イベントボスに勝利しました。
『無能の悪童王子は生き残りたい』第2巻は絶賛発売中!
お見かけの際は、どうぞお手に取ってくださいませ!
あとがきもぜひご覧ください!!!
「ほらほらどうした! そんなものか!」
「うるさい!」
試合開始から既に三十分が経過するも、デスピナの攻撃は未だに僕の身体に触れることができていない。
それにしてもデスピナめ、すごいスタミナだな。この三十分の間休むことなく攻撃をし続けているぞ。
僕? 僕は【千里眼】のおかげで最小限の動きで躱し続けているから、疲労なんてないよ。
だけど、このスキルはとんでもないな。
単に動体視力が上がったというだけでなく、この闘技場全体を俯瞰して視ることができるし、特筆すべきは攻撃を予測……いや、これから起こり得る僅か数秒の未来を視られるのだから。
そう……相手の攻撃が予め分かるんだ。躱せない道理はない。
「デスピナ。言っておくが、このまま続けたところで結果は変わらない。今さら出し惜しみなんかするな」
「っ!?」
僕の言葉に、デスピナが動きを止めた。
ああ、知っているとも。お前には【ヘキサグラム・ライトニング】なんか足元にも及ばない、『エンゲージ・ハザード』最速のスキルを持っていることを。
「……手加減できなくなるから、使いたくなかったんだけどな」
「言うじゃないか。この状況で、まだ僕を心配する余裕があるなんて」
「当たり前だろ。あたしだって別に、好き好んで人殺しをしたいわけじゃない」
彼女の言葉に嘘偽りはないんだろう。
その証拠に、デスピナは今のままじゃ手の打ちようがないにもかかわらず、躊躇するような表情を見せている。
「対戦相手を気遣ってる余裕なんてないだろ。僕もお前も、ここではただの奴隷に過ぎないんだから」
「…………………………っ」
そう告げると、デスピナは悔しそうに唇を噛む。
そうだよ。奴隷が負けたら、明日はないんだ。
だから、たとえ泥をすすってでも勝つしかない。
それは十年もの間奴隷を続けているお前なら、嫌というほど分かっているだろ。
大体イベントボスのくせに、対戦相手を気遣い過ぎなんだよ。
もっと容赦なく攻撃しろ。
……だけどまあ、そういうのは嫌いじゃないけどな。
「分かった。後悔しても知らないからな」
意を決し、デスピナは剣を口に咥えると、四つん這いになって低く構える。
その姿は、まさしく肉食獣そのものだった。
僕と彼女との間に流れる異様な空気を感じ取ったんだろう。
審判も、観客も、誰一人として声を発する者はなく、固唾を呑んで見守っている。
ただ僕の勝利を信じて疑わない、サンドラを除いて。
「さあ……来い!」
「行くよ! 【超電磁砲】ッッッ!」
雷属性の利点を最大限発揮した、デスピナ最速の必殺スキル【超電磁砲】。
フィールド全体に地場を発生させ、亜音速を越える超絶スピードから放たれる一撃は、どんなものも貫く、まさに雷の槍。
『エンゲージ・ハザード』では命中率一〇〇パーセント、バフ効果などによる防御無視の貫通能力、さらには雷属性による麻痺効果付与と、多くのプレイヤーを泣かせた最悪のスキル。
それを今、僕は。
「そん、な……」
いとも簡単に、躱してみせた。
「分かっただろう? 今の僕に、お前の攻撃の全ては通用しない」
最速のスキルである【超電磁砲】も、あの魔獣を仕留めた【ヘキサグラム・ライトニング】も、僕の【千里眼】にかかれば予備動作ありのテレフォン攻撃に過ぎない。
そのことはデスピナも理解したようで、次の攻撃に移ることもなく、ただ膝をついて項垂れた。
そんな中、闘いを見守っていたサンドラは真紅の瞳を爛々と輝かせている。
これは後で絶対に手合わせをさせられそう。つらい。
「どうする? まだ続けるか?」
この後も躱し続ける自信はあるけど、万が一ってこともある。
だからどうか、ここで終わりにしてください。お願いします。
そして。
「……この勝負、あたしの負けだ」
デスピナの小さな口から悔しそうに発せられた、敗北宣言。
僕は空を見上げ、大きく息を吸うと。
「サンドラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!」
誰よりも愛しい最推しの妻の名を叫んだ。
その瞬間。
――キインッッッ!
僕のSPを封じ続けていた首輪が、甲高い金属音を立てて斬り落とされた。
誰がやったのかって? それはもちろん。
「ハル様! ハル様!」
こうして嬉しそうに抱きしめてくれている、サンドラに決まってるじゃないか。
お読みいただき、ありがとうございました!
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