行きますね」
「頼んだよ!」
全力で手を振るラファエルにお見送りされ、僕は教室を後にする……んだけど。
「プークスクス。ラファエル殿下の道化師っぷりはなかなかのものでしたね」
どうやら僕が何を考えているのか分かったらしく、モニカは取り繕うともせずに笑っている。
そうだよ。僕は何もしない。
そんなことに付き合っているほど、僕は暇じゃないんだよ。
「二人共、くだらないことに付き合わせて悪かった」
「いえ、面白いものを見れたので私は満足です」
「モニカ、あなた……」
満面の笑みでサムズアップするモニカを見て、サンドラはこめかみを押さえる。
本当に僕の専属侍女、どうかと思う。
ということで、僕は全てを放置してから一週間後。
「リリアナ嬢、さあお食べ」
「わあい! ありがとうございます!」
食堂で、リリアナにこれでもかと肉を提供するラファエルの姿が。
どうやら僕が何もしなくても、リリアナは構ってあげたようだ。
「なんですか。つまらないですね」
そんな二人を見て不満顔なのはモニカ。酷い専属侍女である。
でも、僕はそんな彼女にまた笑いの種を提供しようと思う。
「モニカ」
「なんですか? ……って、プークスクス」
僕が指差した先を見て、モニカがこれでもかと笑う。
そこには、柱の陰から歯ぎしりをして見つめる、カーディスとオーウェンの姿があった。
お読みいただき、ありがとうございました!
今回は番外編として、前後編でお送りしました!
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