剣闘士になることが決定しました。
『無能の悪童王子は生き残りたい』第2巻が8月9日発売!
あとがきもぜひご覧くださいませ!!!
「……なあキャス。今のアイツの言葉、どう思う?」
「そのまんまだと思うけど……」
首の輪っかを触りながら尋ねると、まじまじと見つめキャスがそう答えた。
だよなあ……きっとこれ、僕がここから脱出できないようにするためのもの、だよな……。
考えられるのは、ここから逃げ出すと輪っかが締まってしまうとか、電流が流れるとか、あるいは爆発するとか? ……いやいや、さすがに殺したりするような真似はしないだろ。
そうじゃなかったら、こうして僕を生かしておく意味もないだろうし。
「あ! ねえねえ、ひょっとしてこれ、マナを使えなくするための道具じゃない?」
「それだ」
器用に前脚を上げて告げるキャスを指差し、僕は大きく頷いた。
そういうことなら、さっきキャスが変身できなかったのも納得だ。
「となると、どうやってこの輪っかを外すかだな」
「うん」
あのヒャッハーの男は僕達がそのことに気づくのを承知で、あんなに堂々と話したんだ。つまり、簡単に外せる代物じゃないんだろう、
とはいえ。
「何もせずにじっとしているっていうのも違うよな」
僕は輪っかに手をかけ、思いきり引っ張ってみる。
「ぐぎぎ……っ」
「ハル! 頑張れ!」
キャスの声援を受け、血管が切れそうな勢いで引きちぎろうとしてみるものの、ただでさえ輪っかは金属製であるのに加え、僕自身の物理関連の能力はカンストしていたところで全キャラ中最低。力づくでどうにかできるわけがない。
「ハアッ……ハアッ……」
「駄目、だったね……」
力を使い果たして床に突っ伏す僕に、キャスがしょぼん、とした表情で告げる。
まあ、この方法は最初から上手くいくなんて思っていないから、何一つショックではないんだが。
「となると、やっぱりこれを外す方法を見つけるしかないな」
おそらく鍵か何かで外せるんだろう。その証拠に、さっきつかんだ時に穴のようなものがあったし。
「問題は、鍵をどうやって入手するか……」
映画や漫画みたいに針金で開けるなんてスキルなんか持ち合わせているはずもないし、そもそも針金なんてここにはない。
手っ取り早く、あのヒャッハーの男から鍵を奪うしかないな。
でも。
「ああもう! マナが使えないんじゃ、どうしようもないだろ!」
僕は天井に向かってキレ気味に叫ぶと、頭を抱えた。
物理最弱の僕が、どう見てもモブにしか見えないあのヒャッハーの男と闘ったところで、勝てるはずがない。
これはいよいよ、八方塞がりか……。
「ま、まあまあ。今すぐどうにかなるわけじゃないから、もっと色々と考えようよ」
「キャス……そうだな」
まさかキャスに慰めてもらうことになるとは思わなかったけど、確かにそのとおりだ。
それから僕とキャスは、この牢屋から脱出する方法を考え続けた。
◇
「あー……無理。どうやっても無理」
あれから一晩中キャスと考えてみたものの、解決策は見つからずじまい。
闘いを挑もうにも、最弱キャラの『無能の悪童王子』とSPがなければ何もできない子猫魔獣じゃどうにもならない。
ヒャッハーの男の気を引いてキャスだけこの場から逃がすことも考えたけど、何も情報がない中で闇雲に逃がしても失敗するのがオチだ。
「ボ、ボク、頑張って助けを呼んでくるから! だから!」
「駄目だ。そんなことをしたら、お前が危険だ。相棒をそんな目に遭わせるなんてできるわけないだろ」
「で、でも……」
僕が即座に否定したものだから、キャスはしゅん、と肩を落とす。
でも、僕が心配したことが嬉しいのか、口元はゆるっゆるである。もう少しポーカーフェイスを学んだほうがいい。
「まあ落ち着け。少なくとも今すぐ危害を加えるつもりはないようだし、しばらく様子を見てみよう」
昨日はいきなりのことだったので頭も混乱していたが、一晩経って少しはまともに頭が働くようになった。
やはり、まずは情報を集めてから考えるようにしよう。
すると。
「おい、メシだ」
昨日のヒャッハーな男が、食事を運んできた。どうやら餓死する危険はなさそう……だけど。
「まさかとは思うけど、毒が仕込んであったり……」
「んなことするかよ。お前は大事な剣奴なんだ、元を取るまでそう易々と死なせるか」
「ん? 剣奴?」
「そうだ。これからオマエは、このコロッセウムで闘うんだよ。死ぬまでな」
なるほど……これはいわゆる、剣闘士的なことをさせられるってことかな。どうしよう。
「まま、待て! こんな輪っかをつけられたら、その闘いとやらでスキル……いや、祝福が使えないだろ!」
「? 当たり前だろ。祝福なんて使っちまったら、すぐに終わっちまうじゃねえか」
「なっ!?」
どうやらここの連中は、スキルなしで闘わせようというつもりらしい。
まあ、スキルの優劣で決まる闘いより、ある意味公平だと言えるかもしれない……って、そんなわけあるか!
「冗談はやめてくれ! 僕がまともに闘えると思ってるのか!?」
「ああ、思ってるぜ。対戦相手にボコボコにされて、命乞いする姿を客も楽しみにしてるからな」
ヒャッハーな男は僕の肩をぽん、と叩くと、下卑た笑みを浮かべた。
お読みいただき、ありがとうございました!
第2巻発売記念として、完結後の続きを毎日更新していきます!
先月に第1巻が発売されたばかりですが、
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