王国に血の雨が降りそうになりました。
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「僕としても、ここに来たことで収穫はあった。別にオブルやコロッセウムをどうこうするつもりはない。それと」
「……?」
「デスピナもここにはいられない。なら、別の場所に移ったほうがいいだろう。そのアリアナという奴が、口出しできないような場所に」
「っ!?」
つまり、そういうことだ。
イベントボスとはいえ、『エンハザ』のキャラが不幸な目に遭うのを黙って見ていられるほど、僕はヘビーユーザーを名乗っちゃいないんだよ。
「い、いいのか……?」
「もちろん。それに、イベント……ゲフンゲフン。こういうことは初めてじゃない」
同じイベントボスのキャスは僕の相棒だし、魔道人形のライラは僕の道具に甘んじて……いや、メッチャ喜んでるし、何ならこの世界の管理者であるテミスもいるし。
デスピナは元王女らしく落ち着いていて常識も持ち合わせているから、全然問題ない。それどころか一番まともなんじゃないかと思えてきた。
「そういうことだからデスピナ、これからもよろしく」
「う、うん……っ」
差し出した右手を強く握りしめ、デスピナはうつむく。
まあ、見たところ僕達と同年代っぽいし、王立学院の生徒として過ごしてもらうのも悪くないかも……って。
「ふふ……うふふふふ……!」
え、ええとー……どうしてサンドラの瞳が赤く輝いているのかな?
「ハロルド殿下、お気をつけください。お嬢様の嫉妬が天元突破しています」
「ええー……」
どうやら僕の妻は、女子と握手することすら許してはくれないらしい。
嫉妬深い奥さんを持つと大変……とは思わないよ。むしろ望むところだ。
「さ、さあて、それじゃ帰ろうか」
「ふふふふふ……これは帰り次第、ハル様を誰にも触れられないように閉じ込めて差し上げませんと」
「そういうのはやめような」
にたあ、と口の端を吊り上げるサンドラを、僕は必死になだめる。
愛が重いのはいいけれど、そろそろ実害が出るレベル。
「ですが、お嬢様の心配もごもっともかと。ハロルド殿下は、無自覚にフラグを立てまくりますので」
「何を言ってるんだよ。というか、フラグってなんだフラグって」
「そういうところが無自覚だというのです」
珍しく少し怒り気味のモニカが詰め寄ってくる。
僕ほどサンドラの気持ちを理解している男はいないんだぞ? ちゃんと彼女の想いは自覚しているとも。
「オブルは……って、聞くまでもないか」
「おうよ! ここは俺が作った、俺だけの国だ! たとえ皇帝陛下でも、ここだけは譲るつもりはねえ!」
やはり思ったとおり、オブルは引き続きコロッセウムの主として居残るつもりみたいだ。
まあ、余計な連中から目を付けられないように、王国を通じて正式にロマニア帝国にコロッセウムの保護を要請しとくか。
「ハル、帰ろ?」
「そうだな、帰ろう」
肩の上に乗るキャスの頬を撫で、僕は微笑む。
僕を攫ってここに放り込んだ女が何者なのか気になるが、それは帰ってから考えるとしよう。
それに、ルシオに接触したモストロ=モノスとかいう男のことも気になる。
いずれにせよ、僕は守るだけだ。
――この、『大切なもの』達を。
◇
「さすがはハロルド様。攫われながらもヒロインを連れ帰ってくるとは思いませんでした」
はい、ハロルドです。
デハウバルズ王国に帰還した早々、テミスにそんなことを告げられてしまいました。
「……ヒロインってどういうことだよ。お前なら、彼女が『エンハザ』のイベントボスだってことくらい、知っているだろう」
僕はテミスに近づいて耳打ちする。
ただでさえサンドラから誤解を受けているんだ。そんなことを彼女が知ったら、間違いなく王国に血の雨が降るぞ。
「ああ、そうでした。ハロルド様は『エンゲージ・ハザード・セカンド』は未プレイでしたね。実は彼女、『セカンド』から攻略対象のヒロインに昇格したんです」
「はあ!?」
せっかく小声で話していたのに、テミスがそんなことを言ったせいで大きな声を上げてしまったじゃないか。
「はい。彼女は今は亡きノマデス王国の姫として、命を狙っている妹のアリアナから逃れるために身分を偽り、コロッセウムで剣闘士になるエピソードが……」
「それは知っている。だ、だけど、ヒロインだったら攻略ルートが存在するはずだろ」
「そのとおりです。デスピナの攻略条件はコロッセウムで彼女に勝利することと、語られた事情を知った上で優しく受け入れ主人公が匿って上げること。これで晴れてクリアとなり彼女は『恋愛状態』になります」
なんてこった。攻略条件を全て満たしているじゃないか。
しかも今の話が本当なら、デスピナは僕と『恋愛状態』になっているってことに……。
「ん? どうしたハロルド」
「っ!? い、いや、なんでもない……」
不思議そうに見つめるデスピナから、慌てて視線を逸らす僕。
み、見る限り普段どおりの様子だし、『恋愛状態』になっているようには思えない。きっとテミスの勘違いだな。そうに違いない。
「それより、あたしはこの国に来るのは初めてなんだ。せっかくだし案内してよ。……そ、その、二人っきりで」
前言撤回。これ間違いなく『恋愛状態』になってるじゃないか。どうしよう。
「ふふ……うふふふふ……面白いことをおっしゃいますね。ハル様は私の夫なのですから、駄目に決まっているでしょう」
「は? 何それ。ハロルドは王族なんだから、妻の一人や二人いたところで別に問題ないし。ていうかあんた、ひょっとして自信ないわけ?」
「っ! ……いいでしょう。あなたの屍を、命を狙っているという妹とやらに差し出すことにいたしましょう」
「まさか、このあたしと勝負するつもり?」
あああああ……どうしよう。このままじゃ王宮に血の雨が降る……。
「全てはハロルド殿下の自業自得かと」
「なんで!?」
「胸に手を当ててお考えになることを具申します」
とうとうモニカにまで見捨てられてしまった……。
「マスター。私にお命じいただければ、この二人を速やかに排除いたしますが」
「ややこしくなるからやめて!?」
ますます混沌となった王宮の一室。
四人の女子が争う中、僕はゆっくりと後ずさると。
「「「「あっ!」」」」
「キャス! 逃げるぞ!」
「ニャハハ……しょうがないなあ」
キャスを連れ、部屋を飛び出す僕。
おのれ、どうしてこうなった。
お読みいただき、ありがとうございました!
第2巻発売記念として、完結後の続きをお送りしましたが、いかがだったでしょうか?
もし皆様が書籍をお買い上げいただいたおかげで第3巻の出版が決まりましたら、デスピナのエピソードも入れたいなと思っているくらい、好きなヒロインだったりします。
というわけで、先月に第1巻が発売されたばかりの、
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