イベントボスが勝利しました。
『無能の悪童王子は生き残りたい』第2巻は、いよいよ明日発売!
首都圏では、既に店頭に並んでいる書店様も!
お見かけの際は、どうぞお手に取ってくださいませ!
あとがきもぜひご覧ください!!!
「フン……言ってくれるッッッ!」
「っ!?」
デスピナが鼻で笑ったかと思うと、次の瞬間には魔獣の肩へと駆け上がり、剣を甲冑の隙間に突き立てていた。
「ぐおおおおおお……っ。いてえ……いてえよお……っ」
悲鳴を上げ、堪らずデスピナを振り払う魔獣。
勢い余って、被っていた兜までも弾き飛ばしてしまった。
「「「「「っ!?」」」」」
露わになった魔獣の素顔を見て、観客達は一斉に息を呑む。
それもそのはず。現れたのは人間ではなく、魔獣だったのだから。
もちろん最初から正体が魔獣だと分かっていた僕はそのことについては驚いていないが、それでも別の意味で驚いたことは間違いない。
何故なら。
「……あんな魔獣、『エンハザ』で一度も見たことがない」
キャスもそうだが、この世界に転生して遭遇した魔獣は全て『エンゲージ・ハザード』に登場したものだった。
だというのに、よりによって人間しかいないはずのこのコロッセウムで、どうして本編未登場の魔獣に遭遇するんだよ。テミスがこの場にいたら、絶対に問い質しているところだ。
「ぐおおおお……っ! おで、ぜったいにゆるさないどッッッ!」
「フン、知るか」
怒りに任せて戦槌を振り回す魔獣。デスピナはそれを難なく躱し……いや、違うな。彼女もまた、思った以上に余裕がないみたいだ。
だけど、『エンハザ』でも最速を誇るイベントボスのデスピナを相手に、互角以上の闘いを繰り広げるあの魔獣……少なくともイベントボス以上の実力ということになる。
そんな存在を、コロッセウムの人間はどこから連れてきたんだろうか。
「ごのおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」
魔獣は戦槌をまるでもぐら叩きのように何度も振り下ろした。
それをデスピナは躱す、躱す、躱す。
「あの魔獣、スタミナは無尽蔵か?」
試合開始からそれこそ無駄撃ちを繰り返しているというのに、その動きに陰りが見えない。
このまま長期戦となれば、先にデスピナのスタミナが奪われ、いずれ戦槌の餌食になるだろう……って。
「はは、それはないか」
彼女は『エンゲージ・ハザード』のイベントボス。どれだけターン数が経過したとしても、一ターンあたりの攻撃回数に変化はなかった。
つまり、彼女もまた無類のスタミナを誇るということにほかならない。
ならきっと、先に根負けするのは魔獣のほうだ。
「このっ! このっ! おとなしくしろ!」
「あたしを止めたいなら、その自慢のハンマーを当ててごらんよ」
「なにおおおおおおおおおッッッ!」
デスピナに煽られて怒り心頭の魔獣は、戦槌の遠心力を利用して独楽のように回転した。
「ぐふ、ぐふ、このままぐちゃぐちゃにしてやるど」
高速回転する魔獣は、徐々にデスピナを闘技場の隅へと追い込んでいく。
このままいけば、彼女は横っ腹を叩き潰されてしまうだろう。
ただし。
「貴様の攻撃なんて、このあたしが受けるはずがないけどね」
「っ!?」
デスピナは背後の壁に向かって跳躍すると、そのまま垂直に駆ける。
まさかそんな脱出方法があるとは思わなかったのだろう。呆気に取られてしまった魔獣は、戦槌の回転を緩めてしまった。
それが、敗北につながるとも知らずに。
「油断したね」
「あで!? あががががががががががッッッ!?」
一気に跳躍したデスピナが回転の中央……魔獣へと飛び乗ると、両肩の甲冑の隙間に剣を差し込むと、魔獣は絶叫した。
「これで満足に振り回せないだろ?」
「あ……あが……」
既に回転は止まり、魔獣はだらり、と両腕を下ろしている。
おそらく、さっき肩に剣を突き刺された時に、腱を切られてしまったんだろう。
「その自慢の甲冑が守ってくれるといいな。そうじゃなきゃ貴様、細切れにされるだけだから」
「あ……あ、ああ……」
にたあ、と口の端を吊り上げるデスピナと、恐怖で顔を引きつらせ、一歩ずつ後退る魔獣。
もう、勝負は決した。
「じゃあ、頑張って耐えなよ。【ヘキサグラム・ライトニング】」
彼女がそう告げた瞬間、光の筋が闘技場を駆け巡る。
まるで、六芒星を描くように。
「ぎゃ!? あぎ!? ぐぼ!?」
光の筋が……デスピナが通過するたびに、魔獣が悲鳴を上げる。
ただ、光の筋のあまりの速さに、魔獣の悲鳴が彼女の攻撃に追いついておらず、遅れて聞こえてくるが。
そう……あれこそがイベントボスであるデスピナの得意とする雷属性スキル、【ヘキサグラム・ライトニング】。
画面に六芒星のエフェクトが現れると同時に、六回の全体攻撃を仕掛けるというもの。しかも高確率で麻痺の状態異常を付与するというおまけつきだ。
『エンハザ』だとそんな演出や状態異常付与だけと言ってしまえばそれだけだが、ここはゲームの世界であってもゲームそのものじゃない。
金属の甲冑を纏っているあの魔獣にとって、雷属性の攻撃を受けたら大ダメージ必至だ。
その証拠に。
「ぐ……ぐ……が……」
彼女の【ヘキサグラム・ライトニング】をまともに食らい、魔獣は斬り刻まれた箇所を含め、全身黒焦げの状態になっている。
そして。
「そ、それまで! 勝者、デスピナ!」
魔獣が文字通り身体を崩れさせて地面に沈むと、審判は勝ち名乗りを上げた。
お読みいただき、ありがとうございました!
第2巻発売記念として、完結後の続きを今日から毎日更新していきます!
先月に第1巻が発売されたばかりの、
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