シグルスとファフニール
番外編投稿しました!
全3話の1話目になります!
■シグルス=オブ=シュヴァリエ視点
「やれやれ……面倒事を全部こっちに押しつけるつもりか」
ブリント島の西の端の小国デハウバルズ王国の王太子にして、親友である“サウェリン=ウェル=デハウバルズ”に敗走するノルズ帝国の軍勢を前にし、俺……シグルス=オブ=シュヴァリエはかぶりを振る。
サウェリンは戦の天才ではあるが、こうやって散々派手に蹴散らしては、後始末のことを全部丸投げにしてくるのが玉に瑕だ。
「まあ、この連中を全部始末しないことには、後々面倒になるんだがな」
愛剣『バルムンク』を構え、馬を蹴って合図すると。
「さあ、掃討戦だ! ノルズの連中を全員血祭りにあげろ!」
俺は檄を飛ばし、ノルズの軍勢に突撃した。
ブリント島の全土を支配する最強のノルズ帝国軍であったとしても、サウェリンの策によって既に総崩れとなっている今、俺達のようなただの人間でも打ち倒すことができる。
俺達は次々とノルズ兵を倒し、そして。
「やったぞ! 俺達の勝利だ!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」」」」」
『バルムンク』を高々と掲げ、俺は勝鬨を上げた。
◇
「シグルス将軍、失礼します!」
ノルズ軍との戦闘で勝利し、幕舎で戦後処理に追われている俺のもとに、兵士が慌てた様子で飛び込んできた。
「どうした?」
「は、はい。実は……」
兵士が言うには、ノルズ軍の残党がいないか他の兵士達と見回っていたところ、連中が放棄していった物資を発見したそうだ。
ただ。
「女が檻に?」
「はい……おそらく、ノルズ兵の慰安用として連れて来られた奴隷だと思われます」
「ううむ……」
兵士達は戦において生死を分ける極限状態に追い込まれ、相当な不安や緊張を伴う。
それが暴発してしまったら、兵士達の統制が取れなくなり、最悪暴動や略奪が起こってしまうことになる。
そのため、兵士達がそのようなことにならないよう、酒や女をあてがうことで発散させることはよくあることだ。
とはいえ。
「……自分達で奴隷制を禁止しておきながら、最低だな」
そう……ノルズ帝国では奴隷制は認められていない。
にもかかわらず、戦だからといってそのような真似をするのだから、やはり帝国はここまで腐りきっていた。
もし帝国が少しはまともだったなら、デハウバルズは反旗を翻したりはしなかったものを。
「分かった、まずはその捕らえられていた女のところに案内してくれ」
「はっ!」
俺は兵士に案内してもらい、その檻に捕らえられているという女に会いにいった。
そこには。
「…………………………」
プラチナブロンドの透き通るような髪と真紅の瞳が印象的な美しい少女が、膝を抱えて檻の隅に座っていた。
「シグルス将軍?」
「……あ、そ、そうだな」
少女の美しさに目を奪われていた俺は、兵士の声で我に返る。
いかん、これではノルズの連中と同じではないか。
「おい、すぐに彼女を解放して、手当をしてやれ」
兵士に指示をし、檻の扉を開けさせようとするのだが。
「……開けちゃ駄目」
「ん? どういうことだ?」
少女が牢から出ることを拒絶したのを見て、俺は首を傾げる。
「わたしはここから出ちゃいけないの。あの人達が、そう言ってた」
おそらく、少女が逃げ出さないようにするために命令していたのだろう。
彼女のどこか怯えた様子や鎖に繋がれた足、ところどころ見受けられる傷跡などからもそのことが窺える。
「……大丈夫だ。君にそんな指示をした者はもういないし、俺達はそんなことは求めない。だから……おいで」
俺はできる限り笑顔を作り、ゆっくりと手を伸ばす。
ただ、そんな俺を見ておかしな反応を見せた部下達には、後で特別な訓練を与えてやるとしよう。
「でも……」
「さあ」
それでもなお躊躇する少女に、俺はさらに手を伸ばす。
どうすればいいか迷っていた彼女だったが、おそるおそる俺の手を取ってくれた。
「よく俺の手を取ってくれた。偉いぞ」
「あ……」
綺麗な髪を撫でてやると、少女は僅かに口元を緩めた。
あまりの可愛らしさに、俺まで顔を綻ばせる。
「今まで大変だったろう。食事も用意するから、一緒に食べよう」
「あ……は、はい……」
――これが、俺と少女……“ファフニール”との出逢いと、悲劇の始まりだった。
お読みいただき、ありがとうございました!
番外編第2話は明日投稿しますので、お楽しみに!
また、新作スタートです!
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