手がかりをつかめそうでした。
『無能の悪童王子は生き残りたい』第2巻発売まで、あと4日!
あとがきもぜひご覧くださいませ!!!
「どうしたおい。調子が悪そうじゃねえか」
デスピナの試合を観た次の日。試合を終えて牢屋に戻ってきた僕に、食事を持って現れたオブルが心配そうに声をかけてきた。
とはいえ、その理由は彼も分かってはいるようで、あくまでも僕を慰めるためのようだ。
「……大丈夫。たまたまだよ」
「お、おう。そうか……」
そう、たまたま……いや、違うな。これは必然だ。
だけど、決してデスピナとの試合が不安で調子を崩したりしたものなんかじゃない。
「まあ、デスピナと闘う前に他の剣闘士にやられちまっちゃ意味ねえからな。精々気をつけろよ」
「ああ」
食事を床に置き、牢屋から出て行くオブル。
僕はパンを半分にちぎり、キャスに渡した。
「はむ……でもアイツの言うとおり、本当に大丈夫?」
「もちろんだ。精彩を欠いていたことは確かだけどな」
パンに齧りつくキャスの頭を撫で、肩を竦めてそう答えた。
デスピナとの試合のことを考えて緊張感が抜けてしまっていたところを狙われ、僕は危うく攻撃を食らいそうになり、それ以降もあと一歩まで追いつめられそうになったことも事実だ。
でも、それ以上に僕は見つけることができた。
デスピナに勝利するための……彼女の攻撃を全てシャットアウトするための方法を。
「キャス、明日以降の試合も今日と同じように冷や冷やする場面があるかもしれないけど、信じてくれ。僕はこれから先も、全ての攻撃を防いでみせるから」
「う、うん……」
キャスは頷いてくれるが、それでも表情は不安そうにしている。
「なんだよ。相棒の僕のことを信用できないのか?」
「っ! そんなことない! ボクはいつだって、ハルのこと信じてるもん!」
「だよな」
少し揶揄い気味にそう言うと、キャスはすごいい剣幕で大声で否定した。
まったく……相変わらず可愛い相棒だな。
「そういうことだから、まあ見ていてくれ。デスピナとの試合が終わるころには、僕はもっと強くなっているはずだから」
というか、そうならないと僕が死んでしまうかもしれないんだよ。
なら、やるしかないんだ。
今日の試合で偶然手繰り寄せた一つの可能性を信じ、僕は拳を握りしめた。
◇
「く……っ!」
「チッ! あと少しだったのに!」
鋭い突きをかろうじて躱すと、対戦相手の剣闘士が舌打ちをする。
昨日とは打って変わり、この剣闘士の実力はかなり高い。本当にモブか? と疑いたくなるほどに。
とはいえ、せっかく見つけた糸口を試すにはもってこい。何より、この程度の剣闘士にやられてしまうようじゃ、デスピナに勝利するなんて不可能だから。
「おいおいおい! いよいよアイツ、やられちまうかあ?」
「俺はオマエに賭けてんだ! 絶対にかすらせるんじゃねえぞ!」
観客達は、面白おかしく僕達の試合を煽ってくる。
気楽なものだなと言いたいところだけど、連中だって客としているわけだから、文句を言ってやるべきなのはあいつ等じゃないな。
文句を言うなら、こんなコロッセウムなんてところを運営している連中と、僕をここに放り込んだ女に対してだ。
「違う! こうじゃない!」
剣闘士の連続突きを紙一重で躱し、僕は歯噛みする。
昨日見つけたのは、これじゃなかった。これなら普通に防げばいいだけじゃないか。
もっと相手の動きをよく見て、見つけるんだ。
僕の防御の、その先を。
「うおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」
今の攻撃があと少しで当たりそうだったからか、剣闘士は剣を振りかざして突進する。ここが勝機と捉えたようだ。
僕はそれを限界まで見定め、またもぎりぎりのところで防ぐ。
そんなことを何度も繰り返していると。
「あ……」
昨日と同じ、この感覚。
また少し、僕は近づけたようだ。
これを、繰り返していけば、いつかきっと……きっと、デスピナの攻撃を全て防ぐだけでなく、サンドラの攻撃だってシャットアウトできるようになるかもしれない。
そんな予感をひしひし感じ、剣闘士の攻撃を防ぎ、躱し、いなす。
そして。
「そこまで! 時間だ!」
「くそおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」
制限時間の一時間を迎え、審判が試合終了を宣言すると剣闘士が大声で叫んで悔しがる。
一方の僕は、また一つ強くなるための足掛かりをまた一つつかみ、満足げに空を見上げた。
お読みいただき、ありがとうございました!
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