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攻略対象を放置してはいけないことを思い出しました。【前編】

書籍がGA文庫様から絶賛発売中です!

また、新作を始めました!


「捨てられた回復魔法の愛し子~皇帝である父親に不用な息子だからと容赦なく捨てられた第六皇子は、傷だらけの黒い竜を癒した結果、溺愛され幸せになりました~」


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「あーもう、しんどい」


 ロマニア帝国から無事に帰還して一週間。

 王宮にある執務室で、僕は溜まりに溜まった書類の山とにらめっこしていた。


 どうやら不在の間、僕の第三王子としての仕事は誰も片づけてはくれなかったみたいだ。


 特に。


「ハロルド殿下、どうなさいました?」

「……いや、少しくらいこれ(・・)を何とかしてくれてもよかったんじゃないかな、と。誰がとは言わないが」


 書類の山を指差し、部屋の掃除をしているモニカにこれでもかと皮肉を込めて告げる。

 僕の侍女なら、それくらいしてくれたっていいと思うんだが。


「え? 捨てればよろしかったのですか?」

「なんでだよ!?」


 人差し指を口元に当てて小首を傾げ、そんなことを(のたま)うモニカ。

 ああ、僕には分かっているさ。彼女がわざと(とぼ)けていることくらい。


「……もういい。ちょっと息抜きに、中庭に行ってくる」

「いってらっしゃいませ」


 モニカに見送られ、執務室を出る。

 普段は王立学院の寄宿舎で暮らしている僕だが、溜まった仕事を片付けるために今は王宮で過ごしていた。


 それを知ったサンドラは【竜の寵愛】を発動。瞳を血塗られた赤に染めて全力で阻止しようとしてきたが、さすがに仕事を滞らせるのはまずいと思ったモニカが、珍しく説得してくれた。

 いつもなら全力で油を注いでくるのにどういう風の吹き回しなのかと、あの時の僕は直角になるくらい首を傾げたとも。


「おや?」


 中庭にやって来ると、そこにはうつむく第二王子のラファエルの姿が。

 嫌な予感がする。僕は声をかけることなく回れ右をした……んだけど。


「おっと」


 ついてないことに、第一王子のカーディスとぶつかってしまった。


「ハロルド、仕事は終わったのか?」

「い、いえ、ちょっと息抜きに来たんですが……」


 そう言うと、僕はラファエルをちらり、と見やる。

 要はあいつがいるから逃げようとしているのだと、暗に告げたわけだ。


「……そっとしておいてやれ。あいつは先日、リリアナ嬢にフラれたのだ」

「フラれた?」


 はて? リリアナに相手にされないのは日常茶飯事では?

 その程度で落ち込むようなラファエルじゃないし、むしろ腹黒く策を練るキャラだと思うんだが。


「そのことを知った時は、さすがの俺も声をかけるのを(はばか)られたぞ。何せ、いつものように適当にあしらわれるのではなく、肉を差し出しても目すら合わせてもらえず、完全無視をされてしまったんだからな」

「おおう……」


 確かにそれは、リリアナにしては珍しい……というかあり得ない。

 常に肉に飢えているガルハザの主人公、『肉食獣』リリアナ=アボットが。


「えーと……念のためお伺いしますが、カーディス兄上はリリアナとは……」

「私は問題ない。昨日も肉を持参したら、最高の笑顔で出迎えてくれたぞ。今日もこれから彼女に逢いに行くつもりだ」

「そうですか……」


 リリアナの餌付けは順調に進んでいるようで何よりだけど、こうなればいっそのこと肉とマリアージュすればいいんじゃないか? リリアナの奴。


 まあでも。


「それじゃ、僕は仕事に戻ります」

「ああ。私もそろそろ彼女のもとに行かねばな」


 別に約束をしているわけではないにもかかわらず、それがさも当然であるかのように振る舞うカーディス。

 その背中に肉汁(まみ)れの哀愁が漂っているように見えるのは、気のせいだろうか。気のせいだな。


 だけど。


「……一回、話くらいは聞いてみるか」


 そんなことを呟きながら、僕は執務室へと戻った。


 ◇


「ほへ? 私がラファエル殿下を無視、ですか……?」


 次の日の昼休み、僕はリリアナに大量に盛られた肉をご馳走しつつ、ラファエルの件について尋ねると、彼女からはそんな反応が返ってきた。

 少なくともリリアナの様子からは、ラファエルに対しておかしな感情を抱いているようには見えない。


「い、いや、カーディス兄上から、二人が最近何かあった的なことを聞いたんだ。それで……」

「何ですかね。別にいつもどおりですし……あ、そういえば」


 首を捻るリリアナだったが、思い出したかのようにぽん、と手を叩いた。


「ラファエル殿下、最近お肉を持ってきてくれません!」

「そ、そう……」


 きっと無視されると分かっているから、ラファエルは彼女に声をかけようとしないんだろう。

 つまり、また無視されて傷つくのを恐れているのだ。そうに違いない。


 ただ、少なくとも彼女にはラファエルを無視しているような素振りはない。

 というか、微妙に話が噛み合っていないなあ……。


「そうか、助かったよ」

「いえいえ! こんなにお肉をくれるハルさんには感謝しかありません!」


 僕は席を立ち、食堂を出る。


「……どう思う?」

「彼女が嘘を吐いているようには見えません。とすれば、カーディス殿下のお話が正しいかどうかを確認したほうがいいのでは」

「だよな……」


 サンドラの答えに、僕は頷く。

 そもそも今回の件について、僕はカーディスからまた聞きしただけだ。


 なら、当事者に話を聞いたほうがいい。

 放課後になり、僕はサンドラとモニカを連れてラファエルのいる二年生の教室へと向かった。

お読みいただき、ありがとうございました!

今回は番外編として、前後編でお送りします!


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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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