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あれから半年が経過しました。

本編完結まであと2話!

 エイバル王、そして神を名乗るAIであるテミスを倒してクーデターを達成してから、ちょうど半年が経過した。


 デハウバルズ王国の体制は大きく変わり、まず次の王は……残念ながらまだ決まっていない。

 というのも、長男であるカーディスもまだ王立学院に通う身であり、とてもではないけど王政を任せるには心もとないから、というのが理由だ。表向きは(・・・・)


 ハア……これに関しては溜息しか出ない。

 だってさあ、ずっと推してくれていたオルソン大臣が、僕を次の王にすることを諦めていないんだよ……。


 しかも宰相とドレイク卿も悪ノリして同じように後押ししてくるものだから、カーディス派閥やラファエル派閥と真っ向から対立していて、全然話がまとまらないんだよね。


 オーウェン? アイツはエイバル王という最大のパトロンもいなくなり、王位継承争いからは完全に離脱しているよ。

 それに元々王の座なんかに興味がないオーウェンは、面倒事から解放されて清々しい表情をしているよ。僕が迷惑(こうむ)っているというのに、解せぬ。


 で、カーディスとラファエルに関しては、引き続き次の王を争うみたいだよ。

 といっても、ラファエルは以前のように第一王妃のマーガレットに対する復讐の思いは薄れており、純粋に王になりたいみたい。


 カーディスにしてもそうで、マーガレットの呪縛から解き放たれて、熟考した上で王を目指すことを選んだようだ。

 そのことを僕に告げた時の彼の表情は、すごく清々しかったよ。


 なお、仮に僕が王位継承争いから無事にフェードアウトできたとしても、右腕にと望むこの二人からつきまとわれる未来が待ち受けていて、どうやって逃げ出そうかとサンドラやモニカと算段しているところだ。


 そうそう。今話題に出たマーガレットについてだけど、これまでの所業がカーディスによって告発されて、今はウィルフレッドと同じくカディット塔に幽閉されている。

 陽の光も閉ざされた薄暗い監獄で暮らしてはいるものの、カーディスが時折様子を見に行っているみたい。僕は絶対に行かないけど。


 そんな事情もあり、当面の間は宰相をはじめとした高位文官達による暫定政府を樹立し、国政に当たってもらっている。

 僕としては、このまま共和制にでも移行してもらうのが将来的にもいいんじゃないかって考えているけど、そういうわけにもいかないらしい。


 まあ、いきなりそんなこと言われても、貴族も国民もみんな戸惑うよね。


 王国内の治安に関しては、ドレイク卿を元帥に任命して王国の全ての軍事を統括してもらっている。

 元々彼が軍事を掌握していたのだし、これに関してはスムーズに決まったよ。


 ただ、大量の仕事が舞い込んだこともあり、ドレイク卿は顔を合わせる度に愚痴を言ってくるけど。

 そういう時は、僕達と手合わせをしてストレス発散してもらっている。


 他国との関係については、オルソン大臣に手腕を振るってもらい、クーデター以前の関係を維持するどころか、むしろさらに良好な関係を築くことができていた。

 これには、カペティエン王国とバルティアン聖王国が、この国との引き続き友好関係を継続することを表明してくれたのが大きい。


 もちろん、その背景にリゼとクリスティア、カルラが本国に働きかけてくれたことがある。本当に、三人には感謝しかない。


 さて……王国に関してはこのくらいでいいだろう。

 次は僕の『大切なもの』達のことについて報告するよ。


 まず、『ガルハザ』のヒロインであるリリアナについてだけど、相変わらずお肉が恋人だと言って(はばか)らない日々を過ごしている。

 カーディス達もここにきてようやくそのことを理解したのか、今では眩い宝石なんかより、珍しくて美味しい肉を彼女にプレゼントするようになったよ。


 そういえばこの前、そのことについてリリアナが愚痴をこぼしていたなあ。

 何でも、『高級肉よりも、安くてたくさん食べられて噛み応えのあるお肉のほうが嬉しいのに、分かってないんですよ!』とのこと。


 このあたりのこだわりは、元庶民だったリリアナらしいと言えなくもないけど、少なくともカーディス達はこれからも彼女に振り回されることだろう。


 次にユリについてだ。

 テミスを倒した後、彼は僕達との別れを選択した。


 引き留めたものの彼の意志は固く、当分は世界中を旅するとのこと。

 ただ、これまでテミスの言いなりになるしかなかった彼が、『初めて手に入れた自由(・・)を謳歌したい』と、とても清々しい表情で言ったので、僕は快く送り出すことにしたよ。


 だけど、『いつでも帰ってきていい』って伝えると、ユリ、メッチャ泣いてたなあ。


 そうそう、泣いていたといえばロイドだよ。

 人生で同じ人間に二度も一目惚れ(しかも男)し、しかも告白する前に逃げられてしまうんだからね。


 ユリがいなくなった後、『こんなことなら思い切って告白すればよかった』と、ずっとめそめそしていて鬱陶(うっとう)しかった。知らんがな。


 『エンハザ』のメインヒロインでありポンコツ悪女のリゼは、相変わらずデレているとしか思えないようなツンをこれでもかと披露しており、教師を含め、学院の者全員から生温かい目で見守られているよ。

 それはもう『リゼを遠くから見守り隊』が発足するくらい。


 そんな『リゼを遠くから見守り隊』から、僕は目の敵にされていた。

 何でも『どうしてリゼちーの想いに応えないのか!』だの『俺のリゼちーを返せ!』だの、言いがかりも甚だしい。


 でも彼女、“リゼちー”って呼ばれてるのな。ウケル。


 クリスティアに関しては相変わらず笑顔だけは聖女だけど、腹黒さにもますます磨きがかかっている。

 一番の被害者はリゼとカルラで、クリスティアも交えて昼休みにランチをしていると、彼女に騙されて別の場所に行っていたリゼとカルラが遅れてやって来て猛抗議をしている光景は、今では学院の風物詩になっていた。


 というか、毎回クリスティアに騙されている二人もどうかと思うけどね。いい加減疑うということを覚えたほうがいい。


 で、カルラに関してはこれまで以上に僕に立ち合いを挑むようになってきて、今ではほぼ毎日放課後に手合わせを行っている。

 しかも彼女、ガルハザでもかなりの強キャラなのでメキメキと実力をつけていき、もう『エンハザ』の完凸時のスペックを遥かに凌駕しているんだけど。


 ただ。


『そ、その……私がハル殿に勝利したあかつきには、ひひ、一つだけお願いを聞いてほしい』


 なんで顔を真っ赤にして言うものだから、僕は危うく勘違いしそうになってしまう。

 その度にリゼとクリスティアから詰め寄られ、ハイライトの消えた真紅の瞳のサンドラに睨まれているよ。


 そして。


「マスター。この者を処刑する許可を」


 ……今日もまた、ライラがそんなことを(のたま)っているよ。

お読みいただき、ありがとうございました!


いよいよ……いよいよ、「『無能の悪童王子』は引退したい」が次の20時頃更新で最終回となります……!

10月の連載開始からここまでノンストップで走り続けてきました!

どうか最後まで、お付き合いくださいませ!


また、皆様に大切なお願いです!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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