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イベントボスは泥人形でした。

『無能の悪童王子は生き残りたい』は本日発売!

どうぞよろしくお願いいたします。


あとがきもぜひご覧くださいませ!!!

「やあ、現れると思っていたよ」


 その日の深夜、寮の中庭で一人ベンチに腰かけていた僕の前に現れた銀色の瞳の男……ルシオを見て、口の端を持ち上げた。

 先日、校舎で見かけた時はひょっとしたらそうなのかもと思ったけど、案の定この男がルシオだったというわけだ。


「それで? フロレンシア殺害を妨害した僕を、呪い殺しに来たってことでいいのかな?」

「………………………」


 僕は(あお)るようにそう告げるが、ルシオは答えようとしない。

 ただ、その銀色の瞳には怒りのようなものを湛えていた。


「ええと……確か、子供の頃から幼馴染のフロレンシアに横恋慕していて、いつか優れた呪術師になったら告白しようと考えていたけど、彼女のほうが優秀過ぎて言えずじまいのまま一切進展しない、だったっけ」

「っ!? き、貴様……っ」


 テミスから教えてもらったルシオの情報を語ってみせたら、この男は顔を真っ赤にして(うめ)いた。

 まあ、胸に秘めていた初恋について第三者から赤裸々に語られたら、恥ずかしいに決まってる。僕なら間違いなく悶死するね。


「そうこうしていると、今度は父親から『ダークエルフなどイスタニアの恥。あのような者に後れを取るな』と、スパルタ教育を受けさせられたんだよな。ご丁寧に、ダークエルフがいかに醜く(けが)れた存在なのか、延々と聞かされて」

「だ、黙れ!」

「フロレンシアへの想いと父親からのプレッシャーで板挟みになり、ついには二年前、実の父親を呪い殺した。呪いだから当然、誰もオマエが殺したとも思わない」


 しかも『自分が当主にさえなれば、フロレンシアへの想いを誰からも咎められることはない。フロレンシアもソル家当主となった俺を認めるだろう』とか言って、意気揚々と彼女のもとへ行ったらしい。


「そして、『弟としか思えない』とこっぴどくフラれて、逆恨みして今に至るんだったよな」

「黙れええええええええええええええええッッッ!」


 僕に全てを明らかにされて羞恥心が爆発したルシオが、両手を掲げて叫ぶ。

 ルシオからすれば公開処刑されるような気分だろうから、発狂しそうになるのは仕方ない。


 だが。


「黙るのはあなたです」

「っ!?」


 いつの間にか背後に回り込んでいたモニカが、ルシオの首を両断した。

 姿が隠されたままだととうしようもなかったが、こうやって目の前に現れてくれれば、モニカやサンドラならあっさり倒せる。


 たとえそれが、邪属性のイベントボスであったとしても。


「さすがだね、モニカ」

「ありがとうございます。ですが、あまりにも無防備過ぎて拍子抜け……っ!?」


 (ひざまず)くモニカの足に、ルシオだったもの(・・・・・)の手が絡みついた。


「……汚らわしい」


 眉根を寄せるモニカは絡みつく手を切り落とすと、その場から一気に飛び退く。

 ルシオの身体は泥のように変化しており、転がった頭を拾って取り付けた。


「……これも邪属性スキ……いや、祝福(ギフト)の一つか?」

「はいなのです。【マリオネットマディ】なのです」


 僕の後ろから現れてそう告げるのは、フロレンシア。

 彼女にはルシオが現れた時のために、あらかじめ物陰に潜んでおいてもらうようにしたのだ。


「でも、あの祝福(ギフト)を発動させるためには、半径三十メートル以内にいないといけないのです。つまり」

「少なくとも、この寮内に潜んでいることは間違いないということか」


 ルシオの狙いはフロレンシアであり、他の生徒達に危害を加えるような真似はしないと思うけど、それでも万が一のこともある。

 僕はモニカに目配せをすると、一瞬で姿を消した。


「さて……あの泥人形は、お願いできるかな」

「任せてくださいなのです」


 フロレンシアは頷き、手をかざすと。


「【マリオネットマディ】」


 同じく、泥によって作られた人形が、ルシオの泥人形に覆いかぶさった。

 その大きさからも、彼女とルシオの能力差は歴然と言える。


「ふう、終わったのです」


 ルシオの泥人形はフロレンシアの泥人形に吸収されてしまい、彼女は大きく息を吐いた。


「まだだ。ルシオを倒さないことには、終わりじゃない」

「……そうなのです」


 僕の言葉に、フロレンシアが悲痛な表情でうつむく。

 この後ルシオがどうなってしまうのか、理解しているのだろう。


 そう……僕はルシオを、ただで済ませるつもりはない。

 並の敵であればフロレンシアの想いも考慮し、捨て置くという選択肢もあったかもしれないけど、『呪い』という僕では絶対に防御が不可能な存在である以上、ここで終わらせておかなければいけないんだよ。


 そうじゃないと、僕の『大切なもの』が傷つけられてしまうから。


「さあ、行こう。モニカが見つけたようだ」

「はいなのです」


 寮の窓からランプで合図するモニカを見つめ、僕はフロレンシアを連れて建物の中へ入った。

お読みいただき、ありがとうございました!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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