相変わらず『エンハザ』の裏設定は激重でした。
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「ということは、彼女も僕と同じく奴隷の立場なのか?」
「そうだぜ。ここに来てかれこれ十年になるが、看板選手になった今も自分を買い戻すには全然足らねえ。この意味、分かるだろ?」
「…………………………」
オブルの言葉に、僕は押し黙った。
つまりこう言いたいんだよな? デスピナでさえそんな現状なのに、ここに来たばかりの僕じゃ解放されるなんてことは夢物語に過ぎないのだと。
「僕の場合は女に連れて来られたってことは分かっているが、デスピナも同じように誰かに売られたのか?」
「いいや、違うぜ。あいつは売られたんじゃない。奪われたんだよ」
「奪われた?」
「ああ。あいつはああ見えて、あのノマデス王国の姫様だったのだ」
ノマデス王国というのは、十年前まで存在した南の国であり、ロマニア帝国との戦によって滅んでしまった。
オブルの話では、滅亡後に彼女は身分も財も全て奪われ、奴隷にまで堕とされてしまったとのこと。
「その……王族っていうのはデスピナだけじゃないんだろ? 他の者達は……」
「国王と王妃は処刑。デスピナの他にもう一人姫がいたらしいが、そっちは王家の末裔……ノマデスの象徴ってことで、ノマデスで今も平和に暮らしてるってよ。まあ、現地の暴動対策も兼ねてな」
「ちょっと待て。どうしてデスピナだけ、奴隷になってしまっているんだ?」
「簡単な話だ。ノマデスの象徴なんざ一人で充分ってことさ」
つまりデスピナの姉なのか妹なのか分からないが、ノマデスの民を暴発させないための飾りは一人いればよくて、余ったほうは邪魔ってわけだ。
「……まあ、命があるだけましだろ」
「…………………………」
奴隷としてでも生き延びることができたデスピナは、幸せと言えるんだろうか。
それとも、処刑された父や母と一緒に、あの世へ旅立ったほうがよかったのか。
その答えは、僕には分からない。
だけど。
「言っておくが、あいつに同情なんてするなよ。そのせいであっさりとお前が負けたんじゃ、話にならねえ」
「分かってる。僕は誰にも負けるつもりはない」
デスピナの生い立ちには思うところはあるが、僕だってここでくたばるわけにはいかないんだ。
海の向こうで、僕の帰りを待ってくれている女性がいるんだから。
それにデスピナだって、そんな同情を向けられて嬉しくないに決まってる。
僕だったら、きっと悔しくて仕方ないだろうし。
でも、どうしてこの『エンゲージ・ハザード』というゲームは、色々と裏設定が重いんだろうか。制作スタッフがキャラに愛情を持っているからなのか、それとも、キャラをとことん不幸に追い詰めたいのか、色々と問い質したいところ。
「ならいい。今日の試合、楽しみにしてるぞ」
「ああ」
牢屋を出て行くオブルに、僕は軽く手を振った。
◇
「さあ……行くぞ」
「ハル! 頑張って!」
「ああ!」
いよいよデスピナとの試合。
闘技場へと繋がる門の前で気合いを入れる僕に、スマホサイズの『漆黒盾キャスパリーグ』に変身したキャスが懐の中から声援を送ってくれた。
きっと相棒がいなかったら、一人きりの僕はつらくて壊れていたかもしれない。
こうして今の置かれている境遇に立ち向かえているのは、キャスのおかげだ。
「キャス……勝ち続けてこの首輪を外す方法を見つけたら、一緒にここを出ような」
「もちろん! その時はハルをこんな目に遭わせた連中を、ボクの爪でギッタギタにしてやるんだから!」
「はは、頼もしいな」
そんな会話をしていると、目の前の扉がゆっくりと開かれる。
それと同時に、待ちわびた観客達がいつも以上に歓声……いや、これは怒声に近いな。とにかく、僕達の登場を急かした。
さて、闘技場には審判が一人いるだけか。
ということは、まずは噛ませ犬の僕を先に登場させて、真打は遅れてやってくるってことかな。
まあ、そんな扱いには慣れている。
だけど、あまり噛ませ犬を舐めるなよ。
穿つための牙だけは、ずっと研ぎ澄ましてきたんだからな。
すると。
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」」」」」
ひと際大きな歓声が、向かいの扉から現れた女性に向けられる。
豹のような黒い瞳としなやかな身体、褐色の肌を持つコロッセウム最強の剣闘士。
――デスピナ=ノマデスのご登場だ。
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