新たな敵の存在が確認されました。
『無能の悪童王子は生き残りたい』は絶賛発売中!
最初の一週間の売上で三巻以降が出せるかどうか決まります!
応援をどうぞよろしくお願いいたします!
あとがきもぜひご覧くださいませ!!!
「やあ」
「「…………………………」」
厳しい取り調べを受け、傷ついたルシオとフロレンシアがいた。
「さて……何から話そうか」
「……俺には話すことなどない」
そう言うと、ルイスは顔を背ける。
フロレンシアを見やると、うつむいたまま唇を噛んでいた。
「そうか……ああ、そうそう、ソル家とアルバレス家は、正式に取り潰しになった」
「「っ!?」」
いくら呪術師とはいえ、二人だってれっきとした貴族。家が取り潰されるとはどういう意味か、理解している。
一族郎党、イスタニアに居場所がなくなってしまったことを。
ただ、二人が考えているような甘い結果では済まされなかったが。
「お、お父様やお母様は関係ないのです! 悪いのはうちだけなんですから、そんなこと……」
「馬鹿を言うな。貴族なら一族の誰かがした過ちは、一族全てで償うのは当たり前だろ」
「あう……っ」
この女は幼馴染を助けたい一心で軽はずみな真似をした。それがどういう結末を招くのか、深く考えもしないで。
「いいか。今回のことは第三王子の僕、カペティエン王国第一王女のリゼ、それに聖王国の聖女であるクリスティアを危険な目に遭わせた。下手をすればイスタニアという国がなくなっていたんだぞ」
「「…………………………」」
「それが二つの家とオマエ達の命、それに金で解決するんだ。ありがたく思え」
そう告げると、ルシオはともかくフロレンシアは大きく目を見開いた。
「あ、あの、うち達の命って……」
「……イスタニア王国は今回のことをルシオとフロレンシアの単独犯行であるとして、その処遇は全て三国に一任された。つまり、オマエ達を生かすも殺すも、僕達次第だということだ」
「あ……」
フロレンシアは膝から崩れ落ち、茫然とする。
そうだ。これはオマエが選んだ結末だ。
「だが、僕だって鬼じゃない」
涙を零すフロレンシアを無視し、僕はルシオへと視線を向けた。
「邪悪龍アジ・ダハーカを召喚したあの珠……あれはどうやって手に入れた」
「…………………………」
「そうか、答えないか。衛兵、今すぐフロレンシアを連行し、刑を執行しろ」
「「はっ!」」
「っ!? ま、待て! どうしてそうなる!」
「決まってるだろ。オマエが全てを話さないというのなら、二人に価値はない。なら、見せしめとしてさっさと処刑してしまうだけだ」
僕はそう冷たく言い放つと、衛兵達はフロレンシアの髪を強引に引っ張る。
「痛い! 痛いのです! やめてくださいなのです!」
「黙れ! ハロルド殿下を亡き者にしようとしたダークエルフの分際で!」
「いや……いやあああ……っ!」
ずるずると引きずられ、処刑場へと連れて行かれようとするフロレンシア。
すると。
「わ……分かった。全てを話す。だからフロレンシアだけは、助けてくれ……っ」
「勝手なことを言うじゃないか。そもそもオマエは、フロレンシアを呪い殺すためにこの国に来たというのに」
「…………………………」
思いきり皮肉を言ってやると、ルシオは無言で僕を睨んだ。
ああ、そういえばテミスが言っていたな。ルシオがフロレンシアを呪い殺そうとしたのは、初恋相手の大切な幼馴染だからこそ、何より嫉妬したからなのだと。
きっと子供の頃は、ルシオのほうが優れていたんだろうな。
それでフロレンシアを守る立場でいたはずが、いつの間にか自分より上の存在になっていて、みじめで耐えられなくなったんだろう。
調子のいいことばかりして、反吐が出る。
「じゃあ今すぐ話せ。オマエの知っている全てを」
ルシオは言い淀みながらも、全てを話した。
アジ・ダハーカを召喚するアイテムを提供した、〝モストロ=モノス〟という男の存在を含めて。
「それで、そのモストロ=モノスという奴は何者なんだ?」
「分からない……俺も最初は半信半疑だったが、あの男がくれた道具をいくつか試し、少なくとも道具に関しては本物であるということが分かった。ただ……」
「ただ?」
「あの男は言っていた。『秘密を共有すれば、破滅が訪れる』と」
「破滅ねえ……」
ユリの場合は、テミスの命令によって『エンハザ』をシナリオ通りに進めることを目的としていた。
なら、モストロ=モノスという男の目的は? 管理者であるテミスが僕の手の中にいるし、別の管理者がいるとも聞いていない。
なら、一体どういう……っ!?
「う……う、ぐ……っ」
「フロレンシア!?」
衛兵に拘束されているフロレンシアが呻き声を上げ、喉を掻きむしり始めた。
「ルシオ! これはどういうことだ!」
「し、知らない! 俺は何も……!」
慌てる様子からも、ルシオが犯人である可能性は低いようだ。
「とにかく、フロレンシアを今死なせるわけにはいかない!」
こんな真似をした者の目的は分からないが、いずれにせよ何とかしないと。
モニカに目配せをし、王宮の医師を呼びに行ってもらう。
くそ……っ。こんなことなら、クリスティアにも同席してもらうんだった。
そして。
「あ……か、ひゅ……」
フロレンシアは口から血の泡を噴き、死んでしまった。
◇
「遺体を調べましたが、毒の類などではありませんでした」
「呪いをかけられたということもなさそうです……」
フロレンシアが死んでしまった後、クリスティアにも来てもらってモニカと一緒に彼女の死体を調べてもらった。
その結果が二人の答えなのだから、もうお手上げだ。
「ルシオはどうしている?」
「フロレンシアを失ってしまったこと、自分が同じ目に遭うかもしれないという恐怖、これらから心が不安定になり今も地下牢で震えているようです」
「そうか……」
ルシオの様子からも、考えられるのは一つ。
モストロ=モノスという男が何かをした可能性がある。
何せルシオに、『秘密を共有すれば、破滅が訪れる』と警告したのだから。
「ハル様、どうなさいますか?」
「分からない。だけど、とりあえずは最大限警戒するようにしよう」
「そうですね……それしかできませんから」
何が目的なのか、どうやってフロレンシアを殺害したのか、色々と謎は深まるばかりだ、
だけど。
「僕は、守るだけだ」
僕はこの『エンゲージ・ハザード』の世界で生き残るための……『大切なもの』を守り抜くための力を手に入れたんだ。
なら、『エンゲージ・ハザード・セカンド』で新たに登場した力すらも、防いでみせる。
そのために。
「サンドラ、モニカ、キャス、クリスティアさん……僕に力を貸してほしい。大切なみんなを、守るために」
「はい!」
「お任せください」
「うん!」
「もちろんです」
僕は『無能の悪童王子』、ハロルド=ウェル=デハウバルズ。
たとえどんな相手だろうと、全てを守り抜いてみせるさ。
――この、『大切なもの』と一緒に。
お読みいただき、ありがとうございました!
書籍発売記念として、完結後の続きをお送りいたしましたが、今回でとりあえず終わりとなります!
続きが気になる……と思いますが、それはまた次の機会に!
でも、多分2巻発売(来月です! 来月発売です!!)のタイミングになるかと。
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